スマートフォンを活用したスタンプラリーが街中に溢れる中、多くの企画が「画面の中だけで完結し、実際の行動変容に繋がらない」という課題を抱えてきた。デジタル画像を配布しても、街を巡る契機や鉄道利用、地域消費といった実際の活動へ波及しなければ、一過性の施策で終わってしまうのが実情だ。
こうしたデジタルとリアルの分断を乗り越え、日々の生活行動を起点に人の移動を生み出す試みが展開された。東急株式会社と株式会社セブン銀行は、2026年9月7日から10月5日にかけて、ATMチャージと沿線周遊を連動させた「東急線のスポットを探そう!デジタルラリー」を実施した。駅前ATMという日常インフラからNFTスタンプを獲得し、電車での移動や街歩きへと誘う仕組みが、鉄道業界におけるWeb3活用の新たな可能性を提示している。(文=MetaStep編集部)
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東急とセブン銀行が実施した本キャンペーンは、2025年秋に続く第2弾の連携施策だ。東急電鉄のキャラクター「のるるん」とセブン銀行ATMとのコラボレーションを通じて、日常のチャージとお出かけを結びつける形で設計された。

(引用元:PR TIMES)
参加者は、東京・神奈川エリアのセブン銀行ATMで交通系電子マネーに1,000円以上をチャージし、ATM画面またはQRコード票に表示される「QRコード」を読み取って1つ目のデジタルスタンプ(NFT)を獲得する。受け取りにはLINE公式アカウントを経由し、専用ウォレットの作成を意識させない仕組みとなっている。
ここから本企画は、獲得したスタンプを起点とした「沿線周遊」へと繋がる。スタンプの背景画像やデジタル空間「NFTゲージ」上に表示されるヒントを手がかりに、2つ目のスタンプを受け取れる東急線沿線の対象スポットを推測。東急線に乗って現地を訪れ、位置情報を利用して2つ目のスタンプを入手する流れだ。
(引用元:PR TIMES)
2つのスタンプを集めた参加者には、公式オンラインストア「TOKYU STYLE」の特設サイトへのアクセスリンクを付与。サイト内でのキーホルダーの先行購入権に加え、購入者にはデジタル空間で走行可能な3D車両NFTも提供された。
(引用元:PR TIMES)
また、長津田車両工場で開催された「東急電車まつり」招待券の抽選プレゼントも用意され、画面上のスタンプ集めを実際の特別な現地体験へと着地させる強力な動機づけとなった。
東急とセブン銀行による今回の取り組みが示唆するのは、企業におけるNFT活用が「投機的な取引や単なる画像配布」を脱し、「人々の日常行動を誘導するインターフェース」へとシフトし始めたという事実だ。
Web3の実装における障壁は、暗号資産ウォレットの開設や管理に伴う難解さにあった。しかし、本施策のようにATMでのチャージやLINE、QRコードといった生活インフラの中にWeb3技術を組み込むことで、子育て世帯をはじめとする一般層であっても抵抗なく参加できる環境が整えられた。技術の複雑さを意識させないこの設計は、幅広い利用者を巻き込むための前提条件と言えるだろう。
また、デジタル体験を「鉄道の乗車」や「沿線の目的地への移動」という物理的な行動変容へ直結させた点も示唆に富む。チャージから謎解き、電車の移動、イベント応募までを一連の流れで繋ぐことで、沿線への親近感を育みながら運賃収入や物販といった事業の実利へ結びつけている。さらに、集めた3D車両を走らせるデジタル空間を用意し、SNSシェア機能を加えた仕掛けも、イベント後の関係性を維持するための効果的なアプローチだ。
NFTの価値は、実際に人々の足を動かし、街の賑わいを生み出す触媒となることにある。東急のNFT施策は、インフラ企業が顧客接点を広げるための確かな道しるべとなるはずだ。
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