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2026.03.24

NECが挑む 「信頼」のWeb3社会~分散型IDで社会を変える

Web3・メタバース・XRの社会実装とビジネス活用はいまどこまで進んでいるのか。当連載「未来を導く知の羅針盤」では、業界を牽引する経営者・専門家など、有識者16名の証言から、その現在地と未来の可能性を探る。

※本記事は『MetaStep Magazine』に掲載した記事を再掲載したものです。その他の記事は冊子でお読み頂けます。
掲載されている情報は2025年8月時点のものです。

NEC プラットフォーム・テクノロジーサービス事業部門
バイオメトリクス・ビジョンAI統括部
樋口 雄哉さん

NECについて
NECは、120年以上にわたり培ってきた技術力と知見をもとに、ITサービスと社会インフラ事業を中核に展開。近年はヘルスケア・ライフサイエンス分野にも注力し、デジタルの力で「安全・安心・公平・効率」な社会の実現を目指している。人間中心のイノベーションを掲げ、持続可能な社会づくりに取り組む社会価値創造型企業である。

NECが描くWeb3社会は、ユーザーが安全性と利便性を両立した形でサービスにアクセスすることが可能な世界だ。中核を担うのが、分散型ID (DID※1)と検証可能なデジタル証明書(VC※2)を組み合わせた、個人が自身の情報を自己主権的に管理可能となる仕組みである。NECの樋口 雄哉さんは次のように語る。「Web3と聞くと、暗号資産やNFTなどの話に引っ張られやすい。でも私たちが目指しているのは、個人が自分の情報を自由に扱える社会です」。

(※1)Decentralized Identifierの略 (※2)Verifiable Credentialsの略

NECは、本人確認に強みを持つ生体認証とDID/VCを掛け合わせ、個人の情報を、信頼性を持って証明できるソリューションを開発。情報の真正性を担保した上で、利用者がその開示範囲を自由にコントロールできる世界を実現しようとしている。

この技術の社会実装は既に始まっている。例えば、IATA(国際航空運送協会)と連携したデジタルIDで完結する旅の実証実験や、メディアアーティストの落合陽一さんがプロデュースする大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「null²(ヌルヌル)」。さらには、大阪大学、大阪モノレールが連携した通学証明書のデジタル化など、その適用範囲は広がる一方だ。

「単なるIDではなく、学歴やスキル、健康情報まで含んだ包括的なアイデンティティモデル。まさに『自己主権』が可能になる」と樋口さんは言う。

「null²」で活用されたNECの顔認証技術

一方で課題もある。公共インフラとしての性格を持つDIDには、誰がレールを敷くのかという根本的な問いが横たわる。「インターネットが広まったときも、その仕組みや利点が理解されていない時代からやり続けた人が勝った。Web3も同じ。社会の地殻変動は、確実に来ます」(樋口さん)。

将来への展望も広がる。「1億総チケッティング」という言葉で樋口さんが描くのは、あらゆる利用権や証明書、優先権などがデジタル化される社会だ。雨が降った時、信用スコアをもとに傘を契約なしで借りられる世界。パーソナルエージェントが自分に最適な情報を集めてくれる日常。

「良い体験をすれば、もう戻れない。だからこそ最初の体験設計が重要なんです」(樋口さん)。NECはこうした未来像の実現に向けて、技術だけでなく、法律のプロや産業界との連携も重視している。共創パートナーとのエコシステム構築が、信頼に基づいたWeb3社会を動かす原動力になるという信念がある。

生体情報をデジタル証明書に格納し、高精度な本人確認を実現

ー 日本再興のヒント ー
DID/VCがいよいよ実証から実用段階へ。新たなビジネスチャンスの種が芽となり花となる日は近い