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2025.01.21

分散型取引所と中央集権型取引所を改めて知る−DeFiがもたらす新たなビジネスチャンス

暗号資産取引の世界では、従来の中央集権型取引所(CEX:Centralized Exchange)に加えて、分散型取引所(DEX:Decentralized Exchange)という新しい選択肢が注目を集めています。DEXは単なる取引の場ではなく、新たなビジネスモデルを生み出す可能性を秘めています。

特に注目すべきは、DEXを活用することで、従来の金融ビジネスの常識を覆すような革新的なサービスが生まれつつあることです。例えば、誰もが流動性提供者となって収益を得られる仕組みや、スマートコントラクトによって自動化された取引の実現など、これまでにない金融サービスの形が次々と登場しています。

本記事では、DEXとCEXの特徴とその違いを解説するとともに、経営者や事業企画担当者が知っておくべき、ビジネスにおける活用の可能性を探ります。DeFiの世界で広がる新たなビジネスチャンスを、具体的な事例とともに見ていきましょう。

(DeFiについては、DeFiとは?ブロックチェーンが生み出した革新的な金融サービスをご覧ください!)

なぜいま分散型取引所が注目されているのか

引用元:Uniswap

2022年のFTX破綻をはじめ、中央集権型取引所における不正や破綻のニュースは、暗号資産取引のあり方に大きな疑問を投げかけました。このような背景から、取引所運営の透明性と、ユーザー資産の安全性を確保できる新たな仕組みとして、分散型取引所が注目を集めています。

CEXで顕在化した課題と限界

中央集権型取引所では、取引所がユーザーの資産を保管する必要があります。これは、取引の利便性を高める一方で、取引所の経営状態や運営の健全性に大きく依存するというリスクを内包しています。

過去には取引所の破綻、あるいは不正による多額の資産流出などが発生し、ユーザーに大きな損失をもたらしたこともあります。さらに、取引所の運営コストや規制対応のための費用は、結果的に高額な取引手数料としてユーザーに転嫁されることになります。

DEXによってもたらされる解決策

分散型取引所は、これらの課題に対して新たな解決策を提供します。スマートコントラクトによって取引が自動化され、ユーザーは自身の暗号資産ウォレットを通じて直接取引を行うことができます。

取引所自体が資産を保管する必要がないため、破綻リスクは大幅に低減されます。また、運営の透明性も確保されやすく、取引履歴や価格形成のプロセスをブロックチェーン上で誰もが確認できます。

分散型取引所(DEX)のビジネスモデルを理解する

引用元:PancakeSwap

分散型取引所は、従来の取引所とは全く異なるビジネスモデルで運営されています。中央管理者を必要としない自律的なシステムとして機能し、参加者全員がその恩恵を受けられる仕組みを実現しています。

流動性提供による収益の仕組み

分散型取引所では、一般のユーザーも流動性提供者(LP:Liquidity Provider)として参加することができます。これは、取引に必要な資産を提供することで、取引手数料の一部を受け取れる仕組みです。

従来の取引所では、マーケットメイカーと呼ばれる特定の業者のみが担っていたこの役割を誰もが担えるようになったことで、ユーザーにとって新たな収益機会が生まれています。例えば、保有している暗号資産を担保として活用することで、継続的な収益を得られる可能性などがあります。

自動マーケットメイカー(AMM)の役割

AMMは、スマートコントラクトによって価格を自動的に決定する仕組みです。数理モデルに基づいて価格が決められるため人為的な操作を受けにくく、24時間365日、安定した取引環境を提供できます。

この仕組みにより、従来の取引所で必要とされていた価格決定のための人的コストや運営コストを大幅に削減できます。また、価格決定プロセスの透明性が確保されることで、取引参加者の信頼を獲得しやすいというメリットもあります。さらに、新しいトークンペアの取引開始も容易なため、新しい金融商品の展開やニッチな市場の開拓にも適しています。

中央集権型取引所(CEX)との決定的な違い

引用元:SushiSwap

取引の仕組みから収益モデルに至るまで、DEXとCEXには本質的な違いがあります。これらの違いを理解することは、ビジネス展開を考える上で重要なポイントとなります。

セキュリティとコンプライアンスの観点

CEXでは、取引所が顧客の資産を預かり、取引を仲介する形式を取っています。そのため取引所は、厳格な規制対応とセキュリティ対策が求められます。これに対しDEXでは、ユーザーが自分自身のウォレットで資産を管理し、スマートコントラクトを介して直接取引を行うため、取引所自体のセキュリティリスクが大幅に軽減されます。

ただし、DEXにおいても、スマートコントラクトの脆弱性対策や、マネーロンダリング防止などのコンプライアンス対応は重要な課題となっています。

取引の自由度と制約

CEXでは、取引所の審査や判断によって取扱通貨が制限されます。一方DEXでは、スマートコントラクトの要件を満たすトークンであれば、そのトークンの取引ペアを簡単に作成・提供することができます。また、新しいトークンの上場も比較的容易なため、これまでにない技術を活用した金融商品の開発や展開も可能です。

この柔軟性は、新興プロジェクトや小規模な事業者にとって特に重要です。従来の中央集権型取引所では実現が難しかった特殊な金融商品や、ニッチな市場向けのトークンなども、素早く市場に導入することができます。

コスト構造の違い

CEXは運営のために多くの人員とインフラを必要としますが、DEXはスマートコントラクトによって自動化されているため、運営コストを大幅に抑えることができます。この違いは、取引手数料や収益構造に大きく影響します。

特に注目すべきは、DEXではコストの削減分を取引手数料の低減や流動性提供者への報酬として還元することで、より競争力のある取引環境を提供できる点です。これにより、取引量の増加と、それに伴う収益の拡大という好循環を生み出すことが可能になっています。

DEXがもたらす新たなビジネス機会

引用元:Curve Finance

DEXの特性を活かした新しいビジネスモデルが、現在も次々と生まれています。従来の金融ビジネスの枠を超えた、新時代のサービスの可能性を探ってみましょう。

DeFiプロジェクトとの連携可能性

DEXは他のDeFiプロジェクトと組み合わせることで、より付加価値の高いサービスを提供することができます。例えば、レンディングプロトコルと連携した取引や、イールドファーミングと呼ばれる流動性マイニングなど、複合的な金融サービスの提供が可能です。

既存の金融ビジネスの変革

従来の金融機関も、DEXの技術を活用することで、サービスの拡充や効率化を図ることができます。例えば、24時間取引可能な市場の提供や、クロスボーダー取引のコスト削減などが実現可能です。

新興市場へのアプローチ

銀行口座を持たない人々(アンバンクト)へのサービス提供や、新興国市場へのアプローチなど、従来の金融システムでは十分にカバーできなかった領域での展開が期待できます。

例えば、フィリピンやインドネシアなどの東南アジア諸国では、出稼ぎ労働者からの国際送金需要が高いという現状があります。DEXを活用することで、従来の送金システムに比べて、大幅に手数料を抑えた国際送金サービスの提供が可能となります。

DEX活用における課題と対策

引用元:dYdX

分散型取引所はこれまでの金融システムにはない可能性を秘めています。しかし、実際のビジネス展開においては、いくつかの課題があります。これらの課題を理解し、適切な対策を講じることが成功への鍵となります。

技術的な障壁への対応

ブロックチェーンやスマートコントラクトに関する技術的な知識が必要となるため、一般ユーザーにとっては、DEXの参入障壁は高くなりがちです。また、ガス代(取引手数料)の変動や、ブロックチェーンのスケーラビリティの問題も存在します。

これらの課題に対しては、直感的なユーザーインターフェースの開発や、レイヤー2ソリューションの活用による手数料の削減など、技術面での改善が進められています。

規制環境への適応

DEXは、従来の金融規制の枠組みに必ずしも適合しない部分が多数あります。そのため、各国の規制当局との関係をどのように構築していくかが重要な課題となっています。特に、KYC(本人確認)やAML(マネーロンダリング対策)への対応は重要なテーマです。

各種規制に配慮しつつ、革新性を失わないバランスの取れたアプローチが今後も求められるでしょう。例えば、分散型IDの活用や、コンプライアンス機能を備えたDEXの開発なども進められています。

ユーザー体験の改善

現状のDEXは、専門知識を持つユーザーをターゲットとしたものが多く、一般のユーザーにとっては使いづらい面があります。また、取引の確定に時間がかかることや、流動性の不足による価格のスリッページの問題なども存在します。

これらの課題に対しては、モバイルアプリケーションの開発や、複数のDEXの流動性を横断的に活用して最適な取引ルートを提案する「アグリゲーターサービス」の提供など、ユーザー体験を向上させるための取り組みが行われています。

DEXとCEXの共存がもたらす金融の未来像

分散型取引所は、必ずしも中央集権型取引所に取って代わるものではありません。今後は、それぞれの特徴を活かした共存関係が築かれていくと考えられます。CEXは使いやすさと高い流動性を提供し、DEXは革新的な金融サービスと資産の自己管理を可能にします。

将来的には、両者の長所を組み合わせたハイブリッド型の取引所や、CEXとDEXを橋渡しするサービスなど、新たな形態のプラットフォームが登場する可能性があります。また、既存の金融機関がDEXの技術を取り入れることで、より効率的で透明性の高い金融サービスが実現されるかもしれません。

ビジネスの観点からは、このような変化をチャンスと捉え、従来のビジネスモデルの刷新や新たな市場の開拓に活用していくことが重要です。DEXの技術は、単なる取引の場を提供するだけでなく、金融サービスのあり方そのものを変えてしまう可能性を秘めているのです。