日本円だけでNFTの発行や売買ができる、日本初のNFTマーケットプレイス「HEXA(ヘキサ)」について学ぶ連載。全16回、約2年弱続いた当連載も、最終回を迎えます。
「振り返れば、この連載はずっと同じことを言い続けていたように思います――」そう語る吉野さん。連載を通して再認識した、NFT、コミュニティの可能性。改めて原点に立ち返り、その思いを語っていただきます。(リード文=MetaStep編集部、文=デイジープレイス吉野さん)
執筆者

株式会社デイジープレイス
代表取締役COO
吉野 渉
こんにちは、デイジープレイスの吉野です。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。この連載も、いよいよ最終回を迎えます。締めくくりにあたって、少し立ち止まって考えてみたいことがあります。
それは「NFTとは、結局何だったのか」
という問いです。
BtoC(企業と消費者)も、CtoC(個人と個人)も、よくよく見れば、その根っこには必ず「コミュニティ」があります。
お気に入りのカフェに通い続けるのは、コーヒーだけが目的ではありません。あの場所の空気が好きで、店主の顔が浮かぶから足を運ぶ。フリマアプリで見ず知らずの出品者から買うのも、レビューという小さな信頼の積み重ねがあるから成立します。経済活動の多くは、数字の前に「関係性」で動いています。
徳島県を拠点に活動するPCWアートコミュニティは、その好例です。代表の中山知保さんは、NFTアートの制作をきっかけに地域とアートをつなぐコミュニティを立ち上げ、障がいのある方がイベント運営に参加する仕組みや、クリエイターの塗り絵素材を福祉施設へ届ける活動へと広げてきました。
NFTが入口でも、目的地はずっと「人と人がつながる場所」でした。
PCWアートコミュニティのイベント
DAOという言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。NFTの世界でよく登場する概念で、「分散型自律組織」と訳されますが、難しく考える必要はありません。
要するに、DAOもコミュニティです。
では、コミュニティとは何か。シンプルに言えば、統一した方向性を持つ人たちの集合体です。全員が同じことをしている必要はない。PCWのように、絵を描く人・運営を支える人・遠くから応援する人、それぞれが自分のできる形で関わりながら、同じ方向を向いています。その「向き」が揃っているとき、コミュニティは生きています。
コミュニティの話をするとき、私がどうしても紹介したい場所があります。
徳島県を拠点に活動するPCWアートコミュニティ。代表の中山知保さんは、2021年にNFTアートコレクション「PhantomsCrypto」の制作をはじめ、その活動の広がりの中でこのコミュニティを立ち上げました。訪問看護事業とコーヒー関連事業も手がけるという、一見すると不思議な組み合わせの中に、PCWの本質が見えます。アートも、医療も、コーヒーも、突き詰めれば「人と人が関わる場所」を作ることだからです。
PCWが特徴的なのは、「参加のかたち」を問わないことです。
作品を出展したい人、イベントの運営を手伝いたい人、眺めているだけでいい人、遠くから応援したい人——すべての関わり方を等しく歓迎する。登録も参加も無料で、門を狭くしない。
そして、その活動の輪は確実に地域へと広がっています。静岡県の書道教室の廊下には、PCWの作品が常設展示されています。お子さんから大人まで、毎日その絵の前を通る。障害者就労支援事業所では、デジタルアートに触れることが利用者の新しい表現のきっかけになっており、描かれた作品は同じ場所に並べて展示されています。国内にとどまらず、韓国AI作家協会やニュージーランドのアーティストとパートナーシップを結び、海外でのイベントも活発化しています。
華やかなブームとは無縁の場所で、ひとつひとつ積み上げてきたこのコミュニティは、NFTが本来持っていた可能性をとても誠実に体現していると思います。
アートで地域を豊かにしたい。福祉に貢献したい。表現できる人を増やしたい。その方向性に共鳴した人たちが、それぞれのペースで集まっている。これが、コミュニティというものの、飾らない姿です。
改めて、NFTの良さとは何でしょうか。
価格の上下、希少性、投資としての側面――そういった話は散々されてきました。
でも、最後にもう一度だけ、別の角度から見てみたい。
NFTとは、クリエイターとエンドユーザーの関係をブロックチェーンに刻む仕組みです。誰が作ったか。誰が受け取ったか。それが消えない記録として残る。これは単なる技術の話ではなく、「あなたの作品を、私は確かに受け取った」という意思表示が、永続的な形を持つということです。

NFTの本質について
NFTはあくまで手段にすぎません。
それは連載を通じて、何度か触れてきたことでもあります。手段が目的になったとき、何かがズレていく。ブームが去るたびに繰り返されてきたことです。
ただ、こうも思います。NFTをきっかけに出会った人たちがいる。NFTをきっかけに地域で動き出したプロジェクトがある。NFTをきっかけに、はじめて自分の作品に値段をつけたクリエイターがいる。手段から生まれたつながりは、手段が消えても残ります。
この連載が、HEXAを使う個人店舗やクリエイターの方にとって、少しでも「自分ごと」として考えるきっかけになったなら、これ以上嬉しいことはありません。
振り返れば、この連載はずっと同じことを言い続けていたように思います。NFTは難しくない。ウォレットがなくても買える。日本円で売れる。個人店舗でも使える。クリエイターが自分の作品に値段をつけていい——。
でも、本当に伝えたかったのは、その先にあることでした。
誰かの作品を買うとき、人はただモノを手に入れているわけじゃない。「あなたのことを応援しています」という気持ちを、形にしているんだと思います。NFTはその気持ちに、消えない記録を与える仕組みです。ブロックチェーンに刻まれたその取引は、値段が下がっても、ブームが去っても、「あの日、あの人が選んでくれた」という事実として残り続ける。
それは、レシートよりも、フォローよりも、ずっと重たいものです。
NFTの未来がどうなるかは、誰にもわかりません。市場は揺れるし、技術は変わるし、言葉の定義さえ変わっていくかもしれない。それでも、NFTをきっかけに誰かと出会い、NFTをきっかけに動き出したプロジェクトがあり、NFTをきっかけにはじめて自分の作品を世に出したクリエイターがいます。
手段は変わっても、そこで生まれたつながりは変わりません。NFTが結んだコミュニティの未来を、私はまだ信じています。そして、どんなに技術が進んでも、コミュニティの中心には、いつも「人」がいます。
長い間、読んでくださってありがとうございました。