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2026.08.19

現場を丸ごと3D化。空間データが守る未来

老朽化する設備や複雑な配管。それらを言葉や平面図だけで正確に共有することは難しい。もし、現場の空気感や立体的な構造までを、歩きながらそのままデジタル空間にコピーできたらどうだろうか。現実の工場と仮想空間をシームレスに結びつけ、保全や管理のあり方を大きく変える技術が実用化されている。東京ビッグサイトの展示会で注目を集めた、空間をデジタル資産へと変える新たなワークフローの可能性とは。(文=MetaStep編集部)

※併せて読みたい:Kudanの3Dデータ活用
ブラウザで完結。3Dデータ活用の新時代
Kudanが次世代デジタルツイン「Kudan PRISM」をリリース 〜Gaussian Splattingで現場DXを加速

最新スキャナーで工場を仮想空間へ転写

2026年7月1日から3日にかけて、Kudan株式会社は東京ビッグサイトで開催された「第38回 ものづくりワールド東京 スマートメンテナンス展」に出展した。空間知覚技術を提供する同社は、最新のハードウエアとソフトウエアを組み合わせた設備保全ソリューションを披露し、多くの来場者の関心を集めた。

(引用元:PR TIMES

展示の目玉となったのは、XGRIDS社の新製品であるハンドヘルド3Dスキャナー「Lixel K2」だ。約1.2キログラムという軽量かつコンパクトな筐体に、360度を捉えるLiDAR(レーザースキャナー)や複数のカメラ、RTK測位機能を搭載している。現場の作業員がこれを手に持って歩くだけで、1センチメートル級の精度で高密度な空間データを効率的に取得できる。さらに、計測中にカラーの点群データをリアルタイムで確認できるため、撮り漏れを防ぐことが可能だ。


(引用元:PR TIMES

取得されたデータは、同社が提供する運用プラットフォーム「Kudan PRISM」へと取り込まれる。このプラットフォームは、最新の3Dスキャン形式である3D Gaussian Splatting(3DGS)などの技術を活用し、フォトリアルで高精細な3D空間を生成する。一時的な記録として保存するのではなく、設備管理や点検業務、工場のレイアウト変更などの実務で、継続的に更新・活用できるデジタルツインとして運用できるのが特徴だ。

会場では、これらの一連のワークフローが実演されたほか、既存の設備管理システムとの連携や、将来的なロボティクス分野への応用を見据えた展示も行われ、複雑な現場の現況を関係者間で直感的に共有する基盤が示された。

記憶を蓄積する空間。持続可能な社会への布石

製造業やインフラ産業が直面する人手不足と設備の老朽化は、もはや従来のアナログな管理手法では太刀打ちできない段階にきている。分厚い図面や部分的な写真だけで広大な工場の状況を把握しようとすれば、認識のズレが生じ、結果として重大な事故や非効率な手戻りが発生する。空間を丸ごとデジタル化して共有するアプローチは、こうした現場の構造的な綻びを修復する本質的な解決策となる。

仮想空間に作られた3Dモデルは、単なる「綺麗な立体映像」ではなく、生きた情報を蓄積する「器」として機能する。現場の作業員がスキャナーを持って歩くだけで、その日の設備の様子がそのままデジタルツインへと転写される。修繕の履歴や異常の兆候が仮想空間上で可視化され、空間自体が現場の記憶を保ち続けるデータベースへと進化するのだ。これにより、遠く離れた場所にいる管理者や専門家も、まるで現場に立っているかのような感覚で状況を共有し、的確な指示を出すことができる。

また、最新の3DGS技術によってフォトリアルな空間が再現されることで、新入社員の教育や危険予知のシミュレーションなど、仮想空間の使い道は無限に広がっていく。失敗が許されない現実の作業を、安全な仮想空間で何度でもリハーサルできる環境は、経験の浅い若手の自信を育む強力なサポートとなる。

現実の物理空間と仮想のデジタル空間が同期し、情報を補完し合う関係性。それは、失われつつある熟練者のノウハウを空間ごとアーカイブし、次世代へと受け継ぐための持続可能なインフラであると言える。仮想と現実が織りなすこの共創のサイクルが、これからの社会をより豊かで希望に満ちたものへと導いていくはずだ。