2024年末から話題急上昇の「AIエージェント」。AI業界のホットワードとして取り上げられている中、既にAIエージェントを活用した暗号資産プロジェクトが数多く登場しており、Web3界隈でも注目を集めています。
暗号資産を資金調達に利用することで、これまで資金がなくて開発できなかった優秀な開発者たちが実験的なAIエージェントをリリースしているのです。本連載では暗号資産におけるAIエージェント活用について解説していきます。
しかし、そもそも「AIエージェントについてまだよく分からない」という方のために、第1回はまず、AIエージェントの基礎知識を知る事から始めましょう。2025年は「AIエージェントの普及元年」になるとも言われているため、トレンドをいち早くキャッチするためにも是非本記事を参考にしてください。
AIエージェントは人間が細かく指示しなくても、自律的に環境を認識・判断し、目標に向かって行動を実行する人工知能システムです。
(特定のタスクをあらかじめ設定することで、半自動でタスクを実行する組込み型AIエージェントも存在しますが、本記事でAIエージェントは自律型をAIエージェントと定義いたします。)
従来のAIとは異なり、あらかじめ指定された目標を達成するために必要なタスクや手段を自ら考え、調整する点に大きな特徴があります。
2024年1月23日にOpenAIが発表した、AIがWebブラウザを操作してタスクを実行する「Operator(オペレーター)」がAIエージェントの位置づけとなります。
簡単な指示を与えるだけで、AIエージェントがブラウザ上の情報を読み取り、判断することでタスクを完了できる新しい機能です。
例えば、「Amazonで白いシャツを探してきて」と指示すれば、OperatorがWebページを見ながらシャツを選んでくれます。
このように、毎回指示を出す必要があったChatGPTのようなチャットボット形式のAIと比較すると、AIエージェントは大きく進化した存在だということがわかるでしょう。
ChatGPTを提供するOpenAIでは、AIの進化を以下の5つの段階に分けて整理しています。それぞれの段階によって、AIが担う役割や機能が異なり、AIエージェントは特に「Agents(第3段階)」以降の進化が注目されています。
段階 | 詳細 |
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1:Chatbots |
主に対話型のインターフェースを備え、入力された質問に応答を返す段階。
比較的単純なQAなどが中心。
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2:Reasoners |
推論能力を高め、ルールやロジックに基づいて複雑な判断が可能に。
より柔軟な回答や提案を行う。
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3:Agents |
自律的に環境を認識し、目標達成に必要な行動を計画・実行。
人間の指示を待たずにタスクを進める。
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4:Innovators |
新しいアイデアやソリューションを生み出す創造性を獲得。
既存の知識を超えた革新的な成果を目指す。
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5:Organizations |
複数のエージェントを束ね、大規模な組織体として機能。
高度に協調しながら社会や産業を変革する。
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ChatGPTで利用できるGPT-4oモデルはレベル1のChatbots、推論力に優れたo1モデルはレベル2のReasonersだとされています。
現在、多くの企業や研究機関は「Agents(第3段階)」の実用化に力を注いでおり、業務自動化やサービス効率化の領域で具体的な成果が出始めています。
ここからは、AIエージェントが実社会でどのようなビジネスやサービスに活用されているのかを3つ紹介します。
NTTデータは「SmartAgent™」という生成AIのコンセプトを掲げ、オフィスワーカーの業務を自律的にサポートするサービスを提供しています。
第一弾として登場した「LITRON® Sales」では、営業担当者が行う資料作成や契約書準備などをAIエージェントが自動化。パーソナルエージェントと複数の特化エージェントが連携し、タスクの抽出から実行までを一気通貫でこなす仕組みです。
これにより、人口減少やIT人材不足といった社会課題に対応しつつ、利用企業の生産性向上を目指しています。NTTデータは2027年までに生成AI関連事業で累計1000億円の売り上げを見込んでおり、フルスタックでの導入支援やサービス拡充を積極的に進めている点が大きな特徴です。
ソフトバンクの子会社であるGen-AXは、問い合わせ対応を中心とする業務効率化のために生成AIサービス「X-Boost」を開発。マニュアルやFAQに基づいて回答案を素早く自動生成し、オペレーターの負担を大幅に軽減します。
また、実際の業務ログを活用してAIを「賢く育てる」LLMOpsの仕組みを整備。学習データやフィードバックを企業ごとに管理し、高精度なAIモデルを維持・進化させられるのが特長です。
データは国内サーバーで保管され、外部に流用される心配がないため安心感も高い仕組み。今後は自律思考型AIの導入を目指し、コンタクトセンターのさらなる自動化に挑戦するとしています。
NECは2025年1月から、高度な専門業務を自律的に遂行するAIエージェントを提供開始。企業が依頼したい業務を入力すると、同社開発の生成AI「cotomi」がタスクを分解・設計し、最適なAIやITサービスを組み合わせ自動実行します。
経営計画や人材管理、マーケティング戦略などの情報収集・分析から成果物の作成まで効率化を実現。NECは2025年度末までに生成AI関連事業で500億円の売上を見込み、サービス拡充による生産性向上と業務変革への貢献を進めています。
高度な専門知識がなくても指示するだけで成果を得られるため、大幅な業務効率化が期待できる点が強みだと言えるでしょう。
AIエージェントは、人間の作業を大幅に効率化する一方で、いくつかの課題を伴います。まず、個人情報や行動履歴を大量に扱うことで、プライバシー侵害やデータ漏洩のリスクが高まります。
また、前述したOpenAIがリリースしたOperatorにブラウザを操作させる際、決済権などを持たせてしまうと指示の理解を誤り、高額な商品をいくつも購入してしまう、というリスクも存在します。
さらに、学習データの偏りから生まれるバイアスや、判断過程がブラックボックス化することで説明責任を果たせなくなる恐れも指摘されています。
こうした懸念に対応するためには、AIエージェントの開発や運用において透明性・公平性を重視し、利用範囲や責任の所在を明確にする仕組みが求められます。
プライバシーやバイアスへの配慮を義務付ける法整備や、人間が最終判断を行う「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の導入などが、その具体策として挙げられます。
2025年1月時点ではまだAIエージェントは黎明期であるため、普及率はそれほど高くありませんが、ガートナージャパン株式会社の見解によると「2028年までに日本企業の60%は、現在のAIエージェントにより機械的な業務に関するタスクの自動化を実現する」と仮説を立てています。
総務省が2024年に発表した「令和6年版 情報通信白書の概要」の中では、生成AIの市場規模は2023年の180億ドルから2027年までに1,200億ドルまで上昇すると予想されています。
また、生成AIの導入を推奨する、以下のような内容も記載されています。
今後はChatGPTのような会話型AIを使いこなせるだけではなく、AIエージェントについても熟知し、自社のビジネスに活用することが必須になる時代がそこまで迫っているのです。
AIエージェントは、従来のAIシステムとは異なる高い自律性と学習能力を備え、業務効率化から革新的なサービスの創出まで、幅広い可能性を秘めています。ただし、プライバシー問題やバイアス、責任の所在といった倫理的課題も避けては通れません。今後は、技術と社会の両面で解決策を模索しながら、私たちの日常やビジネスでAIエージェントを賢く活用していくことが求められるでしょう。
次回からは、なぜAIエージェントと暗号資産の組み合わせがブームになっているかについて解説します。楽しみにお待ちください。