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  3. 五感で味わう仮想空間。次世代ブランド戦略

デジタル広告が溢れる現代、消費者はスマートフォンの画面を流れる単なる「情報」だけでは心を動かされなくなった。企業がいま模索しているのは、ブランドの世界観を全身で記憶させる「没入型体験(イマーシブ)」だ。視覚や聴覚はもちろん、香りまでを仮想技術で再現し、現実の感情を強く揺さぶる。テクノロジーがもたらす極上の体験は、企業と顧客のコミュニケーションをどう変えるのか。(文=MetaStep編集部)

五感を再現する最新技術。イマーシブの現在地

(引用元:PR TIMES

2026年6月、見本市主催のRX Japan合同会社は、東京ビッグサイトにて「第2回 イマーシブテクノロジー EXPO」を開催した。デジタル広告やSNSによる情報過多が常態化する中、企業は「体験を軸にしたユーザーとのコミュニケーション」へと舵を切っている。本展示会は、五感を刺激する最先端の没入型技術が一堂に会する場として開催された。


(引用元:PR TIMES

会場では、仮想と現実を融合させる多彩な技術が注目を集めた。シーズユナイト株式会社は、AIアシスタントと疑似ホログラムを組み合わせたアバタープラットフォームを出展。スマートフォンを通じてキャラクターが実在するかのように対話できる空間を構築した。また、株式会社OpenHeartが提供する3Dフォトブースは、来場者の笑顔やポーズだけでなく、その場の空気感までも立体的に記録し、デジタルの思い出として共有する仕組みを提示している。


(引用元:PR TIMES

視覚以外の感覚に訴えかける技術も進化している。株式会社ヤマハミュージックジャパンは、音の方向をコントロールする音像制御システムを展示し、クリエイティブな音響表現を実現。さらに、株式会社レボーンが開発した「におい再現デバイス」は、独自のAIシステムで数万通りの香りを生成し、映像や音楽と連動したイマーシブ体験を可能にした。これら五感に直接働きかけるテクノロジーは、ブランドの世界観を構築する実践的なツールとして実用化のフェーズに入っている。

情報を「記憶」へ変える。仮想体験が動かす心

今回の展示会が明確に示したのは、企業のマーケティング手法が「情報を伝える」ことから、「感情を伴う体験として記憶させる」ことへとシフトを遂げたという事実だ。

これまで、ブランドの価値を伝える手段は、美しい映像や洗練されたキャッチコピーといった平面的なデジタル広告に大きく依存していた。しかし、情報が氾濫する現代において、消費者はそれらを一瞬で消費し、すぐに忘れてしまう。この課題を打破するのが、五感へのアプローチである。映像の没入感に立体的な音響が重なり、そこに特定の香りが漂うとき、仮想空間は単なるデジタルの表現を超え、現実の身体的な記憶として深く脳に刻み込まれる。

例えば、香りは人間の記憶や感情と最も強く結びつく感覚だと言われている。イベント会場で提供される仮想のブランド体験に独自の香りを連動させることで、消費者は後日同じ香りを感じた瞬間に、無意識のうちにそのブランドの記憶を鮮明に呼び起こす。これは、テクノロジーが人間の無意識の領域に入り込み、企業と顧客の間に長期的で強固な絆を築き上げることを意味している。

メタバースやVRといった技術は、もはや現実からの逃避や純粋なエンターテインメントの枠にとどまらない。人々の感情をポジティブに揺さぶり、ブランドへの深い共感と愛着を生み出す実践的なインフラとなった。

五感を刺激する仮想体験は、消費者の心に消えることのない温かな記憶を刻み込む。テクノロジーとクリエイティブが融合した空間で生まれた熱量が、現実世界での行動変容やブランドへの信頼へと力強く還流していく。仮想と現実の交差点で紡がれる新たなコミュニケーションの形が、日本のビジネスシーンをより豊かに前進させていくはずだ。