Web3・メタバース・XRの社会実装とビジネス活用はいまどこまで進んでいるのか。当連載「未来を導く知の羅針盤」では、業界を牽引する経営者・専門家など、有識者16名の証言から、その現在地と未来の可能性を探る。
※本記事は『MetaStep Magazine』に掲載した記事を再掲載したものです。その他の記事は冊子でお読み頂けます。

面白法人カヤック メタバース事業部 事業部長
カヤックアキバスタジオCXO
天野 清之さん
面白法人カヤックについて
「つくる人を増やす」を理念に、Webやゲーム、地域活性など幅広い分野で“面白い”を追求する鎌倉発の企業。KDDIと連携した都市型メタバース「αUmetaverse」開発など、メタバース領域でも先進的な取り組みを展開。ブレスト文化やサイコロ給など独自の社風と、多彩なクリエイティブ力で新しい社会価値を創出している。
メタバースがハイプ・サイクルでいう幻滅期と評価されようとも、面白法人カヤックは変わらず没入体験の可能性を追い続けている。面白法人カヤック メタバース事業部長の天野清之さんは、こう語る。
「メタバースという言葉は、今は『ゲーム』として捉えていますが、大事なのは言葉の定義ではなく、本質です。XRもデバイスが普及しているか否かではなく、最新技術から生まれる体験そのものが重要です」。
天野さんは、KDDIのプラットフォーム「αUmetaverse」の開発や、アニメ・音楽の映像制作支援などを通じ、メタバース・XRコンテンツの最前線に立ってきた。近年は、モーションキャプチャ技術を活用し、仮想空間上で映画のコンテ撮影を行う取り組みなど、体験の解像度を飛躍的に高める事例として注目されている。
「重要なのは技術の組み合わせ方や企画との掛け算です。何と何を掛け合わせるか、どう使うかで、可能性がまるで変わります」。
発想の原点にあるのは、同社の「技術やトレンドに乗っかってみること」だ。「できるかどうかはあとで考えればいい。まずはアウトプットしてみることが大事なんです」。

同社が手掛けた「ソードアート・オンライン」の世界を再現したVR空間
天野さんが現在注力する分野の一つが、ロケーション・ベース・エンターテインメント(LBE)だ。没入型の展示会などに携わってきた知見を背景に、コロナ明け以降はLBEやイマーシブ体験の開発支援が増えているという。
「LBEは、メタバースを『広義のバーチャル体験』と捉える私にとって、現実空間とデジタルを横断する大事な手段なんです」。日本経済新聞社と取り組んだプロジェクトでは、AIに画家 ピエール・ボナールの画風を学習させ、実写映像を変換することで、画家の目を体験させる演出を実現した。
「情報の解像度が高まれば、アイデアの精度も上がる。だからこそ技術に詳しい必要はなくても、どう使えば人の感情に触れられるか、そこを想像する力が問われます」。

バーチャルライブ撮影には、同社が開発した「ジャンヌダルク」を採用
今後の注目分野として、天野さんはAIやセンサー技術の進化を挙げる。リアルな反応を仮想体験と結びつけることで、企業のブランド体験も進化していく。「技術を追うのではなく、体験をつくることが目的。それがビジネスにも共鳴を生むと思います」。カヤックがつくるのは、企画という「接着剤」で技術と感情をつなぐ未来の体験なのかもしれない。
(素材提供:面白法人カヤック)
ー 日本再興のヒント ー
メタバースを「体験の集合体」と捉え、感情に響く没入体験を設計をすることで競争力が高まる