急速に高齢化が進む日本において、65歳以上の約3.6人に1人が認知症またはその予備群とされている。「1人では何もできなくなる」「診断されたら施設に入るしか道がない」といった過度に悲観的な思い込みは、当事者や家族から希望を奪う要因となってきた。
世界アルツハイマーデー(9月21日)に合わせて発表された「認知症ケア支援VR」の新たなコンテンツ「新しい認知症観の理解」では、認知症と診断された方の視界を追体験できる。バーチャル技術を活用し、本人の抱える不安や戸惑いを心で理解するこの試みは、誰もが希望を持って自分らしく暮らせる社会を築くための温かな架け橋となりそうだ。(文=MetaStep編集部)
▼ビジネス活用のヒントを毎日掲載!
Web3・メタバースの実装を進める『MetaStep』
2026年9月18日、医療VRの開発を手掛ける株式会社ジョリーグッドと大塚製薬株式会社は、共同展開するVRプログラム「FACEDUO」の新コンテンツとして、「新しい認知症観の理解」の提供を開始した。
(引用元:PR TIMES)
2024年1月に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」では、認知症になっても尊厳を保ち、自分らしく暮らし続けられる「共生社会」の実現が掲げられている。しかし、依然として「認知症になったら何もできなくなる」といったイメージも残っている。

(引用元:PR TIMES)
本プログラムは約15分間で、認知症と診断された本人の視点を疑似体験できる構成となっている。具体的には、買い物を忘れてしまうといった日常の不安を感じる場面、医師から告知を受けた瞬間の心細さを体験する場面、そして地域で前を向いて暮らす姿を通して固定観念を見つめ直す場面という3つのシーンで展開される。プログラム内には本人による語りや専門家の解説も含まれており、「認知症になったら人生の終わり」といった固定観念を見つめなおし、周囲の人々がどう関わるべきかを学ぶことができる。
監修を務めた医師の大塚智丈氏は「毎年50万人以上が新たに認知症を発症すると想定される中、偏見といえる過度に悪い認知症観によって苦しむ人がまだ多い。初診時に「新しい認知症観」を説明することで、診断後の絶望や諦めを防ぎ、苦しみを緩和して前を向いて生きる基盤となる」と、心理的支援の重要性を指摘する。自治体や介護施設で活用されるほか、医療・介護職向けの学習コンテンツも公開されている。
これまで、医療や介護の現場、あるいは地域における認知症の研修は、マニュアルの読み込みや座学による講義が中心だった。しかし、「認知症の方を理解しましょう」と言葉で教えられても、本人が日常の中でどれほどの恐怖や孤立感に直面しているのかを、周囲の人間が真に想像することは容易ではない。
知識として知るだけでは埋められない溝も、他者の視界そのものを体験できるVR技術の没入感が、共感へと変えていく。
実際に本人の目線で「買い物を忘れて混乱する瞬間」や「医師の宣告を受ける瞬間の心細さ」を体感すると、支援者側の意識は根本から変化する。単なる「ケアの対象」として接するのではなく、「今、どんな不安を抱えているのか」という痛みに自然と寄り添えるようになるからだ。この深い共感こそが、形式的なマニュアルを超えた適切な声かけや見守りを生み出す原動力となる。
65歳以上の3人に1人以上が当事者や予備群となり得る時代において、求められるのは病気を遠ざけることではなく、本人ができることややりたいことに目を向け、住み慣れた地域で支え合う土壌を整えることだ。
テクノロジーを単なる効率化のツールにとどめず、人と人の心理的な距離を縮め、社会に巣くう無意識の偏見を取り除くためのインフラとして活用する。VRが切り拓くこのアプローチは、超高齢社会と向き合う自治体や企業にとって、共生社会を具現化するための道標となるはずだ。
▼ビジネス活用のヒントを毎日掲載!
Web3・メタバースの実装を進める『MetaStep』