一般社団法人Metaverse Japanがメタバース領域の新しい実装や開発、事業化を促進することを目的に開催した「Metaverse Japan Hackathon」(詳しくはこちら)。最終審査のピッチには5つの企業、団体が登壇した。新メタバースを体現するかのように、従来のメタバースの利用法から一歩も二歩も進化したようなプロジェクトが多数紹介されたのだが、限られたメディアのみ参加できるクローズドで行われたピッチだったため、MetaStep(メタステップ)編集部は、登壇者に寄稿を依頼した。いよいよ最終回(前回はこちら)となる今回は、FujitoMatsubaraさんとなる。FujitoMatsubaraさんが発表した、『Project Bazariba』は何を隠そう本Hackathonの最優秀賞を受賞したプロジェクトだ。次世代のメタバースやXRの新たな体験となるか。是非ご覧頂きたい。それでは、Fujitoさん、よろしくお願いいたします!
FujitoとMatsubaraによる一級建築士によるXRクリエイティブユニット。情報空間を設計対象に、空間として課題解決につながるプロダクトを模索し活動しています。都市のもつ身体性やポテンシャルに着目し、都市空間を舞台にした新しいバーチャル体験を提供したいと考えています。
複数の建築設計事務所にて意匠設計者として、BIM(Builiding Information Modeling)を駆使しながら、建築・内装デザイン、プロジェクトマネジメントに従事。2022年クラフトノーツを設立し、XRコンテンツ制作やバーチャル空間のデザイン提案を行っている。また2024年株式会社ailevelの取締役に就任し、デジタル技術を活用し、商業空間、教育施設、オフィス等の設計をしている。一級建築士。
株式会社 AMDlab 取締役 CTO。神戸大学大学院(槻橋修研究室)卒業。大学院時にタンペレ工科大学に留学。大学院卒業後、株式会社安井建築設計事務所に入社。2017 年に株式会社フロムスクラッチに転職し、Web エンジニアとしてシステム開発に従事。フロムスクラッチ退社後、東京大学 T_ADS(小渕研究室)の学術支援専門職員になると同時に株式会社フォースタートアップスに入社。2019 年に AMDlab を設立し、現在、建築業界の DX 化を進めている。一級建築士 日本CTO協会会員 buildingSmartJapan会員
賞歴など
2024:XR PAREDE 出展作品選出
Project Bazaribaは、私たちが開発している「Bazariba」というスマートフォンを利用した都市ARアプリを利用した、さまざまなバーチャルオブジェクトや情報との出会いの場を身体性のある都市において創出した一連のユースケースになります。
プロダクトとしては、VPS(ビジュアルポジショニングシステム)とWEBアプリケーションを組み合わせた技術を活用したサイトスペシフィックな体験が特徴です。WEB上に登録した作品や情報がARを介してリアルタイムに現実の場に生成される仕組みです。
多様なファイルフォーマットに対応していて、その情報を事業者がキュレーションすることも考えた仕様になっています。ARで見ることができるだけでなく、そのアクションを通じて、事業者の抱える問題や課題に対して答えるXRのインフラのようなアプリです。
私たちは建築士の知見を活かしつつ、XRを通して空間的に何かを解決したいという想いがあります。Bazaribaを考えたきっかけは、TOKYONODE で開催されたXRハッカソンなのですが、その時から考えているのは、情報と人をどうつなぐかです。
近年、SNSでの情報発信は容易になりましたが、情報が飽和し、関連性がなければ発見されにくい時代になっていると感じています。一方で私たちの身体があるリアルな都市は偶然の出会いが生まれる『場』としての魅力があるため、リアルな都市に体験としての情報を掛け合わせることで、普段は交わらない『人』と『情報』をつながり、まるでバザーで掘り出しものを見つけるようなワクワク感のある体験を提供できるのではないかと思っています。
都市に対してそのようなXR体験を、掛け合わせることでさまざまな課題を空間として解決したり、サポートできるのではないかということを考えて、Bazaribaによるユースケースを模索してきました。
今年はプロトタイプとして制作をしてきましたが、来年はアプリとしてのリリースや、出展者・事業者・利用者の3者をBazaribaSTOREを介してつなぐサービスとして発表することを目指しています。
事業者側の機能として、出展の数量や場所を選定できるようにすることを想定しており、空きスペースや空き時間を利用したイベント開催も可能になっています。最近ではBazaribaのそのサスティナブルな性質にも着目しており、バーチャルをリアルに引っ張り出すことで、リアル側の枠組みを変えられるのではないかとも考えています。
最後にFujitoさんに、2つの質問をぶつけてみました。メタバースをどのようにとらえているのか、ぜひご参考にしてください。
現在は一般的な呼称としては使われるようになってきたという印象です。多様な分野からの参入も見られるようになってきましたが、実質的にはまだまだ実現できていないことの多い発展途上の分野だと思っています。またメタバースといっても、現在は幅広い意味を持っていて、人によって表す意味が異なるキーワードとも思っています。そういった意味で、どの立場からメタバースを見るかということに関しては私たちはXRを通してその世界の様子と発展を見ていきたいと考えています。2024年について言えば、XRに関してはAppleVisonProのようなデバイスの登場や、より利用者の生活に身近な形状のARグラスなどが発表されています。VRに関してもより大衆に普及しやすそうなQuest3sが登場し、ますます楽しみになってきました。
一般的な普及としてはデバイスの進化やキラーコンテンツ登場等が課題と言われておりますが、実際に体験できるものはすでに存在しています。その体験を通して、メタバースの片鱗に可能性を感じた人たちがさらに流入してきて、エンタメや企業戦略の1つの手法としては、ますます広まっていくと思います。Bazaribaもメタバースの進化に合わせて、よりよいサービスとして洗練させていきたいと考えています。
クリエイティブや情報との新たな出会い、非常に興味深いです。最優秀賞を受賞されただけあり、現段階でもさまざまなユースケースが広がっている様子がうかがえます。近々アプリ化もされるとのことなのでますますの広がりが期待できそうです。今後も注目したいと思います。
本連載を通じおもしろいコンテンツや社会的に意義のある取り組みが着実に広がっていることもご実感いただけたのではないでしょうか。はたして、2025年はメタバースやXRはどのように進化するか、読者の皆さんはどのように予想しますか?