AI技術を活用した実写版メタバースおよびデジタルツイン開発を手がける株式会社MATRIXは、スマートフォンで撮影した動画から現実に限りなく近い実写メタバース空間をAIが自動生成する技術「ガウシアンVR」専用のカメラアプリ「ARCameraRecorder」をリリースした。特別な機材不要で誰でも簡単に高品質なVR空間を作成でき、個人利用からビジネス活用まで、メタバース体験の裾野を広げる。(文=MetaStep編集部)
「ガウシアンVR」は、撮影した映像を専用プラットフォーム「どこでもドア」にアップロードするだけで、360度歩いて体験できるリアルなVR空間を構築し、他者とその空間を共有・体験できる次世代ツールだ。
(引用元:PR TIMES)
今回の「ARCameraRecorder」リリースで特に注目すべきは、「誰でも・簡単に」高品質な撮影ができる点にある。MATRIXのオリジナル開発であるこのアプリは、「ガウシアンVR」に最適化された動画を撮影するために特化しており、特別な機材を一切必要としない。
主な機能として、アプリ起動時にスマホをかざすだけで空間の広さを自動スキャンする「自動フロア計測」や、撮影モード時に空中に表示される球体ガイドに従ってカメラを動かすだけで最適な撮影コースが確保できる「球体ガイドナビ」を搭載。これにより、ユーザーは撮影方法に迷うことなく、直感的な操作でVR空間生成に適した映像を屋内外問わず手軽に記録できる。撮影された映像は、そのまま「どこでもドア」プラットフォームへアップロード可能で、速やかにVR空間として再現される。
(引用元:PR TIMES)
「ARCameraRecorder」の登場は、実写メタバース作成のハードルを劇的に下げることで、「メタバースの民主化」を大きく前進させるものだ。
従来、高品質な3D空間の作成には専門的な知識や高価な3Dスキャナー、専用ソフトウェアなどが必要とされ、一部のプロクリエイターや企業に限られた作業だった。これに対し、誰もが日常的に持ち歩くスマートフォンと専用アプリだけで、手軽に現実空間をデジタルデータとして取り込み、VR空間として再構築できるようになったことは大きな変革と言える。これはプロのクリエイターだけでなく、一般ユーザーが自らの手で日常の風景、思い出の場所、あるいは自宅やオフィスといった身近な空間をデジタルアーカイブとして記録し、他者と共有することが当たり前になる未来を示唆している。
「ガウシアンVR」と「ARCameraRecorder」の組み合わせは、新たなコミュニケーションと体験共有の形を切り拓くだろう。具体的には、イベント会場の遠隔下見、アニメの聖地巡礼の共有、旅行先の景色の共有、遠くで暮らす家族と互いの家の様子を共有するといった個人利用から、不動産業における遠隔内覧、ドラマ撮影地の選定、式場選びのメタバース提供、ホテルや飲食店の案内、採用向けの会社紹介といったビジネス利用まで、多岐にわたる。
これらの例は物理的な距離や時間の制約を超え、より没入感があり、かつ現実に基づいたリアルな情報伝達と体験共有を可能にする。単に情報を見るのではなく、「その場にいるかのような体験そのものを共有する」という新しい価値を、実写メタバースが提供できることを意味している。
開発チームの「空間を“記録”する時代へ」という言葉は、私たちが現実世界を捉え、記憶し、そして他者と分かち合う方法そのものを、メタバースとAIという先端技術が根本から変革していくという壮大なビジョンを感じさせる。この手軽な空間記録ツールが、新たなクリエイティブやビジネス、そしてコミュニケーションの扉を開く一助となることは間違いないだろう。