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2026.09.01

技術を3Dで継承。次世代マニュアル始動

分厚い紙のマニュアルや平面の図面だけで、複雑な機械の構造を正確に理解することは難しい。若手社員が現場で直面するこの悩みが、技術継承の大きな壁となっている。実機が手元になくても、スマートフォン上で装置を立体的に確認し、注目すべきポイントを直感的に学べる環境があれば、現場の教育は劇的に変わる。最新の3D技術を活用し、熟練の知見を次世代へ引き継ぐ企業の取り組みによって、これからの現場教育はどう変わるのか。(文=MetaStep編集部)

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複雑な装置を3D可視化。チノーの導入事例

2026年7月、VRやAR開発を手掛けるスタートアップの株式会社Forgersは、自社が提供する3Dデジタルマニュアル作成サービス「RITTAI MANUAL」が、計測制御機器メーカーの株式会社チノーに導入されたと発表した。

(引用元:PR TIMES

チノーでは、燃料電池や水電解評価装置など、機械・電気・制御といった複数の技術要素が組み合わさった複雑な装置を手掛けている。これらの装置を若手社員へ教育する際、従来は現場でのOJTに頼る部分が大きかった。紙の図面や写真だけでは、部品同士の細かな位置関係や内部構造までを伝えることが難しく、若手が自分のタイミングで復習できる環境の整備が急務となっていた。

(引用元:PR TIMES

この課題を解決するため、実機がなくても装置を立体的に確認できる教材として同サービスが採用された。特徴は、単に3Dモデルを表示するだけでなく、作成者が「見てもらいたい箇所」を指定できる点にある。ユーザーがその箇所をクリックすると画面がフォーカスされ、連動する説明文や動画が表示される。これにより、「どこを見るのか」「何を理解してほしいのか」をセットで分かりやすく伝えることが可能だ。

(引用元:PR TIMES

さらに、被写体を実物そっくりに再現する最新技術「3D Gaussian Splatting(3DGS)」に対応している点も導入の決め手となった。水電解評価装置の複雑なガスの流れや電気配線などを、現実と遜色のない高精細な3D空間で直感的に把握できる環境が整えられた。

3Dが促す教育の再構築。技術継承の新たな形

今回の事例が示すのは、3Dマニュアルというテクノロジーが、単なる便利な図解ツールにとどまらず、企業内の教育体制そのものを根本から見直すきっかけとして機能していることだ。
日本の製造業において、熟練者の高齢化、若手への技能伝承、教育環境の整備は重要な課題の一つとなっている。現場で培われたノウハウには、図面や文章だけでは伝えにくい部分もある。3Dマニュアルを活用すれば、注目すべき箇所や作業時の確認ポイントを仮想空間上で示せるため、若手社員は実機を見る前に装置の全体像や部品同士のつながりを立体的に理解し、自分のペースで復習できる。
興味深いのは、チノーの担当者が「3Dマニュアルを導入すれば、それだけで教育が完了するわけではない」と語っている点である。最新の3Dモデルはあくまで理解を助ける強力な入り口であり、それと組み合わせて活用する教材やカリキュラムの設計が重要になる。テクノロジーの導入を契機として、「若手に何をどう教えるべきか」という教育プロセス全体を再構築する前向きな動きが社内に生まれたことこそが、最大の効果と言えるだろう。
スマートフォンから手軽にアクセスできるこのマニュアルは、オフライン利用やAIによる多言語翻訳にも対応し、現場での実用性を高めている。先端の3D技術が、機械構造と人間の理解力の間にある溝を埋めていく。熟練者の生きた知見を仮想空間にアーカイブし、次世代へと確実にバトンを渡す仕組みは、日本の製造業を持続的に支える強力な土台となっていくはずだ。

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