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2025.09.12

WebARで阿波おどりの魅力を伝える!新感覚ARポスターが提供

ケーブルテレビのシステムインテグレータであるシンクレイヤ株式会社は、2025年6月21日に渋谷ストリームで開催されたイベント「2025 THE AWAODORI―序章― 徳島の本気、渋谷で乱舞」において、AR(拡張現実)サービスを提供した。このイベントは、日本デジタル配信株式会社、阿波おどり未来へつなぐ実行委員会、ケーブルテレビ徳島株式会社が共催し、8月の徳島市阿波おどり「THE AWAODORI」に先駆けて首都圏で本格的な阿波おどりの魅力を伝えた。


(引用元:PR TIMES

今回のARサービスでは、会場に掲出されたポスターがインタラクティブなコンテンツへと変化する。来場者がスマートフォンのカメラをポスターにかざすと、AR動画が再生される仕組みだ。動画では実際の阿波おどりの映像を背景に、第一線で活躍する踊り手が阿波おどりにかける情熱やその魅力について直接語りかけ、踊りに秘められた物語や文化を感じることができる。


(引用元:PR TIMES

この体験の大きな特徴は、WebAR技術を採用している点にある。WebARとは、Webブラウザ上で体験できるARのことを指す。これによりユーザーは専用のアプリケーションをダウンロードする必要がなく、スマートフォンのWebブラウザ上でAR体験を完結できる。アプリのダウンロードは手間やスマートフォンのデータ通信量を気にするユーザーにとって離脱の原因となりがちだが、WebARはそのハードルを解消し、どの世代の来場者でも気軽に体験できる環境を提供する。


(引用元:PR TIMES

ARで未来へ繋ぐ、伝統文化の継承

シンクレイヤが提供するWebAR技術は、伝統芸能と現代のテクノロジーを結びつけ、その魅力を新しい形で伝える上で重要な役割を担う。専用アプリが不要という手軽さは、伝統芸能にこれまであまり馴染みのなかった若年層や、イベント会場を偶然通りかかった人々が、阿波おどりの世界に触れる「最初のきっかけ」として極めて有効に機能するだろう。ポスターという静的な広告媒体に、ARを通じて踊り手の肉声や情熱といった動的なストーリーを重ねることで、情報量は飛躍的に増し、見る人の心に深い共感や興味を呼び起こす。

このアプローチは、伝統芸能の「見え方」と「伝え方」そのものを革新する可能性を秘めている。踊りの美しさや力強さといった視覚的な魅力だけでなく、その背景にある文化や、個々の踊り手が持つパーソナルな物語に触れることを可能にするからだ。これは、伝統芸能の魅力をより多層的で人間味あふれるものとして再定義する試みと言える。将来的には、特定の振り付けの歴史的由来をARで解説したり、過去の名人の演舞映像を現実の空間に重ねて表示したりといった、より高度な教育的・資料的価値を持つコンテンツへの発展も期待される。

また、今回のイベントのように、都市部でARを活用した体験型プロモーションを行い、地方の伝統文化への興味・関心を喚起する手法は、ほかの地域の文化財や祭りにも広く応用可能だ。これは、デジタル技術を用いて物理的な距離の壁を越え、地域の魅力を効果的に発信し、関係人口や交流人口の創出へと繋げる「デジタル地域創生」の優れたモデルケースとなり得る。

放送・通信ソリューションプロバイダであるシンクレイヤが、自社の持つAR技術を文化継承や地域活性化に活用する今回の取り組みは、企業の技術的アセットを社会課題の解決に繋げるCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)の動きとも捉えられる。担い手不足や高齢化といった課題は、日本の多くの伝統文化が直面するものだ。ARのような先端技術は、こうした課題に対する解決策を提示し、伝統を未来へと継承できる新しいビジネスチャンスを生み出す可能性を秘めている。渋谷の街角に現れたARポスターは、伝統とテクノロジーが融合し、過去と現在、そして未来を繋ぐ、新しいコミュニケーションの形を私たちに見せてくれるだろう。