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2025.07.23

ブロックチェーンと現実世界を繋ぐ重要技術「オラクル」を学ぶ

ブロックチェーン技術が発展する中、「オラクル」という言葉を耳にする機会が増えています。このオラクルは、ブロックチェーンの世界と現実世界を橋渡しする重要な技術です。本記事では、ブロックチェーンにおけるオラクルの基本から活用例まで、初心者にも分かりやすく解説します。

オラクル(Oracle)とは?

ブロックチェーンの文脈における「オラクル」とは、ブロックチェーンと現実世界を繋ぐ情報の橋渡し役です。ブロックチェーン技術は、そのネットワーク内の取引や情報を正確に記録・共有できますが、天気情報や株価、スポーツの試合結果といった外部の情報を自力で取得することはできません。

(引用元:Chainlink

ブロックチェーン上で動作する「スマートコントラクト」(自動実行プログラム)が外部データを必要とする場合、オラクルがその情報を供給します。例えば「もし雨が降ったら、傘の自動販売機を稼働させる」というスマートコントラクトを考えてみましょう。

この場合、「雨が降っているか」という気象データをブロックチェーンに取り込むためにオラクルが必要です。オラクルがなければ、このような現実世界の情報に基づいた自動処理は実現できません。

オラクルの種類と仕組み

オラクルにはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。主要なオラクルの種類について見ていきましょう。

中央集権型オラクル

単一の情報源からデータを取得し、ブロックチェーンに提供するオラクルです。実装が比較的簡単である一方、その情報源が信頼できるかどうかという「信頼性」の問題があります。1社のみがデータを提供するため、その企業が不正確なデータを提供したり、サービスが停止したりするリスクがあります。

分散型オラクル

(引用元:Chainlink

複数の情報源からデータを収集し、その平均値や中央値などを算出してブロックチェーンに提供するオラクルです。Chainlinkなどがこれに該当します。複数の独立した情報源を利用するため、単一障害点がなく、より信頼性の高いデータを提供できます。

オラクルの活用シーン

オラクル技術はさまざまな分野で活用されています。具体的な事例を見ていきましょう。

分散型金融(DeFi)

DeFiサービスでは、暗号資産の価格情報や金利情報など、現実世界の金融データが必要になります。オラクルがこれらの情報を提供することで、自動的に金利が調整される貸借サービスや、特定の条件で実行される分散型デリバティブなどが実現しています。

保険サービス

例えば、天候インデックス保険では、特定の地域の降水量や気温などのデータに基づいて、自動的に保険金が支払われます。オラクルが気象データを取得し、契約条件に合致した場合に自動的に支払いが実行されるため、請求手続きが不要で迅速な対応が可能になります。

サプライチェーン管理

物流におけるGPSデータや温度センサーの情報などを、オラクルを通じてブロックチェーンに取り込むことで、商品の現在地や保管状態を透明に管理できます。これにより、食品の品質保証や医薬品の適切な輸送条件の証明などが可能になります。

オラクル導入における課題と対策

オラクル技術には大きな可能性がある一方で、いくつかの課題も存在します。

信頼性の確保

ブロックチェーン自体はデータの改ざんが困難な仕組みですが、オラクルから提供されるデータの信頼性は別問題です。データ提供者が不正確な情報を入力すれば、ブロックチェーン上の処理も誤ったものになってしまいます。

この課題に対しては、複数の独立したデータソースを利用する分散型オラクルの活用や、データ提供者に経済的インセンティブとペナルティを設ける仕組みの導入などが対策として考えられます。

コストと速度のバランス

高品質なオラクルサービスを利用するにはコストがかかります。特に分散型オラクルでは、複数のノードによる検証が行われるため、単一のデータソースを利用する場合と比べてコストが高くなる傾向があります。

ビジネスの要件に応じて、必要十分な信頼性とコストのバランスを考慮したオラクル選択が重要になります。

Web3ビジネスにおけるオラクルの可能性

オラクル技術は、ブロックチェーンの応用範囲を大きく広げる可能性を秘めています。現実世界のデータと連携することで、単なるデジタル資産の管理を超えた、複雑なビジネスロジックの自動実行が可能になります。

特に最近では、IoTデバイスと連携させることで、物理的な状態変化に応じて自動的に契約が実行されるような新しいビジネスモデルも生まれつつあります。これにより、レンタル品の使用状況に応じた課金や、農作物の生育状態に基づく自動融資など、これまでにない形のサービスが実現する可能性があります。