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2026.05.12

アバターの雑談から本音を。メタバース調査

メタバース空間に入り浸り、アバターの姿で日常を過ごす人々がいる。彼らは、新たなデジタル文化を形づくる最先端の消費者だ。しかし、その「本音」を捉えるのは難しい。現実世界のアンケートやインタビューでは、仮想空間での自然な感情や文脈が失われてしまうからだ。この見えない壁を越え、コミュニティの空気感そのままに「生の声」をすくい上げる画期的なソリューションが誕生した。アバター同士の何気ない会話の延長線上で情報を収集するこの試みは、次世代のマーケティングに欠かせない「デジタル先端層」の思考を可視化する。(文=MetaStep編集部)

空間に溶け込むリサーチ。「chot-chat」の全貌

2026年3月11日、メタバース領域での事業支援などを手掛ける株式会社Vは、株式会社博報堂の専門組織傘下にあるプロジェクト型ラボ「メタバース生活者ラボ®」と共同で、メタバース内リサーチソリューション「chot-chat(ちょっとチャット)」の提供を開始したと発表した。

(引用元:PR TIMES

同サービスは、メタバース空間を生活拠点とする人々から、リアリティのある声を直接収集するための仕組みだ。従来の形式的なWebアンケートではなく、メタバースの空間内に自然に馴染むインターフェースを設置することで、ユーザーの心理的ハードルを大きく下げる。これにより、「ちょっとした雑談」の延長線上で気軽な回答を促すことができる。

(引用元:PR TIMES

提供開始に先駆けて実施されたプレ調査では、没入型ソーシャルプラットフォーム「VRChat」内にアンケートモニターを掲示。2025年末から年始にかけて「年末の過ごし方」について質問したところ、2,635人もの回答が集まった。結果から、多くのメタバース生活者が仮想空間でフレンドと雑談しながら年越しをしている実態や、ポジティブな感情を抱いていることが明らかになり、高い回収率と質の高いデータ収集が可能であることが実証されている。

「呼び出す」から「入り込む」へ。調査手法の転換

この取り組みが提示する本質的な価値は、リサーチの手法を「企業側が用意した場所へ消費者を呼び出す」スタイルから、「消費者が日常を過ごす文化の現場へ企業が入り込む」スタイルへと転換させた点にある。

VRChatをはじめとするメタバース空間は、独自の文化とコミュニティを持つ巨大な市場へと成長している。2026年2月に公開されたデータによれば、VRChat公式サイトの市場別訪問者数シェアにおいて日本は37%を占め、世界で最大の市場であることが示された。デジタル技術をいち早く生活に取り入れる「デジタル先端層」がこれほど密集している空間は他にない。

企業が次世代の消費動向を予測し、新しいサービスを開発するためには、この先端層の思考を深く理解することが不可欠だ。しかし、彼らのリアルな声は、現実世界の会議室や無機質なアンケート画面では決して引き出せない。アバターという「もう一人の自分」としてリラックスし、仲間と会話を楽しんでいるその瞬間に、空間の文脈を壊さずに問いを投げかけることで、初めて嘘偽りのない本音が浮かび上がってくる。

メタバースのコミュニティ運営に長けたVと、生活者マーケティングのプロフェッショナルである博報堂が手を組んだ意義はここにある。テクノロジーが進化し、消費者の生活圏が仮想空間へと広がっていく中で、企業と顧客のコミュニケーション手法もまた進化を求められている。デジタル世界のリアルな温度感を直接すくい上げるこのアプローチは、未来の市場を読み解くための重要な手がかりとなるだろう。