数日を要する着金、不明瞭な手数料、そして複雑な手続き。194兆ドルもの資金が動くクロスボーダー送金市場において、私たちは長らく「物理的な距離」ではなく「システムの摩擦」に悩まされてきた。この世界的な課題に対し、ブロックチェーンという新興技術が提示した答えは、既存の銀行網を否定することではなく、その内部に深く同期し、アップデートするというアプローチである。
2026年5月、株式会社Datachain、株式会社Progmatは、Swiftシステムと連携したステーブルコイン送金システムに関する特許登録が完了したことを発表した。ユーザーがステーブルコインの存在を意識することなく、既存の銀行窓口から高速かつ低コストな海外送金を実行できる。この伝統と革新の融合を支える知的財産権の確立は、次世代金融インフラの覇権争いにおいて、日本企業が強力な主導権を握る契機となるのではないか。(文=MetaStep編集部)

(引用元:PR TIMES)
Datachainが2026年4月14日付で取得した特許(第7850327号)は、既存の国際銀行間通信網であるSwiftのAPIフレームワークを活用し、銀行を経由したステーブルコイン送金を実現する技術に関するものだ。2024年10月の出願から約1年半を経て正式に登録された本特許は、Web3技術を既存金融の強固な枠組みの中にシームレスに組み込むための架け橋となる可能性がある。
本システムは、AML/CFT(マネーロンダリング防止・テロ資金供与対策)をはじめとする金融機関特有の規制対応といった実務課題をクリアしつつ、送金指図者がステーブルコインやブロックチェーンの存在を意識せずとも、従来通りの銀行経由の送金体験のまま、高速かつ低コストな国際送金を可能にする。従来の銀行体験を維持しつつ、その裏側でブロックチェーンによる高度な決済処理が並行して走るという「不可視化された技術実装」が、本特許の中核といえるだろう。
これまでのWeb3送金は、専用のウォレット作成や秘密鍵の管理、あるいは暗号資産に対する法的解釈など、一般の利用者や金融機関にとって参入障壁となる要素が多かった。しかし、世界中の銀行がすでに利用しているSwiftシステムと直接連携する本スキームは、既存の業務フローを大幅に変えることなく、決済インフラのみを最新の状態へ更新できる。国内では信託型ステーブルコイン(第三号電子決済手段)の発行・流通に向けた環境整備が加速しており、法制度と技術の双方が実用化に向けて足並みを揃えた形だ。
今回の特許取得が示唆するのは、ブロックチェーンが既存金融と対峙する「対立軸」であることを脱し、その心臓部を支える「インフラ」として溶け込みつつあるというパラダイムシフトだ。
G20が掲げる国際送金の改善目標、すなわち「コスト・スピード・アクセス・透明性」の抜本的な向上に対し、本特許で保護されるSwift連携型送金スキームは、実効性の高い回答となる可能性を秘めている。194兆ドルという途方もない規模の国際送金市場において、Swiftというデファクトスタンダードと連携する優位性は、単なる一企業の利益を超え、日本の金融競争力そのものを定義し直すことにもつながるだろう。
また、本特許の意義は国際送金だけにとどまらない。信託型ステーブルコインを用いた証券決済や国際貿易決済など、信頼性が最優先されるBtoB取引において、既存の銀行網を介したステーブルコイン決済の権利が守られていることは、グローバル市場での標準争いにおける強力な盾となる。同社が国際出願(PCT出願)を並行して進め、知的財産保護の範囲を主要国へ拡大している動きは、世界中の金融機関がステーブルコインという共通の決済言語を採用する未来を見越した戦略的な布石といえる。
ブロックチェーン技術は一部の専門家だけの特別な技術であることをやめ、金融の背後で静かに、かつ確実に価値を運ぶ仕組みへと昇華した。Datachainが確立したこの送金スキームは、既存金融とWeb3が不可分に融合する一つの完成形を提示している。この見えない革新が、硬直化した世界の資金循環にどのような流動性をもたらすのか。金融機関との連携による社会実装の進展に、各界の注目が集まっている。