地方を訪れた観光客と、その後も継続的な関係を築くことは容易ではない。観光やイベントを通じて接点が生まれても、一度きりの訪問で終わってしまうことが大半だからだ。
この課題を打破する鍵として、ブロックチェーン技術を用いた「デジタル上の市民パスポート」が注目を集めている。発行して終わりではなく、保有者限定のコミュニティを通じて長期的な関係を築き上げる。
テクノロジーが離れた場所に住む人々と地域を結びつけ、新たなコミュニティを生み出す。デジタル技術を用いた関係人口の創出は、地方創生の形をどう変えていくのだろうか。(文=MetaStep編集部)
2026年4月28日、日本最大級のNFTマーケットプレイス「HEXA(ヘキサ)」を運営するメディアエクイティ株式会社は、東武トップツアーズ株式会社と連携し、富山市の関係人口創出事業「TOYAMAみらい市民パスポート」の第2弾募集を開始したと発表した。
(引用元:PR TIMES)
この取り組みは、富山県外に居住しながら「富山市が好き」「これからも関わり続けたい」という思いを持つ人たちが、デジタル上のパスポートを介して継続的に富山市とつながる仕組みである。2026年1月に実施された第1弾では、1,000枚の発行予定に対しわずか5日で上限を超え、最終的に定員の約2.4倍となる2,433件の応募が集まった。
特筆すべきは、応募者の約75%が20〜30代であり、約6割が移住を検討している層だったことだ。富山市に継続的に関わりたいというファンの存在と熱量が、明確な数字として可視化される結果となった。
第2弾も発行枚数は1,000枚で、取得費用は無料だ。パスポートを保有することで、市内の美術館やコワーキングスペースを2時間無料で利用できるほか、保有者限定のオンラインコミュニティに参加できる。このコミュニティでは、移住やふるさと納税などの公式情報が継続的に受け取れるだけでなく、アンケートなどを通じて地域づくりに当事者として参加することができる。
人口減少に悩む自治体が、最新のテクノロジーを活用して関係人口をどのように育てていくべきか。富山市の取り組みは、その実践的な答えを提示している。
従来の地域施策は、ノベルティグッズの配布や単発のイベント開催など「配って終わり」になるケースが多かった。しかし、ブロックチェーン技術を活用したNFTを参加チケットとして用いることで、本当にその地域に関心を持つ熱量の高い層だけを集めたクローズドなコミュニティを形成できる。
応募者の大半が20〜30代の移住検討層であった事実は、Web3技術が若年層との接点構築に有効であることを示している。また、利用者に暗号資産やウォレットといった専門知識を要求せず、日本円決済や簡単な登録で参加できるプラットフォームを採用した点も、幅広い層の参加を促す大きな要因となっている。
今すぐ移住を決断しなくても、オンラインコミュニティを通じて定期的に地域課題について意見を交わし、特典を利用して現地を訪れる。こうした「デジタル関係人口」として継続的に街に関与し続ける仕組みは、物理的な距離という制約を無効化する画期的なアプローチだ。情報を受け取り、意見を伝え、人々とつながるという体験の積み重ねが、「関心を持つ人」から「地域を動かす当事者」へと意識を変化させていく。
デジタル空間でのつながりが、やがて地域への移住や継続的な訪問という行動へと結実していく。コミュニティの育成という本質的な価値に特化したこのプロジェクトは、全国の自治体による地域活性化の新たなモデルケースとなるはずだ。