XR技術の普及に伴い、VR・AR・MRなどのコンテンツ制作に注目が集まっています。しかし、XRコンテンツの制作は従来のデジタルコンテンツとは異なる要素や工程が必要となり、初めて挑戦する方にとっては複雑に感じるかもしれません。
本記事では、VR・AR・MRなどのXRコンテンツを作るための基本的な制作工程と、各段階での重要ポイントについて解説します。初心者の方でも理解しやすいように、企画から配信までの流れについて順を追って説明していきます。
(引用元:Silicon Studio Agent)
XR(拡張現実)コンテンツ制作とは、VR(バーチャルリアリティ)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などの技術を活用し、現実世界とデジタル世界を融合させる体験を作り出すプロセスです。一般的なデジタルコンテンツ制作と比べて、空間的な要素や没入感、インタラクティブ性を考慮する必要があります。
XRコンテンツは、ユーザーに新しい体験価値を提供し、ビジネスや教育、エンターテインメントなど、さまざまな分野で活用されています。
(引用元:リプロネクスト)
XRコンテンツ制作のワークフローは、一般的なデジタルコンテンツ制作と似ている部分がある一方で、XR特有の工程や考慮すべき点もあります。基本的なワークフローは以下のとおりです。
まず最初にすべきは、XRコンテンツの目的を明確にすることです。どのような体験を提供し、どのような課題を解決するのか、ターゲットユーザーは誰かなどを定義します。
VR、AR、MRのどの技術が最適かも検討し、使用するプラットフォームやデバイス(ヘッドセット、スマートフォンなど)も決定します。この段階で、予算や制作期間なども考慮した実現可能な計画を立てることが重要です。
企画が固まったら、具体的なユーザー体験を設計します。XRならではの空間的な要素を考慮しつつ、ユーザーがどのように空間を移動し、オブジェクトとどう相互作用するかを計画します。また、ストーリーボードやワイヤーフレームを作成し、体験の流れを視覚化します。
この段階では、360度の視点や空間的な移動を考慮したデザインが必要です。
XRコンテンツには、3Dモデル、テクスチャ、音声、アニメーションなどのデジタルアセットが必要です。3DCGソフトウェアを使って、空間やキャラクター、オブジェクトなどをモデリングします。
既存の3Dアセットライブラリを活用することもできますが、オリジナルのアセットを作ることで、独自性のある体験を提供できます。この段階では、パフォーマンスを考慮し、適切なポリゴン数や最適化された素材設計が重要です。
3Dアセットが揃ったら、インタラクティブ要素を実装します。Unity や Unreal Engine などのゲームエンジンを使って、ユーザーの動きに対する反応や物理挙動などをプログラミングします。
XRコンテンツでは、視線追跡、ハンドトラッキング、音声認識などの入力方法も考慮する必要があります。ユーザーが直感的に操作できるインターフェースの設計も重要です。
すべての要素を統合し、実際のXRデバイスでテストします。この段階では、以下のような点を重点的に確認します。
●パフォーマンス:フレームレートは安定しているか
●ユーザビリティ:操作は直感的で分かりやすいか
●没入感:体験に没入できるか、違和感はないか
●快適性:VR酔いなどの問題はないか
テストで見つかった問題を修正し、体験を改善していきます。また、ユーザーテストを実施して、実際のターゲットユーザーからフィードバックを得ることも効果的です。
最終調整を行い、対象プラットフォームへの配信準備をします。XRコンテンツは、デバイスの性能制約が厳しいことが多いため、パフォーマンスの最適化が重要です。アセットの圧縮、描画の最適化などを行い、スムーズな体験を実現します。
最後に、App StoreやGoogle Play、SteamVRなどの配信プラットフォームや、企業の場合は社内システムなどにデプロイします。
XRコンテンツの制作では、以下のような点に注意することが重要です。
●表現と処理速度のバランス:リアルな表現を追求すると処理負荷が高くなるため、視覚的なクオリティとパフォーマンスのバランスを取る必要があります。
●新しいUX設計:従来の2D画面とは異なる、空間的なユーザー体験設計が求められます。
●デバイスの多様性:さまざまなXRデバイスに対応するために、柔軟な設計が必要です。
●技術的な制約:現在のXR技術の限界(視野角、解像度など)を理解し、その中で最適な体験を設計することが重要です。
XRコンテンツ制作は、技術と創造力が融合する分野です。基本的なワークフローを理解し、それぞれの段階での重要ポイントを押さえることで、効果的なXR体験を提供できます。
技術の進化とともに制作手法も日々発展していますが、最終的に重要なのは「ユーザーにとって価値のある体験を提供できるか」という点です。XRの特性を活かした、これまでにない体験づくりにチャレンジしてみましょう。