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2026.09.02

顔認証でコイン決済。NECが描く新取引基盤

ステーブルコインの実用化やAIエージェントによる自律取引への期待が高まる一方で、デジタル空間における本人確認と不正防止は複雑な課題として立ちはだかっている。

秘密鍵の紛失や盗難のリスク、個人情報の過度な集中によるプライバシー侵害への懸念。セキュリティを強固にするほど利用者の操作負担が増し、利便性を優先すれば安全性が損なわれるという二律背反が、オンチェーン取引の本格普及を阻んできたのが実情だ。

こうした安全性と利便性の両立という課題に対し、生体認証とブロックチェーンを融合させた新たなアプローチが動き出した。2026年7月、日本電気株式会社(NEC)は、高速ブロックチェーン基盤であるAvalancheブロックチェーンの開発とを推進するAva Labs, Inc.と覚書(MOU)を締結し、共同検討を開始するとともに、第一弾のホワイトペーパーを公開した。両社は、生体認証技術を活用したDID/VC(Decentralized Identifier / Verifiable Credential)とAvalancheを組み合わせ、安全・安心なデジタル取引基盤の実現可能性を検討する。実社会の身体性とデジタルの価値移転を結ぶ試みが、次世代の取引基盤を形作ろうとしている。(文=MetaStep編集部)

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顔パスで即時決済。Avalanche連携による安全な取引基盤[

NECとAva Labsが2026年7月10日に発表した共同検討は、NECの生体認証技術を活用したVC「FaceVC」と、高速なブロックチェーン「Avalanche」を組み合わせた次世代オンチェーンサービスの基盤構築を目指すものだ。
本構想の核となるのは、プライバシー保護と利便性の両立を目指す認証・決済モデルである。ホワイトペーパーが示す体験設計では、利用者は来日前などに発行されたFaceVCを用い、店頭での顔認証によるステーブルコインの即時決済から、旅行者資格などの属性VCに基づく加盟店リワードの受領までを、1タップの承認で完結する。利用者の生体情報や購買履歴は本人のウォレット内に保持し、決済や特典の受領に必要な最小限の情報のみを開示することで、利便性とプライバシー保護の両立を図る設計だ。


(引用元:PR TIMES

本構想では、NECのアイデンティティ層とAva Labsのブロックチェーン層を組み合わせた「2層構成のアーキテクチャ」が検証されている。アイデンティティの真贋管理を担う「Permissioned L1」、ステーブルコイン決済に特化した「決済専用チェーンSETTL」、そしてリワードの汎用流通を担う「C-Chain」という3つの用途別チェーンに要件を分担。これらをAvalancheが備える「Interchain Messaging(ICM)」によってシームレスに連携させることで、安全かつ高速な取引環境を構築する設計だ。
今回公開されたホワイトペーパーでは、起点となるユースケースとしてインバウンド観光客向けの店頭決済モデルを提示。さらに本フレームワークは、AIエージェントによる取引時の権限確認や、ステーブルコインを用いた公共支援での不正受給防止、ファンマーケティングにおける転売防止など、隣接する多様な領域への汎用的な適用も視野に入れている。

“身体”がそのまま鍵になる。AI時代を支える新たな信用の仕組み

NECとAva Labsによる今回の取り組みが示すのは、ブロックチェーンの利用体験を「複雑なパスワードや秘密鍵を自己管理する手間」から、顔認証を用いた直感的な本人確認へ近づけようとする構想である。
ブロックチェーン利用では、秘密鍵の管理が利用者の負担やリスクになり得る。今回の構想は、生体認証を組み込んだ秘密鍵のライフサイクル保護やFaceVCによる本人性の確認を通じて、利用者が複雑な暗号技術を過度に意識せず、安全に取引できる体験を目指している。
(※現時点で公表されているのは共同検討とホワイトペーパーであり、実証実験や事業化は今後の検討事項となる)。
加えて、このモデルはAIエージェントが経済活動に参加する近未来において、信頼の拠り所となる可能性を秘めている。自律的に判断して購入や契約を行うAIに対し、「本当に本人の意思と権限に基づいているか」を生体紐づきのDID/VCによって客観的に証明できるからだ。これにより、中央集権的なプラットフォーマーに頼ることなく、個人が自らのデータを主権的に管理しながら安全に取引を行う環境が整うことになる。
ブロックチェーンの実装は、単なるデジタル資産の移転にとどまらず、個人のアイデンティティと実社会の行動を結びつける信用基盤へと広がりを見せている。NECが提示した生体認証とマルチチェーンの融合モデルは、次世代のデジタル社会において誰もが安心してオンチェーン取引を行える土台となることが期待される。

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