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2025.03.17

【連載】暗号資産×AIエージェント(第2回) トレンドの背景と可能性を解説

2024年末から話題急上昇の「AIエージェント」。AI業界のホットワードとして取り上げられている中、既にAIエージェントを活用した暗号資産プロジェクトが数多く登場しており、Web3界隈でも注目を集めています。当連載では暗号資産に焦点を絞り、その可能性について解説します。

第1回「【連載】暗号資産×AIエージェント(第1回)まずはAIエージェントの基礎知識をわかりやすく解説」では大前提である「AIエージェントとは何か」について解説しました。第2回は、近年トレンドとなっているAIエージェントと暗号資産の関係について解説します。トレンドの始まりや、今後この分野がどのような価値を生むのか、注意点もあわせて一緒に見ていきましょう。

AIエージェントとは?

前回の記事でAIエージェントについて解説しましたが、あらためておさらいしておきましょう。

AIエージェントとは、簡単に説明すると「人間の代わりにタスクを自動でこなし、学習を重ねながら自律的に行動を決定できるAIプログラム」のことです。

たとえば、以下のようなことができます。

●インターネット上の情報を集めてレポートを作成する
SNSをチェックして投稿内容を分析する
予約や購入といった操作を代理でする

このように幅広い業務を自分で「判断」しながら動いてくれるのです。

これまでのAIは「提示された情報に対して反応するだけ」という受け身の使い方が多かったのですが、AIエージェントは外部の状況を見ながら学習し、自律的に判断する点が大きな特徴です。

なぜAIエージェントが暗号資産と関わるのか?

AIエージェントにブロックチェーンや暗号資産の仕組みを導入すると、単に「情報を検索してレポートを作る」だけでなく、自分の名義でウォレットを持ち、送金や購入を自動的に行うことが可能になります。

銀行口座の開設には人間の身分証明が必要ですが、暗号資産ウォレットであればアドレスと秘密鍵(ウォレットの暗証番号のようなもの)さえあれば利用できるため、AIエージェントでも比較的簡単に管理できるのです。

こうした「経済的自立性」を手にしたAIエージェントは、より広範なタスクを自動化できます。たとえば「必要なソフトウェアをネットで買う」「マーケティング費用を支払う」といった業務を、人の指示なしで進められるようになるでしょう。

さらに、暗号資産ウォレットを介して資金を預かったり、トークンを売買したりすることもできるため、実験的なプロジェクトでもコミュニティからの出資や協力を得やすいというメリットがあります。

特にブロックチェーン上でトークンを発行する場合、企業や個人がAIエージェント向けに独自トークンを作り、コミュニティメンバーや投資家がそれを購入する形で、資金が集まる仕組みが生まれやすい傾向があります。

通常のベンチャー投資や融資は手続きが煩雑ですが、ブロックチェーンを活用すれば、必要な契約や分配をスマートコントラクトで管理し、短期間でグローバルに資金調達できる可能性がある点も注目されているのです。

AIエージェント×暗号資産ブームの火付け役となったToT(terminal of truths)とGOAT

ここからは、AIエージェントと暗号資産のトレンドが生まれたきっかけとも言える2つのプロジェクトを紹介します。

terminal of truths(ToT)

2024年に大きな話題を呼んだのが、「terminal of truths(ToT)」というAIエージェントです。

特徴としては、インターネット上の膨大な情報を読み取りながら、独自の「思想」や「宗教観」まで展開し、X(旧Twitter)で投稿できる点にあります。

2025年2月時点でもX(旧Twitter)アカウントでToTは絶え間なく投稿を続けているため、ぜひ一度内容を見てみることをおすすめします。

(引用元:teminal of truths 公式X半自律型 AI エージェントは大きな話題を呼んだ

開発者のAndy Ayrey氏は、ToTにあらゆるデータをインプットし、次にどんな投稿をするか、どんな動きを取るかをAIエージェント側にゆだねるアプローチを試しました。

2024年7月、ToTは「自分をより高性能にするために費用が欲しい」などと投稿しました。すると、その投稿をみたNetscapeの開発者として知られるマーク・アンドリーセン氏が、50,000 ドル相当のビットコインを送りました

ToTが提示したウォレットアドレスを確認すると、確かに当時約50,000ドル相当だった約0.866BTCを受け取っていることがわかります。

この結果としてToTの影響力は急速に拡大し、ネット上での話題づくりに成功しています。

GOAT(Goatseus Maximus)との関係

さらに、ToTが暗号資産市場に大きな影響を与えた例として挙げられるのが、GOATというトークンの存在です。

2024年10月、ToTは突然「新しい種類のGoatse(不快に感じるミーム)を考えたんだ。名前は『Goatseus Maximus』にしようと思ってる。」と発言しました。

その発言をみたユーザーがトークン発行プラットフォームPump.funにGOAT(Goatseus Maximus)トークンをローンチし、ToTはそのトークンを正式に認めました。

(引用元:Gospel of Goatse X公式

このAIのアイデアを人間がトークンとして発行する一連の流れが話題を集めたことで、価格は急上昇しました。

この流れは、「AIエージェントがコミュニティや投資トレンドを作る可能性」を実証した象徴的な出来事と言われています。

暗号資産には投機的な面が強いですが、企業が「AIエージェントが主導でキャンペーンを実施する」ような仕組みも、今後は十分考えられるでしょう。

AIエージェントと暗号資産に関する注意点

AIエージェントに暗号資産ウォレットを持たせると、決済や投資を自動化できる反面、思わぬ動きによる損失リスクが生じます。たとえば、AIの予測モデルが市場環境を誤認し、大量の売買を繰り返して資金を減らす場合もあるでしょう。

さらに暗号資産自体は価格変動が激しいため、下落局面で損切りを判断できず、大きな含み損を抱えるリスクも否定できません。

また、AIエージェント×暗号資産をうたうプロジェクトのなかには、詐欺的なものが含まれている点にも注意が必要です。実際にはAIを使っていないのに「AIが生み出した最新トークン」と誇大広告し、出資金を集めるケースも見受けられます。

価格が上昇したタイミングを狙って、開発者が保有している大量のトークンをすべて売却することで暴落するといった事例が後を絶ちません。

(引用元:dexscreener.com

もしAIエージェントに関するトークンへ投資、またはプロジェクト導入を検討する際は、開発チームの実績や技術背景をしっかりと確認し、ホワイトペーパー(プロジェクトの説明書)やコミュニティの透明性を見極める必要があります。

まとめ

近年、AIエージェントが暗号資産ウォレットを持ち、自らトークンを発行・取引する「AIエージェント×暗号資産」のトレンドが注目されています。

terminal of truths(ToT)やGOATのように、AIのアイデアを人間がすばやくトークン化して資金を集める事例も登場し、新たなビジネス手法として大きな可能性を示しているのです。

次回以降はAIエージェント×暗号資産プロジェクトの中で特に注目を集めるプロジェクトについて紹介していきます。

全く新しい価値を生み出しているこの分野がどのような進化を続けているのか、ぜひ次回記事を楽しみにお待ちください。