1. MetaStep TOP
  2. ビジネス活用を学ぶ
  3. アプリチェーン統合プラットフォームInitiaが描くWeb3ビジネスの新たな可能性とは?

2025.07.01

アプリチェーン統合プラットフォームInitiaが描くWeb3ビジネスの新たな可能性とは?

Web3の世界では、異なるブロックチェーン間での連携が困難という課題が、ビジネス展開における大きな障壁となっています。アプリチェーン統合プラットフォーム「Initia」は、複数の仮想マシンをサポートし、独自の経済メカニズムを通じてこの問題に挑んでいます。

本記事では、Initiaのビジネスモデルから学べる要素や、企業のWeb3戦略における活用可能性について考察します。

Web3ビジネスにおけるマルチチェーンの現状

現在のWeb3市場では、数多くのブロックチェーンが独立して存在し、それぞれが異なる技術基盤や経済モデルを持っています。この断片化はWeb3ビジネスを展開する企業にとって深刻な課題となっており、ユーザー体験の複雑化や開発コストの増大を招いています。

従来のマルチチェーン環境では、企業が複数のブロックチェーンでサービスを提供しようとする場合、それぞれ異なる開発言語や技術スタックを習得する必要がありました。さらに、ユーザーは異なるウォレットや取引手数料体系に対応しなければならず、Web3サービスの利用障壁が高くなっていました。

これらの問題は、特にWeb3に新規参入を検討している企業にとって大きな足かせとなっています。技術選択の複雑さ、開発リソースの分散、ユーザー獲得コストの増大などが、Web3ビジネスの成長を阻害する要因として挙げられています。

Initiaが提案する統合アプローチ

(引用元:Initia

Initiaは、これらの課題に対して統合的なアプローチを提案しています。単一のプラットフォーム上で複数の技術選択肢を提供することで、開発者とユーザーの両方にとってより使いやすい環境を構築しています。

複数の仮想マシンをサポート

Initiaの最大の特徴は、EVM(Ethereum Virtual Machine)、MoveVM、WasmVMという3つの異なる仮想マシンを同一プラットフォーム上で動作させられることです。この技術的多様性は、ビジネス戦略上の重要な意味を持っています。

まずEVM対応により、既存のイーサリアム向けアプリケーションを最小限の修正で移植できるため、開発コストと時間を大幅に削減できます。また、InitiaはCosmos SDKとMoveVMを組み合わせた初のブロックチェーンとして、既存のCosmos エコシステムの柔軟性とMoveVMの技術的特性を同時に活用できる環境を提供しています。

さらに、WasmVMも含めた3つの仮想マシンを単一プラットフォーム上で選択できることで、開発チームは既存のスキルセットを最大限活用しながら、プロジェクトの要件に応じて最適な開発環境を選択できます。この技術選択の柔軟性は、従来のように特定の技術に制約されることなく、ビジネス要件を最優先に開発を進められることを意味します。この選択肢の豊富さは、Web3ビジネスの成功確率を高める重要な要素といえるでしょう。

「Enshrined Liquidity」による新たな価値創造モデル

Initiaのもう一つの特徴は、独自の流動性メカニズムにあります。「Enshrined Liquidity」と呼ばれるシステムは、従来のDeFi(分散型金融)の常識を覆す革新的なアプローチです。このシステムでは、暗号資産建ての流動性ポジションをバリデーターにステーキングすることで、取引手数料とステーキング報酬の両方を同時に獲得できます。

この仕組みは、資本効率の大幅な向上をもたらします。従来は流動性提供かステーキングかの選択を迫られていた投資家が、単一のポジションから複数の収益源を得られるようになります。これにより、プラットフォーム全体の流動性が向上し、ユーザーにとってより良い取引環境が実現されます。

企業の視点から見ると、このモデルは持続可能なトークンエコノミーの構築に大きく貢献します。流動性とセキュリティが同時に確保されることで、長期的な事業運営の安定性が向上し、投資家からの信頼獲得にもつながるでしょう。

企業のWeb3戦略におけるInitia活用シナリオ

(引用元:Initia

Initiaプラットフォームは、さまざまな業界の企業がWeb3技術を導入する際の実用的なソリューションを提供しています。特に、既存事業のデジタル化やブロックチェーン活用を検討している企業にとって、有効な選択肢となる可能性があります。

アプリチェーン開発を検討する企業にとっての利点

企業が独自のブロックチェーンアプリケーションを開発する際に、Initiaプラットフォームは複数のメリットを提供します。まず、複数の仮想マシンをサポートしているため、既存の開発チームのスキルを最大限活用できます。

また、Initiaが提供する統合された開発環境のおかげで、ウォレット接続、ブロックチェーンエクスプローラー、ブリッジ機能などの基本的なインフラを自前で構築する必要がありません。これにより、企業は開発リソースをコアビジネスの実装に集中でき、市場投入までの時間短縮が期待できます。

VIPプログラムに見るエコシステム設計の教訓

次に、Initiaが採用するインセンティブ設計についても、企業は注目しておくべきでしょう。InitiaのVIP(Vested Interest Program)は、プラットフォーム上のすべての参加者(開発者、ユーザー、投資家)の利害を一致させる絶妙な仕組みです。

このプログラムでは、INITトークンのTVL(Total Value Locked)などの指標に基づき、ロールアップに報酬を分配し、各ロールアップがユーザーの利用実績に応じてその報酬を配分します。

このモデルから企業が学べる重要な点は、「参加者全員が成功に向けてコミットする仕組み」の設計です。従来のビジネスモデルでは、サービス提供者と利用者の利害が対立する場合がありましたが、VIPプログラムでは全員が同じ方向を向いて努力するインセンティブが働きます。

企業がWeb3サービスを設計する際、このような「利害の一致」を促進する仕組みを取り入れることで、より持続可能で成長性の高いビジネスモデルを構築できる可能性があります。特に、コミュニティ主導型のサービスや、ユーザーの参加が価値創出に直結するビジネスにおいて、参考になるアプローチといえるでしょう。

16のアプリチェーンから読み解くエコシステム戦略

(引用元:Initia

Initiaプラットフォーム上には、既に16のアプリチェーンが構築されており、これらのプロジェクトは合計で2,800万ドル以上の資金を調達しています。この事実は、Initiaのビジネスモデルの有効性を示す重要な指標といえます。

これらのアプリチェーンが早期段階から参加し、一定規模の資金調達に成功していることは、Initiaのプラットフォームが開発者コミュニティから高い評価を受けていることを示しています。投資家の視点から見ても、複数の独立したプロジェクトが同一プラットフォーム上で成功していることは、技術的な安定性と将来性への信頼を表しているといえるでしょう。

また、多様なアプリチェーンの存在は、ネットワーク効果による価値創出の可能性を示唆しています。異なる用途のアプリチェーン同士が相互に連携することで、単体では実現できない新たなサービスやビジネスモデルが生まれる可能性があります。

企業がWeb3戦略を検討する際、このような「エコシステム内での協業機会」も重要な要素となるでしょう。Initiaのような統合プラットフォームに参加することで、ほかのプロジェクトとの連携による新たなビジネス機会を発見できる可能性があります。

Web3インフラとしてのInitiaが示すビジネスの方向性

Initiaの取り組みは、Web3技術が真に実用的なビジネスツールとして機能するための重要な方向性を示しています。技術の複雑さを抽象化し、ビジネス価値の創出に集中できる環境を提供することで、Web3のマスアダプションに大きく貢献する可能性を秘めています。

特に注目すべきは、LayerZeroやIBCといった相互運用性プロトコルとの統合により、Initia上のアプリケーションがほかのブロックチェーンとシームレスに連携できる点です。この高い相互運用性は、Web3ビジネスの成長において重要な要素となるでしょう。

企業がWeb3技術を導入する際は、単一の技術やプラットフォームに依存するのではなく、相互運用性を重視したアプローチを取ることが重要です。Initiaのような統合プラットフォームを活用することで、技術選択の柔軟性を保ちながら、将来の技術進歩にも対応できるWeb3戦略を構築できるはずです。

また、VIPプログラムに代表される「参加者全員の利害を一致させる仕組み」は、Web3時代の新しいビジネスモデルとして、さまざまな業界に応用できる可能性を秘めています。Web3技術の真価は、単なる技術革新ではなく、新しい価値分配の仕組みを通じて、より公平で持続可能なビジネス環境を実現することにあるのかもしれません。