1. MetaStep TOP
  2. Web3・メタバースの実装を進める
  3. 富山市公式NFTを販売。90日復活特典でリピート獲得へ

2026.10.12

富山市公式NFTを販売。90日復活特典でリピート獲得へ

観光パンフレットを配り、デジタル住民票を無料で付与する。関係人口の創出を掲げて全国の自治体が打ち出すこれらの施策の多くは、実際には「配って終わり」というの形骸化に苦しみ続けてきた。無料のインセンティブで集まる人々は一時的な関心にとどまりやすく、一度の観光やイベントを終えれば関係性は途切れてしまう。数を追うだけのデジタル施策が真に地域の活力へつながっているのかという疑問は、地方都市にとって長年の課題であり続けてきた。
こうした無料配布の限界を打ち破り、持続的な往来を生み出す新たなアプローチが動き出した。2026年8月17日、メディアエクイティ株式会社は東武トップツアーズ株式会社と連携し、富山市公式NFT「TOYAMAみらい市民パスポート(ゴールド)」の販売を開始した。あえて有償とし、使用後90日で再度利用可能となる特典を組み込むことで、熱量の高いファンを地域へ呼び戻す試みが、地方創生におけるWeb3の実装モデルを切り拓こうとしている。(文=MetaStep編集部

▼ビジネス活用のヒントを毎日掲載!
Web3・メタバースの実装を進める『MetaStep』

有償化と90日復活チケット。リピートを促す特典設計


(引用元:PR TIMES)

富山市の新たな関係人口創出事業として販売が開始された「TOYAMAみらい市民パスポート(ゴールド)」は、富山県外に在住し、同市とより深く関わりたい人を対象とした有償版の公式NFTだ。NFTマーケットプレイス「HEXA」を通じて販売され、価格は1,000円(税込)、発行枚数は先着順で500枚限定とされた。なお、HEXAでの決済は暗号資産を必要とせず、日本円で購入できる仕組みを採用している。

本施策の要は、継続的な来訪を促す独自のインセンティブ設計にある。パスポートの保有者は、富山駅および富山空港周辺の指定3店舗において、1回1,500円(税込)以上の会計時に使える「1,000円分のデジタルチケット」を受け取ることができる。このチケットは、一度利用しても90日が経過すると再度利用可能になる仕組みとなっており、2027年3月末までの継続的な利用を後押しする。

さらに、保有者限定のオンラインコミュニティ「TOYAMAみらい市民コミュニティ・プラス」への参加権や、富山市ガラス美術館の入館料無料、富山駅前のコワーキングスペース「スケッチラボ」の2時間無料利用に加え、富山市役所広報課でパスポートを提示するとノベルティがもらえる「会いに来て企画」など、街を訪れた際の実用的な特典を網羅している。単なる記念品にとどまらず、街に足を運ぶ理由を複層的に用意している。

無料配布の限界を突破。熱量を選別する有償NFTの意義

富山市とメディアエクイティによる今回の取り組みが示唆するのは、自治体のデジタル施策において、「無料配布による規模の追求」から「有償化による熱量の選別」への構造転換が始まりつつあるという事実である。

誰でも手に入る無料のNFTは、登録者数という見かけの成果を生みやすい反面、地域への愛着が薄い層を多く抱え込み、コミュニティの活力を維持しにくくなる弊害があった。一方、あえて1,000円という価格を設定し、500枚の発行数上限を設けるアプローチは、富山市に自発的な関心を寄せる「質の高い関係人口」を浮き彫りにするフィルターとして機能するだろう。

また、使用後90日で復活するデジタルチケットの設計も、リピーター育成の観点から理にかなっている。観光地を一度訪れて満足してしまう構造を排し、「数カ月後にまた使える特典」をインセンティブとして埋め込むことで、一過性の観光客を定期的に訪れる関係人口へと引き上げる導線が自然と機能するからだ。街への来訪サイクルを意図的に作り出すこのアプローチは、指定店舗での確実な消費を促し、地域経済を継続的に潤す確かな下支えとなるだろう。

自治体によるWeb3活用の価値は、目新しい技術を誇示することではなく、関係人口をいかに定着させられるかにあるはずだ。富山市が提示した有償パスポートの運用モデルは、全国の自治体が直面する「配って終わり」の課題を打破し、持続的な地域づくりを前進させる確かな足がかりとなることが期待される

▼ビジネス活用のヒントを毎日掲載!
Web3・メタバースの実装を進める『MetaStep』