35歳にして突如クリエイターになることを誓い、行動に移し、夢をかなえたという異色の経歴を持つTAKUROMAN氏。MetaStep(メタステップ)編集部はTAKUROMAN氏に、クリエイターを目指す学生や若手クリエイター向けコラム執筆を依頼。TAKUROMAN氏がクリエイターを目指す波乱万丈な日々の中で学んだ、クリエイターとして生きていくために必要なノウハウをお届けするコラムの6回目です。(第1回からお読みになりたい方はこちらからご覧ください)
この連載の流れ
前回は、2021年にアーティスト活動を開始した経緯と、ゼロから仕事を受注するために展示会へ出展するまでにどのような準備をしたかについて書きました。今回は、初めて参加したクリエイターEXPOにおいて、どのようにしてゼロから仕事の受注に至ったのかをお伝えしたいと思います。
クリエイターEXPOに初めて参加したのは2021年でした。まだコロナ禍の最中であり、そこは最近の事情と多少異なることもありますが、その後、僕は2022年、2023年、2024年と、4年連続で出展してきており、展示会でやることに関しては大きな違いはありませんので、展示会での活動内容ということで参考にしていただけますと幸いです。
無事に当日を迎えることができました。いよいよ、一人でブースに立つ瞬間です。
展示会には、初参加の方から何度も出展しているベテランまでさまざまな人が集まります。誰もが最初は初心者ですし、緊張するのは当然のこと。実際、僕自身もかなり緊張していました。しかし、仕事で企業の展示会に何度か出展した経験があったため、少し気持ちに余裕が持てたのは幸いでした。
たとえ展示会が初めてでも、社会人経験やこれまでのキャリア、独自のバックグラウンドは誰しも持っています。そこに自信を持ち、自分らしいスタイルで臨むことが大切だと考えています。
クリエイターEXPO 当日のブースにて
僕の隣のブースは、テレビ番組などでも採用されている人気イラストレーターさんで、常に人が集まっていました。それと比較して、自分のブースには人の流れがまばらで、正直かなり不安になりました。
ですが、こうした「隣と比べてしまう」状況は避けられません。大切なのは、他人と比べるのではなく、自分のブースをどう打ち出すかです。たとえ人が少なくても、見せ方やアプローチ次第でしっかりチャンスを掴むことは可能です。その詳細については、後述したいと思います。
展示会は基本的に10時~17時まで開催されますが、その時間をどう過ごすか、最初は戸惑うものです。お客様が来れば商談に入れますが、問題は「誰も来ていない時間帯にどう動くか」です。
通路を歩く人にチラシを配る? 声をかける? 立って待つ? 座って待つ? 答えは一つではありませんし、人によって正解も異なります。僕の考えは、「興味を持ってくれた人が自然に話しかけやすいブースをつくる」ことです。
それは、タペストリーとして掲示するメインビジュアルだったり、展示する実績などです。たとえば、実績がある方は、実際に広告等に使用された作品を美しく並べると非常に強力なアピールになります。実績がない場合でも、「受けたい仕事」をイメージできるサンプル展示が効果的です。
僕の場合、初出展時はグッズとして使用されることを意識していたため、実物のクッションを展示しました。それにより「こんなふうに使いたい」と具体的なイメージを持ってもらいやすくなりました。
展示したクッション実物
展示会にはさまざまな業種・目的をもった来場者が訪れます。自分の狙いとは全く異なるニーズを持つ方に出会うこともあり、柔軟な対応力が問われます。
とはいえ、すべてに対応できなければダメというわけでもありません。「どんな仕事を受けたいか」を事前に整理しておくことが重要です。あらかじめターゲットをある程度絞ることで、商談の方向性が定まりやすくなります。
個人クリエイターにとって、時間と労力は有限です。一度に多くの案件を受けるのは物理的に難しいこともあります。そこで有効なのが、既存作品のライセンス提供です。
過去に制作した作品を使用してもらい、対価を得る方法であれば、新作を毎回つくる必要がなくなり、制作者にも発注者にもメリットがあります。
私見になりますが、ライセンスに関して覚えておきたい基本知識は以下の通りです。
・ロイヤリティの相場:商品の売上の3~10%程度
・最低保証(MG):売上が少なくても一定金額を保証(例:30万円~)
・著作権は譲渡しないこと:必ず契約書に明記
・契約書のチェックは専門家に依頼すること
これらを把握しておくと、キャパシティを超えるオファーにも対応できる道が開けます。
ありがたいことに、僕は初回の展示会で以下のような仕事が実現しました:
・アートと音楽を融合したライブイベントのキービジュアル制作
・同イベントでのライブペイント出演
・作品販売サイトへの出品
・商品やグッズへの作品使用(ライセンス)
・印刷会社の会報誌への掲載
・個展の開催
・飲食店でのディスプレイ用作品販売
・アート展参加の打診
当初想定していなかったような内容もあり、柔軟な姿勢で商談に臨むことの重要性を実感しました。 展示会がきっかけで決定した個展(横浜のヘアサロン Lounge様)
個展のビジュアル「アノヒトゴミハ、タラカモノダッタ」
成果が得られるかどうかは、次の2点に集約されると感じています。
1.ビジネス経験の有無 来場者はビジネス目的で訪れており、「ビジネス目線での提案」が求められます。僕は長く社会人経験があったことで、相手のニーズに応じた提案ができた点は強みになったと思います。
2.独自性(経歴と作品) 僕の場合は「35歳でゼロから漫画家を目指し、再び社会人に戻っても創作を続けた」ことが経歴のユニークさとして興味を持たれました。 また、作品自体にもパッと目を引くインパクトや、他にない切り口を意識しました。
ここは、人により経験が大きく異なるため、ご自身のもつ独自の経歴やユニークさを掘り下げてアピールされるとよいかと思います。
2025年7月2日〜4日、僕は今年で5回目となるクリエイターEXPOへの出展を予定しています。最近は表現手段の幅が広がり、活動内容も少しずつ変化してきました。そのたびに打ち出し方に悩むこともありますが、発信する内容が変われば、興味を持ってくれる相手も変わります。だからこそ、毎年異なる出会いがあり、それを楽しみにしています。
今回は、2021年に初参加したクリエイターEXPOで、どのようにしてゼロから仕事を受注するに至ったかについて書きました。次回は、NFTなどデジタルアートの分野で、どのようにして活動が広がっていったのかについてお伝えしたいと思います。