複数のブロックチェーンに分散した暗号資産の管理、複雑なガス代(手数料)の計算、そして専門知識を要する取引画面の操作。これらの煩雑な手続きや誤操作への不安は、個人にとっても企業にとっても、ステーブルコインや分散型金融を日常のツールとして使いこなす上での巨大な障壁であり続けてきた。
こうした課題がある中、株式会社HashPortは2026年9月より「HashPort Wallet MCP」の提供を開始する予定だ。これは、AIエージェントとステーブルコインウォレットを直接接続することで、自然言語による対話だけで送金や資産交換を自律的に進められる環境を実現するものだ。手作業による複雑な操作からユーザーを解放するこの試みは、Web3の利用体験を根本から変える可能性を秘めている。(文=MetaStep編集部)

(引用元:PR TIMES)
2026年9月、株式会社HashPortはAIエージェントとステーブルコインウォレットを連携させるプロトコルサービス「HashPort Wallet MCP」をリリースする見通しだ。本サービスは標準的な接続規格であるMCP(Model Context Protocol)を採用しており、独自のAIエージェントを一から開発することなく、ClaudeやChatGPT、Codexをはじめとする既存のAIエージェントにHashPort Walletを直接接続できる点を特徴としている。
最大の強みは、自然言語による指示だけで複雑なオンチェーン処理を完結できる利便性にある。ユーザーがチャット画面で指示を出すだけで、AIエージェントが状況を判断し、必要な手続きを自律的に組み立てて取引プランを提示する。具体的には、複数のチェーンに散らばった残高をガス代の調達まで含めて一括でJPYCに集約・交換できるほか、DeFi(分散型金融)プロトコルを活用した資産運用や支払いに向けた即時引き出しなど、複雑な処理が対話のみで完結する仕組みだ。
利便性を追求する一方で、安全性の確保にも万全を期している。秘密鍵をユーザー自身が保持するノンカストディアル方式を維持し、実際の資産移動が発生する際には、生体認証などのユーザー承認を必須とする設計が取られている。これらの仕組みにより、難解なウォレット操作や取引所の画面操作を意識することなく、日常的な対話インターフェース上でブロックチェーンの機能を安全に利用できる環境が整いつつあるのだ。
「HashPort Wallet MCP」の展開が示唆するのは、Web3の操作形態が「人間による手作業」から「AIによる自律的な処理」へと進化し始めたという事実である。
従来の暗号資産運用や決済では、ユーザー自身がブロックチェーンの構造を理解し、画面上で正確な手順を踏む必要があった。しかし、その複雑な操作をAIが代行する仕組みが確立されれば、人間の役割は「意思決定と最終承認」のみに集約される。これにより、Web3技術を利用する際の技術的・心理的なハードルは大幅に低下するだろう。
さらに、この仕組みは個人向けサービスにとどまらず、企業のバックオフィス業務にも大きな変化をもたらす。具体的には、多店舗・多通貨で発生した売上を1つの通貨へ自動集約する機能や、国内外への一括振込、将来的な会計・給与ソフトとの連携など、複雑な資金管理を効率化できる可能性がある。ロードマップによると、まずは2026年9月に残高集約や一括振込などの第1弾機能を提供し、2027年前半にはAIが購買決済を代行する「エージェンティック・コマース」への拡大を段階的に目指す見込みだ。
AIとブロックチェーンの融合は、単なる情報の収集や分析を超え、実際の「価値移動」を伴う領域へと足を踏み入れた。オープンな規格を通じてAIとウォレットを結ぶ試みは、AIが人間社会において確実かつ安全なパートナーとして機能するための重要な足がかりとなるだろう。