「備えなければ」と頭では分かっていても、つい後回しにしてしまう防災対策。震災を経験していない若い世代であれば特に、災害の脅威を日常的に意識することは簡単ではない。この心理的な距離感が、エンターテインメントの力で一気に縮まる。火の海と化したビルをよじ登り、巨大な発信機を押す。世界最大級のメタバースイベントに初出展した老舗の総合防災企業が仕掛ける、遊びの中に命を守る学びを忍ばせた新たな啓発の形に迫る。(文=MetaStep編集部)
▼ビジネス活用のヒントを毎日掲載!
Web3・メタバースの実装を進める『MetaStep』
能美防災株式会社は2026年7月11日から26日にかけて、株式会社HIKKYの開催による世界最大級のメタバースイベント「バーチャルマーケット2026 Summer」の企業出展会場「パラリアル秋葉原」に初出展を果たした。

(引用元:PR TIMES)
地震や台風といった自然災害が多い日本において、防災の重要性は広く認識されている。しかし住友生命が実施したアンケート調査「わが家の防災アンケート2026」では、20代の半数以上が具体的な対策を行っていないという実情が示された。日常の中で防災を自分ごととして捉える機会が少ない若年層へアプローチするため、同社は没入感のあるバーチャル空間という新しい接点を選んだ。
ブースの目玉となるのは、3D防災アクションゲーム「のぼれ!ファイアービルディング」だ。プレーヤーは小さくなったアバターで火災が発生したビル内部へ入り込み、燃えるデスクや噴き出す炎をかわしながらフロアを登る。最上階に設置された巨大な発信機(火災報知機)をいち早く押してスプリンクラーを作動させ、消火に成功するとクリアとなる。ゲームに参加していない来場者も外から奮闘するプレーヤーを観戦でき、共に盛り上がれるコンテンツだ。
(引用元:PR TIMES)
また会場には、普段触れる機会の少ない発信機の巨大モニュメントも設置。ボタンを押すと警報音が鳴る演出を施した。さらにA4サイズの防災備蓄品「しのげールII」の実寸大3Dモデルの展示や、火災時の行動を紹介するパネルを展開。イベント期間中には、実際のECサイトで備蓄品をお得に購入できるクーポンの案内も実施。バーチャルでの体験を現実の備えへと結びつける仕掛けを用意した。
メタバースは今や、非日常のゲームを楽しむだけの空間にとどまらない。現実社会の課題をエンターテインメントの力で包み込み、人々の行動を変えるための実践的なインフラとして機能し始めている。
防災というテーマは、命に関わるからこそ「正しく、真面目に」語られがちだ。しかし、その堅苦しさがかえって若年層の関心を遠ざけてしまう側面もある。能美防災が取ったアプローチは、ともすれば説教的と忌避され得る手法ではなく、まずは純粋な「遊び」としてユーザーを巻き込むものだ。
燃え盛るビルの恐怖を安全な環境で擬似体験し、仲間と歓声を上げながら巨大な発信機に飛び込む。この「失敗のコストがゼロ」というバーチャルの特性が、未知の設備に対する心理的ハードルを劇的に下げる。ゲームの中で防災設備への関心を自然と育み、現実の危機に備えるための導線を生み出す。
仮想空間で高まった関心を、実際の備蓄品の購入という現実の行動へシームレスにつなげている点も見逃せない。アバターの姿で楽しく学んだ知識が、現実の自宅に備蓄品を置くという具体的な備えへと還流していく。
老舗企業がメタバースという領域へ飛び込み、アバターたちとゲームに興じる。仮想空間で生まれたこの温かな交流と学びが、現実の社会をより安全にしていくための原動力となるだろう。
▼ビジネス活用のヒントを毎日掲載!
Web3・メタバースの実装を進める『MetaStep』