緊迫する心臓カテーテル治療の現場で、スタッフは自分の役割に集中しながらも周囲の動きを瞬時に察知しなければならない。他職種の視点を実体験として学ぶ機会が乏しい中で、他者の視界に入り込み、その重圧や判断のプロセスを追体験できたらどうだろうか。国内の医療学会で披露された、チーム医療の連携を仮想空間で学ぶ新たな実習プログラムから、デジタル技術が命を救う現実の現場をどう変えるのかを考察する。(文=MetaStep編集部)
▼ビジネス活用のヒントを毎日掲載!
Web3・メタバースの実装を進める『MetaStep』

(引用元:PR TIMES)
2026年7月、VRやAIを活用して暗黙知のデジタル化を進める株式会社ジョリーグッドは、一般社団法人日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)と共同で、メディカルスタッフ向けのVRプログラムを開発した。このプログラムは、東京国際フォーラムで開催した国内最大級の専門学会「CVIT2026」にて、一斉体験学習セッション「VRビデオライブ」として披露された。
(引用元:PR TIMES)
心臓カテーテル治療の現場、いわゆるカテ室では、医師だけでなく看護師や診療放射線技師、臨床工学技士といった多職種が連携する「ハートチーム」の存在が不可欠だ。医療の質を高めるためには、自分以外の職種がどのような視点を持ち、どのように動いているかを互いに深く理解する必要がある。しかし、一秒を争う緊迫した現場において、他者の動きを網羅的かつ安全に学習する機会はこれまでほとんど存在しなかった。
(引用元:PR TIMES)
この課題を解決するため、開発されたVRプログラムは高精細な映像を用いてカテ室内の一連の動きを再現している。入室の準備から実際のデバイス操作、さらには急変時の対応に至るまで、各専門職の視点に入り込んで擬似的に体験できる。
学会の会期中には、基礎から応用、職種別の対応などをテーマにした全18セッションが連日開催された。VR制作を監修したメディカルスタッフとともに、参加者は仮想空間でリアルな臨床現場の空気を感じ取り、チーム医療における連携の重要性を実践的に学んだ。
他者の目で現場を見るという体験は、座学やマニュアルの読み込みでは決して得られない深い気づきをもたらす。医療現場における仮想空間の導入が意味するのは、単なる研修のデジタル化ではない。異なる立場の人間同士が、デジタル技術を通じて互いの重圧や思考のプロセスを共有し、現実世界での連携をより強固なものへと昇華させることこそがその本質である。
チーム医療において最も恐れるべきは、職種間のコミュニケーション不足による小さな認識のズレだ。VRゴーグルを被り、自分とは異なる職種の視界を体験することで、「なぜあのタイミングであの器具が必要だったのか」「あの時の指示にはどんな意味があったのか」という暗黙知が、明確な実感として腑に落ちていく。失敗が許されない現実の現場とは異なり、仮想空間では何度でも安全にシミュレーションを繰り返すことができる。この安全な環境で培われた相互理解と信頼は、いざ現実の急変に直面した際、迷いのない阿吽の呼吸となって患者の命を救う力となるだろう。
また、医療業界全体が慢性的な人材不足に悩む中、即戦力を効率的に育成する仕組みの構築は急務となっている。スマートフォンやVRデバイスを用いて直感的に操作できるシステムが普及すれば、デジタル機器に不慣れなスタッフであっても、場所や時間を選ばずに高度な実習を積むことが可能だ。一つの施設で培われた優れたマネジメントや暗黙の技術が、データとして全国の病院や教育機関と共有されていく。
仮想空間は、もはや娯楽のためだけの場所ではない。現実の物理的な制約を取り払い、医療従事者の心理的な距離を縮める強力なインフラとして機能している。デジタル技術を通じて共有された他者への思いやりと深い理解が、過酷な医療現場に温かな連帯を生み出し、社会の最も大切な命の砦をより強靭に守り抜いていくはずだ。
▼ビジネス活用のヒントを毎日掲載!
Web3・メタバースの実装を進める『MetaStep』