「XRグラス」が本気でDXを実現する。ノートPCブランドdynabookの新製品「dynaEdge XR1」は、ただのガジェットに収まらない、ビジネス特化型のXRデバイスとしてあらゆるビジネスシーンの在り方を変えていく。開発者としてプロジェクトをリードする2人のキーマンに、新製品の特長や今後の展開について聞いた。
※本記事は『MetaStep Magazine』に掲載した記事を再掲載したものです。その他の記事は冊子でお読み頂けます。
「コンピューティングとサービスを通じて世界を変える」Dynabookが掲げる企業ビジョンだ。PCやモバイルデバイスにAI等の先進技術を組み合わせ、新しいサービスをトータルで提供するという意味が込められている。同社は1989年に世界初のノートPCブランドとして登場して以来、さまざまな形でビジネス領域に変革をもたらしてきた。新たにDynabook が開発したXRグラス「dynaEdge XR1(以下、XR1)」では、単なる視覚補助に留まらない形でビジネスに革命を起こす。
XR1の使い方は基本的にシンプルだが奥深い。USB-CケーブルをPCやスマートフォンに接続するだけで、自分が見ている現実世界に、デスクトップの映像が投影される仕組みだ。マルチディスプレイ化はもちろん、専用コントローラー「dynaEdge C1」を使えばWi-Fi 通信、AIによる音声認識やアシスト機能などが加わる。
XRグラス「dynaEdge XR1」と専用コントローラー「dynaEdge C1」
Dynabook ニューコンセプトコンピューティング統括部 NCCソリューション戦略部部長の小川 岳弘 氏はその可能性を語る。「オフィスや現場での資料閲覧、遠隔地からの指示受け取り、リアルタイムの多言語翻訳などが実現できます。従来はPC画面や紙資料に頼っていた作業も、より自由かつ迅速に遂行できますね」(小川氏)。画面を視界に重ねるだけでなく、情報の「見せ方」や「使い方」を根本から変える。現代ビジネスにおいて必須となるデバイスの一つだ。
XR1は同社にとって二代目のXRデバイスだ。すでに多数の製造業や物流業の現場で活躍する先代の単眼式インテリジェントビューア「AR100」の知見が土台にある。「ユーザーの意見をXR1の開発に活かし、先代以上に実用性を高めています」と、同社ニューコンセプトコンピューティング統括部NCCソリューション戦略部部長附の中野 昌則 氏は話す。
ハードウェアとソフトウェアの両方を開発するからこそ、現場の使用に耐える実効性の高いソリューションを生み出せる。PC業界の一翼を担ってきた同社ならではの哲学だ。
60~70cm 離れた場所に、22~23インチのディスプレイを置いて映像を見るような感覚といえよう。現場作業者に配慮し、映像を投影していても視界は明るいまま。非常に見やすいのが特徴だ。他にもカメラ、スピーカー、加速度センサー、ジャイロセンサー、コンパスなどを内蔵し、装着者が見ているモノや角度、方向などを検知できる。
製造業や建設業、医療などの現場では、両手が作業で使えない場面が多い。そんな状況下でも臨機応変に情報を取得し、コミュニケーションをとることが必要になる。XR1は装着するだけでこれらの点をサポートする。例えばレンズに映るPC画面を遠隔のオペレーターと共有することで、作業者の視野に必要な情報を投影し、離れた位置からサポートができる。
この機能は新規スタッフの教育、技能伝承にも効果を発揮する。実際の作業環境を眼前にしながら手順や注意点をリアルタイムに示すことで、理解度と習得速度が向上。研修期間が短縮し、人材育成コストを大幅に抑制できる。
加えて、両手を使わずに情報収集できることも大きい。これは事故の防止、作業現場の安全性向上に寄与する。さらに危険警告や環境情報を視界へ即座に表示でき、異常検知時にはリアルタイムに注意を促せる。
物流倉庫などでのピッキング現場で役立つ。棚にカラーコードを貼りXRグラスで情報を読み取ることで、誰でも素早く正確に目的の物品をピッキングできる。グラス上に作業指示が表示されるためハンズフリーで作業ができ安全性も高まる。
使用可能な機能は多岐にわたり、さらなる活用可能性も秘める。今後はXR1をいかなる業界に使えるか、模索する日々がつづく。「私たちは一緒に世の中を便利にする共創企業や専門家を募集しています」と小川氏。すでに複数のパートナー企業と連携を開始し、ソリューションやサービスを開発している。物品の入出庫作業支援や、各業界に最適化した業務支援AIアシスタントなど内容も幅広い。今後もXR1を活用したさらなる現場DXが進むはずだ。
観光地や博物館、美術館といった場所でも活きる。視界に現れた建物や展示物などを自動認識し、関連する情報を表示できる。スマートフォンで探していたものが、XR1を使えばスマートフォンで検索の必要なし。臨場感の高い体験を提供できる。
外国語を交えたコミュニケーションが円滑に。相手の話す内容をリアルタイムに翻訳し字幕を目の前に表示する。さらに風景の中にある外国語を自動認識し翻訳してくれる「ビジュアル翻訳」などのアプリケーションも利用可能だ。
単なる映像表示デバイスではなく、働き方を根本から刷新する強力なツールとして開発されたXR1。情報の可視化、コミュニケーションの革新、教育効率の向上をもたらし、多様なビジネスシーンで生産性と安全性を飛躍的に高める。未来の新しい働き方を具現化する上で、欠かせない存在となるだろう。
(右から)Dynabook ニューコンセプトコンピューティング統括部NCCソリューション戦略部部長 小川 岳弘 氏、同戦略部 部長附 中野 昌則 氏