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2026.10.16

文化財を仮想空間へ。観光誘客にも広がる3D技術の活用

地方にひっそりと佇む歴史的な建造物。その美しい意匠や空間が持つ空気感は、写真や図面だけでは決して伝えきれない。しかし、実際に足を運ぶには時間や距離の制約があり、多くの人々にとって文化財は「知る人ぞ知る存在」にとどまってしまうことが多い。
こうした課題に対し、最新の3D計測技術が新たな解決策を提示した。建物を丸ごと仮想空間に再現し、世界中の誰もが手元の画面から歩き回れるようにする。文化財のデジタル化は、地方都市の観光や歴史の保存にどのような恩恵をもたらすのだろうか。(文=MetaStep編集部)

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近畿最古の芝居小屋を3D技術で完全再現

2026年8月28日、XR技術をテーマにしたテクノロジー集団である株式会社ホロラボは、兵庫県豊岡市にある近畿地方最古の芝居小屋「出石永楽館」の3Dデジタルアーカイブを実施し、バーチャル空間として公開したと発表した。

(引用元:PR TIMES)

出石永楽館は1901年に建てられ、歌舞伎や寄席などが催される但馬地域の大衆文化の中心として栄えた。1964年に娯楽の多様化により閉館したものの、地元住民による約20年にわたる保存・復原運動を経て、2008年に芝居小屋として復活。現在も現役の劇場として使われ続けている貴重な文化財である。廻り舞台や舞台下の「奈落」、花道といった明治期の劇場機構がそのまま現存する近畿地方で唯一の施設だ。

(引用元:PR TIMES)

ホロラボは、この空間を後世に伝えるため、外観から客席、舞台、奈落に至るまでを一体の3Dデータとして記録。地上型レーザースキャナやハンディスキャナによる計測に加え、ミラーレス一眼カメラで約6,000枚の写真を撮影し、複数の計測手法を組み合わせてデータを取得。さらに、撮影した写真から3Dモデルを生成する「フォトグラメトリ」や、光や空気感も含めて空間を写実的に表現する技術「3D Gaussian Splatting(3DGS)」を活用し、実際に目で見た印象に近いバーチャル空間を構築した。

公開された「永楽館VR」は、専用アプリのインストールが不要で、パソコンやスマートフォンのWebブラウザからURLにアクセスするだけで、誰でも自由に館内を見学できる設計となっている。

文化財の記録保存から誘客まで。地域資源の新たな使い方

文化財のデジタルアーカイブと聞くと、地震や火災といった災害に備えて「記録を保存する」という側面が強調されがちだ。しかし、この取り組みの価値は、デジタル化された空間がそのまま「観光誘客」や「地域創生」の入り口となる点にある。

地方の観光地が抱える課題は、その魅力を遠く離れた人々にどう伝えるかである。テキストや短い動画だけでは伝わらない建物のスケール感や、舞台から客席を見下ろすような特殊な視点を、メタバース空間であれば誰でも直感的に体験できる。海外に住む人でも、自宅にいながら日本の伝統的な建築技術や文化に触れることが可能になるのだ。

(引用元:PR TIMES)

そして、このバーチャルな体験は決して「現実の代替」で終わるわけではない。画面の中で精巧に再現された舞台裏を歩き回るうちに、「実際にこの木の質感に触れてみたい」「現地の空気を感じてみたい」という好奇心が芽生える。デジタル空間での没入体験が、ユーザーを現実の観光地へと足を運ばせる強力な動機付けとして機能するのだ。出石永楽館の館長である赤浦 毅 氏が「ぜひメタバース空間とリアル空間の両方の世界観を楽しんでください」と語る通り、デジタルとリアルは互いを高め合う関係にある。

これまで地方の人たちだけで守られてきた歴史的な資産が、最新のテクノロジーによって世界中に開かれたコンテンツへと生まれ変わる。地域の資源をデジタル化し、広く世の中に発信していくこのアプローチは、少子高齢化で活力を失いつつある日本の地方都市に新たな人流を生み出し、持続可能な地域社会を築き上げるための土台となっていくだろう。

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