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2026.07.09

抽選機が結ぶ仮想と現実。関係人口の可視化

地方都市が生き残る鍵は、一過性の来訪者を継続的に地域と関わる「関係人口」にへ変換することだ。しかし、見知らぬ土地のデジタルコミュニティに人を巻き込む心理的ハードルは高い。
この課題に対し、北海道の小さな町で驚くべきアプローチが実践された。誰もが知るアナログな「ガラガラ抽選機」を、仮想空間への入り口にする逆転の発想だ。現実のワクワク感がデジタルの絆を紡ぐ、新たな地方創生の形を追う。(文=MetaStep編集部)

「7段階」でデジタルへ誘導。京極町での実証

2026年6月、NFTを活用した地方創生コンサルティングや開発事業を推進する株式会社あるやうむは、北海道京極町で実施されたオフラインイベント「ガラガラ抽選会」の成果を公開した。企画を主導したのは、同町で地域おこし協力隊DAO(分散型自律組織)マネージャーを務める「やまちゅー」氏だ。5月中旬の3日間、道の駅で開催されたこのイベントには154名が参加し、関係人口の創出と可視化を目的としたLINEオープンチャットに約110名が新規加入するという大きな成果を上げた。

(引用元:PR TIMES

このイベントの核心は、ガラガラ抽選機を回すための条件を、デジタルツールへの参加と巧みに結びつけた「7段階チャレンジ」にある。参加者は、1回目を回す条件としてLINEオープンチャットへ入室し、3回目にはプロジェクト管理ツール「Notion」のインストールとアカウント登録を行う。さらに回数を重ねるごとに、イベントアンケートへの回答や、地域コミュニティへの参加表明など、より深く町と関わるアクションが求められる仕組みだ。

(引用元:PR TIMES

参加者は「もう1回回したい」というゲーム的な心理に背中を押され、自然とデジタル上の接点へと誘導されていく。待機列を作らずスムーズに一瞬で完結し、参加条件を自由に設計でき、かつ約2万円という低コストで導入できるアナログな抽選機が、地域と来訪者をつなぐ優秀なユーザーインターフェースとして機能したのだ。

アナログが解き放つ仮想の力。地域とつながる新たな形

メタバースやWeb3といった先端技術が地方創生に導入される際、現場がしばしば直面するのが「デジタルの壁」だ。どれほど優れたデジタルコミュニティの基盤を用意しても、地域住民や通りすがりの観光客にとっては参加の心理的負荷が高く、結局は一部のITリテラシーが高い層だけの閉じた空間になってしまうことは珍しくない。


(引用元:PR TIMES

しかし、今回の京極町での取り組みが証明したのは、仮想の空間の仕組みを社会実装するためには、アナログな「手触りのある体験物理的な触れ合い」こそが鍵になるという事実だ。目の前で黄金の玉が出るかもしれないという高揚感や、景品としてもらえる地元焼肉店の食事券といった「現実の体温」が、参加者のデジタルへの警戒心を瞬時に溶かしていく。


(引用元:PR TIMES

ここで生まれたLINEオープンチャットやDAOへの加入は、単なるフォロワー数の増加とは本質的に異なる。参加者はデジタル空間で京極町の情報に継続的に触れ、意見を交わし合うことで、遠く離れた場所にいながらも「町づくりに参加している」という当事者意識を深めていく。物理的な来訪は一度きりであったとしても、仮想空間での関わりが続く限り、彼らはその地域を支える貴重な「関係人口」であり続けるのだ。

地方の過疎化が進み、自治体の存続すら危ぶまれる中、デジタルの力で町と人をつなぎ直す試みは急務だ。誰もが親しみを持つアナログな装置を入り口とし、そこからデジタルの海へと人々を誘うこのモデルは、テクノロジーと社会をいかにして接続すべきかという重要な示唆を与えている。道の駅に響き渡る抽選機の音が、仮想と現実をシームレスにつなぎ、一人の来訪者を未来の「町民」へと変えていく。そんな共創の風景が、地域の未来を力強く切り拓こうとしている。