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2025.04.07

【連載】知恵で勝つ!売上アップの処方箋(第4回)~「売れない」から技術のサービス化で大逆転!(株式会社増田鉄工所)

釧路市ビジネスサポートセンター(k-Biz)ご協力のもと、全国Bizネットワークが手掛けた「中小企業の強みを生かしたオープンイノベーション」の好事例を紹介する本連載。今回ご紹介するのは、プレス金型の設計・製作に携わってきた老舗企業、株式会社増田鉄工所の事例だ。良い技術は持っていたものの「売れない」状況からいかにして「売れる価値」に変えたのか。(文=JapanStep編集部、協力=釧路市ビジネスサポートセンター(k-Biz))

優れた技術のはずなのになぜか「売れない」

静岡県に本社を構える株式会社増田鉄工所(以下、敬称略)は、1952年の創業以来、60年以上にわたりプレス金型の設計・製作に携わってきた老舗企業だ。大手自動車メーカーを顧客に持つ、確かな技術力と職人のノウハウを武器とする企業である。自動車内装部品用金型を得意とし、「カウントマイスター」(員数管理装置)などの特許製品を開発・販売している。

(引用:澄川氏作成『ビズモデルから生まれる中小企業の強みを生かしたオープンイノベーション』)

同社が開発した「一体構造金型」は、これまで個別に製作し、組み立てていた金型を一体化するという画期的な技術。製造費や設計費、事務処理費の大幅削減が見込めるにもかかわらず、市場からの反応はまさかの「無風」だった。

なぜ売れないのか──。それは、「金型の性能」を語っても、それが“誰にとって何の課題を解決するのか”が伝わっていなかったからだ。

こうした課題に全国Bizネットワークが支援に入った。課題の本質に切り込み、技術ではなく“サービス”としての見せ方に舵を切った。新たに提案されたのは、コスト削減というメリットを前面に押し出すネーミング「金型革命5ダウン」。5つのダウンとは「製造費・設計費・事務処理費・不良率・作業時間」の5つ。これまで“金型”という専門領域だったものを、“課題解決型ソリューション”として再定義したのだ。

 

(引用:澄川氏作成『ビズモデルから生まれる中小企業の強みを生かしたオープンイノベーション』)

「見せ方」の変革で価値を再構築

加えて、社内で余力のあるときにのみ対応していた金型メンテナンスの副業務も、「金型ドック Bestコンディション」として正式なサービスに昇華。これまで蓄積してきた“他社製金型も直せる”技術力に光を当て、トラブル未然防止という新たな切り口で需要を喚起。定期メンテナンスによるコスト削減という普遍的なニーズに応えた。

(引用:澄川氏作成『ビズモデルから生まれる中小企業の強みを生かしたオープンイノベーション』)

その結果、「金型革命5ダウン」と「金型ドック」は大手上場企業からの注目を集め、増田鉄工所にとっての“第二の柱”として確立されることとなった。

増田鉄工所の事例は、単に技術を誇るだけでは市場に届かないという、現代のBtoBビジネスの厳しさを浮き彫りにしている。と同時に、視点を変えることで埋もれた価値を掘り起こし、再構築できるという可能性も示している。

「モノ」から「サービス」へ。「製品スペック」から「課題解決」へ。

技術立国・日本を支えてきた中小製造業が今後生き残るには、こうした“見せ方”の変革が不可欠だ。増田鉄工所の転身は、地方に根ざした中堅企業でも“ブランド再構築”が可能であることを証明する成功事例といえるだろう。(第5回につづく)

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