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  3. 【連載】35歳からクリエイターの夢を実現!TAKUROMANから学ぶセルフマーケティング術(第5回)

35歳にして突如クリエイターになることを誓い、行動に移し、夢をかなえたという異色の経歴を持つTAKUROMAN氏。MetaStep(メタステップ)編集部はTAKUROMAN氏に、クリエイターを目指す学生や若手クリエイター向けコラム執筆を依頼。TAKUROMAN氏がクリエイターを目指す波乱万丈な日々の中で学んだ、クリエイターとして生きていくために必要なノウハウをお届けするコラムの5回目です。(第1回からお読みになりたい方はこちらからご覧ください)

この連載の流れ

前回は漫画学校を卒業後、仕事をしながら途中で何度もやめそうになりながらも、どうにか絵を描き続けてこられた理由についてお伝えしました。今回は、2021年にようやくアーティスト活動を開始するに至った経緯と初めての展示会に向けて実践したことについてお伝えしたいと思います。

アーティスト活動開始の経緯①

前回の第4回で、電車の移動時などに毎日のように描いてInstagramにアップしていた絵が、いつしか2000個を超えていたと書きました。途中、たしかまだ500個くらいだった時に気づいたのですが、10個のうち1個程度、良いと思える作品がありました。確率にすると10%です。その時なんとなく、良い作品が100個くらいあれば個展ができるかなと考え、まずは1000個描こうと思ったのです。

それからというもの、特段数えることはなかったのですが毎日続けてきて、ある時に数えてみたところ2000個になっていました。つまり理論上、良い作品が200個はあることになります(笑)。この蓄積は後で活きてくるのですが、それについては次回書きますね。

アーティスト活動開始の経緯②

もうひとつ大事なことがありました。

2020年10月から2021年3月まで、愛知県が海外の名門ビジネススクールINSEADと提携し提供していた半年間のプログラムに応募したら、幸運にも審査に通り参加することができました。修了時のプレゼンで、通常は一人につきひとつビジネスプランのプレゼンをするのですが、時間内ならひとつでなくてもいいということだったので、僕はビジネスのプレゼンに加えてもうひとつ、個人としてアーティスト活動を行い、インテリアブランドを作りたいというプレゼンをしました。

このプログラムに参加していなくてもアーティスト活動を開始していたとは思うのですが、ひとつの指針といえる学びがありました。それは「円の中心にいること」がとても重要ということです。どういうことかというと、どのような企業や個人であれ、他者とのつながりや相互の取引構造の中のエコシステムでビジネスは成り立っていると思います。その中で立ち位置はそれぞれ異なるものの、できるだけ円の中心にいる方が望ましいということです。

たとえばiPhoneはサードパーティー(外部)のアプリ開発会社がiPhoneを通じてアプリを販売しています。アプリが販売されるたび、運営元のアップルにも収益が入ります。さらにアップルは全てのアプリの販売履歴という重要な情報も知ることができます。アップルと各企業との関係性は、まるで自転車のホイールのスポークのように、中心となる存在であるアップルの周りにサードパーティー企業が集まっています。まさにアップルこそ円の中心であり、それぞれにアプリ開発会社はさながら惑星の周りを回る衛星のようです。力関係・交渉力の上でも、やはりアップルがアプリ開発会社より強いと言えるのではないでしょうか。

一企業や個人がこれほどまでに円の中心になることは簡単ではありませんが、基本的な考え方としては円の中心に近いほど自由度が高く、収益・情報も得やすく、存在価値が高まるということです。

アーティスト活動は、そのアーティストの作品があってこそ成り立つものであり、価値が高いのではないか。そのように思ったことも活動を決意した理由だったように思います。(といっても実際にはそんなに簡単ではないのですが・笑)

愛知県✖️INSEADプログラムで使用したプレゼン資料表紙

展示会「クリエイターEXPO」に挑戦

ここからはアーティスト活動を開始すると決めてから何をしたかについてお話ししていきます。あらためまして大変お待たせしました。いよいよ本連載のタイトルにもあるセルフマーケティング術の話になります(笑)。

2021年3月当時、アーティスト「TAKUROMAN」のことを知っている人がまだほとんどいない中、どのように自分のことを知ってもらい、クライアントを見つけていくか。まさにマーケティングが必要でした。

僕は、InstagramやX(当時の名称はTwitter)等のオンラインプラットフォームに加え、やはりフィジカル(リアル)な場での出会いが有効であると考え、クリエイターEXPOという展示会に出ることにしました。同展示会は企業と個人クリエイターのマッチングのイベントですが、このイベントを選んだ理由は、以前に僕は仕事でブースを見て回ることが何度かあり、企業側の立場でクリエイターと接して仕事を依頼したことがあり、逆の立場でイメージをできていたことが大きいです。

もうひとつの理由は、他に有力な候補が見当たらなかったからです。たとえば、デザインフェスタは多くのクリエイターが参加する有名なイベントですが、どちらかというと企業よりは個人の来場者が多い印象です。B to Cで直接、消費者のファンを獲得し、商品を販売するにはとても適していると思いますが、B to Bに特化しているわけではありません。クリエイターEXPOは、コンテンツ東京という大きなくくりの中にある展示会で、ライセンシングジャパンなどの展示会が併催されているため、キャラクターIPやクリエイターが作るコンテンツを探している来場者が多く、企業担当者と出会うには最適な展示会だと思いました。

ところで数年前は、まさか自分がその展示会に出るなどと思いもしませんでした。というのも当時、ブースを回っていて、個人のクリエイターの仕事ぶりを目の当たりにして、自分にはとてもできないと思ったのです。創作活動をおこなう傍ら、展示会では自らブースに立ち、チラシを手渡し商談をする。そのように一人で何でもこなす姿に畏敬の念を覚えたものです。

一方、出展しているクリエイターの中にはそのような行動を苦手とする人もいて、あまり積極的に来場者に話しかけられない人もいるようでした。それはそれで寂しく見えるものなのですが、いずれにしても「自分にはこんなことは、とてもできない」と思っていました。

だから出展当日まで、自分にできるだろうかという大きな不安がありました。「誰も自分のブースに寄ってくれなかったらどうしよう」「興味を持ってくれた人と果たしてうまく商談できるのだろうか」などと、さまざまな不安があったのです。しかしながら、まずは申し込まないことには始まりませんから、清水の舞台から飛び降りる思いで申し込みをしました。

販促ツールの制作

出展すると決めたら、次は当日に向けて準備あるのみです!

ホームページの立ち上げ

展示会に出てチラシを手に取った人がより詳しくTAKUROMANのことを知りたいと思った時に詳しい情報を見てもらえるように、ホームページを制作することにしました。

最近は便利なもので、コーディングの知識がなくてもWebサイトを制作できるサービスがたくさんあります。僕はWixというプラットフォームを活用し、ホームページを制作しました。

TAKUROMANホームページ(当時のもの)

チラシや名刺を制作

展示会で配布するためのチラシも必要です。僕はデジタルで絵を描いてきたもののデザインについては経験がありません。アートやデザインになじみのない方にはわかりにくいかもしれませんが、アートやイラストを描くこととチラシなどのデザインをすることは全くの別物なのです。

しかしながら、どうにかCANVAというプラットフォームを活用し、自分でやることができました。CANVAはイラストレーターやフォトショップといったツールを使えなくてもデザインをすることができ、テンプレートも活用できるので便利です。同じくCANVAで名刺も作りました。

初出展したクリエイターEXPOで使用したチラシ

クリエイターEXPOで使用した名刺のデザイン

ブースのデザイン

展示会ではブースのデザインも重要です。一般的には、来場者は2秒でそのブースに寄るかどうかを判断するといわれます。平日昼間の忙しいビジネスパーソンたちが時間を割いて訪れているのです。その人にとって興味をひく何かがなければブースに立ち寄ることはありません。できるだけインパクトのあるブースにする必要があります。

そこで、僕は壁いっぱいのタペストリーを使用することにしました。

クリエイターEXPOで使用したタペストリー

グッズを作って飾る

展示会に出るにあたって、どのようなクライアントと出会いたいかと考えた時に、僕の作品を使って商品を作りたいというクライアントを想定しました。そこで、1点からグッズを作ることができるプラットフォームを活用していくつかのグッズを作りました。INSEADの修了時にもプレゼンしたように、インテリアブランドを作るという考えがありましたので、クッションなど、インテリア向きのものを作りました。

クリエイターEXPOで飾るため制作したクッション

何がくるかわからない引き合いに備える

展示会ではさまざまな来場者がいますから、ふたを開けてみないとどのような引き合いがくるかわかりません。なのでチラシの内容についても、あまり決めつけずに自分や作品の紹介をするようにしました。

経験あるクリエイターは、冊子もののパンフレットを用意して、さまざまなサービスを詳細に記していることもありますが、普段の仕事や展示会への出展を重ねるうちに自らの提供できるサービス内容を洗練させていった結果なのだろうと思います。

僕は自分がどのような作品を描いているかわかるように作品のシリーズごとにまとめ、わかりやすくまとめた資料をおいておきました。

TAKUROMANの作品資料(一部)

準備が完了、いよいよ当日へ

かくして、初めての展示会出展に向けてさまざまな準備を終え、クリエイターEXPOを迎えることとなりました。出展初日の前日、宿泊しているホテルで寝る前にひとつの絵を描きました。なぜかというと、展示会に出たら、それまでの状態には「もう戻れない」気がしたのです。

それまでは仕事をしながら、絵を描いてはInstagramにアップをしてきました。そこに確たる目的はなく、ただ「描くこと」「続けること」が目的でした。そこには出口の見えないもどかしさはありましたが、ある意味では純粋に絵を描く行為を楽しんでいたとも言えます。展示会に出るということは、プロとして仕事を受けていくということであり、以前にはもう戻れないと思い、最後にひとつ描いておきたいと思ったのです。

(実際に戻れなくなったかどうかについては、機会があれば追って書きたいと思いますが、当初思っていたのとはまた違った状況になっています)

そしていよいよ展示会当日になりました。

クリエイターEXPO初日の前日に描いた絵

―つづく―

今回は、2021年にアーティスト活動を開始した経緯と、ゼロから仕事を受注するため展示会に出展するまでにどのような準備をしたかについて書きました。次回は、初参加したクリエイターEXPOにて、どのようにしてゼロから仕事を受注するに至ったかについてお伝えしたいと思います。