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  3. 仮想で遊び、現実を巡る。XRが変える観光

XRゴーグルを外し、現実の街へ足を踏み出す。手には仮想空間での冒険で手に入れた「お宝」が握られている。そんなゲームのような体験が、熊本県で現実のものとなった。バーチャル空間の体験を、そのまま地元の飲食店や観光地への足取りへと変えていく。かつては一部の人だけの楽しみとも言われた仮想世界が、今や地方都市の経済を回すエンジンとして動き始めた。リアルとデジタルが交差する、新しい旅の形を追う。(文=MetaStep編集部)

くまモンと歩く仮想空間。XRアトラクションの全貌


(引用元:PR TIMES

2026年6月、次世代のテーマパーク創出を目指す株式会社ABALは、熊本県および株式会社JTBとの共同プロジェクトとして、体験型観光コンテンツ「くまモンダンジョン」を7月1日より熊本市の商業施設で開催すると発表した。これは同県の人気キャラクター「くまモン」とXR(クロスリアリティ)技術を掛け合わせ、県内全域の周遊促進と観光消費の拡大を目的とした取り組みだ。

(引用元:PR TIMES

XRとは、現実空間と仮想空間を融合させ、新しい体験を生み出す技術の総称。VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などの技術が含まれる。参加者はXRゴーグルを装着し、実際に自分の足で歩きながらダンジョンを探索する。熊本城などの有名観光地をモチーフにしたステージが広がり、くまモンとともに魔法を使いながらボスと力比べをするなど、全身を動かすアクティブなアトラクションとなっている。

(引用元:PR TIMES

この没入感を実現しているのが、ABALの独自プラットフォーム「Scape®」だ。来場者が実際には移動していなくても、広大な空間を歩き回っているように錯覚させる特許技術を活用している。これにより、商業施設内の限られた物理空間であっても、その10倍から20倍以上の広さを持つ大規模なXRテーマパークを構築することが可能となった。

そして最大の特徴は、冒険中に手に入れたお宝(メダル)が現実の価値に変わる点だ。獲得したメダルは、体験後に県内の観光地や飲食店で利用できるクーポン、あるいはくまモングッズと交換できる。仮想空間で遊んで終わりではなく、「遊ぶ・見つける・持ち帰る・巡る」という一連のアクションがシームレスに設計されている。デジタル技術を駆使してエンターテインメント性を高めながら、現実の観光消費へとつなげる、非常に実践的なモデルが完成した。

仮想の体験が現実に還流する。次世代の地方創生

これまで多くの地方自治体がデジタル技術を用いた観光施策に挑んできたが、仮想空間での体験を現実の観光行動へどう結び付けるかが課題だった。精巧な空間を構築しても、そこで生まれた熱量が現実の街の賑わいや地域経済の潤いに結びつかなければ、真の地方創生とは呼べない。

熊本県で産声を上げたプロジェクトは、仮想空間での体験を「現実の行動を促す強力な導線」として位置づけている。参加者はゲームの中でミッションを達成し、高揚感に包まれたまま現実のクーポンを手にする。「自ら勝ち取った報酬」という心理的なスパイスが、見知らぬ飲食店へ足を運んだり、予定にない名所を訪れたりする行動への強い動機づけとなる。単に割引券を配るだけでは生み出せない、能動的でワクワクするような回遊行動を誘発しているのだ。

(引用元:PR TIMES

また、エンターテインメントを入口にすることで、これまで伝統的な観光に興味を持たなかった若年層やファミリー層を地域へ引き込む効果も期待できる。ゲームを通じて、参加者は自然と熊本の歴史や風土に触れて愛着を深めていく。仮想空間で熊本城をモチーフとした舞台で冒険を繰り広げた子どもたちが、その足で本物の熊本城を見上げたとき、そこには教科書では得られない深い感動と探究心が芽生えるはずだ。

テクノロジーは今、旅の体験そのものを拡張する技術としても注目されている。仮想での冒険が現実の街を活気づけ、人々の足取りを軽くする。エンターテインメントと地域経済が融合したこの仕組みは、日本全国の観光地に新たな可能性を示している。デジタル空間の熱狂が現実の地方都市を豊かに彩る、心躍る未来が広がろうとしている。