Web3・メタバース・XRの社会実装とビジネス活用はいまどこまで進んでいるのか。当連載「未来を導く知の羅針盤」では、業界を牽引する経営者・専門家など、有識者16名の証言から、その現在地と未来の可能性を探る。
※本記事は『MetaStep Magazine』に掲載した記事を再掲載したものです。その他の記事は冊子でお読み頂けます。

クラスター株式会社 代表取締役CEO
加藤 直人さん
クラスターについて
音楽ライブやカンファレンス、ゲームなどを楽しめるメタバースプラットフォーム「cluster」を展開。スマホ・PC・VRから数万人が同時接続可能で、大規模イベントや人気IPの常設化を実現。「バーチャル大阪」「バーチャル渋谷」「ポケモンバーチャルフェスト」などを手がけ、革新的なエンタメ体験を提供している。
クラスター代表取締役CEO 加藤直人さんは、「日本型メタバース」こそが世界で通用する武器だと確信している。メタバースプラットフォーム「cluster」は、これまでに累計3,500万以上の動員を記録。国内外260件以上のプロジェクトで活用され、「バーチャル渋谷」や「バーチャルあべのハルカス」など、日本独自の仮想空間体験を提供してきた。
「日本型メタバースは、日本の文化や環境から自然に生まれた表現です」と加藤さんは語る。展示会やハロウィーンイベント、行政機関との取り組みなど、日本では日常的になりつつあるメタバース活用だが、「海外で紹介すると『こんな使い方があるのか!』と驚かれることが多い」と続けた。

メタバースで開催された「G7知財庁長官級会談」の一幕
海外では、製造業の工程を3D空間で再現するデジタルツインや、研修向けのVRなど、技術偏重の用途が中心だ。「PRやマーケティングといった柔らかな用途は、まだ十分に浸透していません。そこに日本の事例がフィットする可能性があるのです」と加藤さんは見る。
その背景には、日本ならではの文化的土壌がある。「マンガやアニメに親しむ日本人にとって、非現実的なアバターや空間はむしろ自然なもの。ビジネスシーンでも抵抗が少ない」と説明。さらに「cluster」では、誰もが空間を作れる仕組みがあり、クリエイターの創作活動が活発だ。「海外では見られないこと思います」(加藤さん)。

日本では馴染み深いバーチャルフェスも海外ではまだ事例が少ない
すでにユーザーの3割は海外。とくにスペインは注目市場であり、「イノベーション支援が手厚く、スタートアップが集まる好環境。バルセロナでの取り組みを足掛かりに、欧州での展開を進めたい」と語る。
メタバースビジネスで成功する秘訣について尋ねると、「リアルの常識をそのまま持ち込まないことです」と即答した。「メタバースでは、水が飲めないのに『水』というアイテムが売れる。それを面白いと捉えられる感性が必要です」。さらに、若手社員の感覚も活用すべきだとし、「彼らは3DCGで遊びながら育ってきた世代。ユーザーのリアルな視点を持っている」と語った。「企業が持つ伝統や技術に、メタバースという新しい考え方を融合させてこそ、次の価値が生まれる。私たちは、その実現を支える存在でありたいと思っています」(加藤さん)
(素材提供:クラスター)
ー 日本再興のヒント ー
リアルの常識をメタバースに持ち込まないことが、ビジネス活用成功の秘訣