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2026.01.20

「体験共有」でメタバースを新次元へ~感覚を届ける最新技術

Web3・メタバース・XRの社会実装とビジネス活用はいまどこまで進んでいるのか。当連載「未来を導く知の羅針盤」では、業界を牽引する経営者・専門家など、有識者16名の証言から、その現在地と未来の可能性を探る。

視覚や音声では伝えきれない「身体の感覚」を、リアルタイムで共有する――今回語られるのは、 H2Lが開発する「BodySharing®」。これは、人と人、人とアバター、人とロボットの間にある「見えない壁」を取り払おうとしいる技術だ。「固有感覚」と呼ばれる動きや力加減の感覚、つまり身体の内部情報を、他者、ロボットやアバターに伝達する。

H2L, Inc. CEO
玉城 絵美さん

1984年沖縄県生まれ。身体感覚共有技術「BodySharing®」を提唱し、H2L株式会社を創業。手の動作を制御する「PossessedHand」は米『TIME』誌「世界の発明50」に選出。研究、開発、産業化の三領域で活動し、身体とデジタルをつなぐ革新技術の社会実装を推進。琉球大学や東京大学の教授として人材育成にも力を注ぐ。

全身の動きや力加減を伝達し、ロボットやアバターとの新たな体験共有を実現する

「私たちは『体験共有』を実現しようとしています。動きや力加の伝達があれば、人の験を共有する一歩となります」とH2L CEOの玉城さんは語る。その思想を形にしたのが、最新の「カプセルインタフェース」だ。椅子やベッドに身を委ねユーザは、遠隔ロボットやアバターと、視覚、聴覚、固有感覚(動きや力加減)の情報を通じて験を共有する。また、2025年7月には、感覚データをアップロード&ダウンロードし、体験を共有するデジタルマーケット「Maaart」が公開された。

「Maaart」は、感覚データをアップロード&ダウンロードし、体験を共有するデジタルマーケットだ

「Maaart」では、アップロードされた感覚データを自動査定し、即時報酬カウントされる仕組みを採用している。

「体験そのものが資産となり、個人が体験共有で収入を得られる時代をつくる」と玉城さんは話す。「例えば、職人の繊細な動きや感覚をデータ化して他者が体験できると、教育や伝承の方法が根本から変わります。体験のライブラリを世界中で共有するイメージです」(玉城さん)。

この「体験の資産化」は、メタバースの進化にも大きな意味を持つ。視覚中心だったメタバース空間に、身体感覚の伝達が加わることで、アバターの体験がユーザ自身の体験として共有される。「動きや力加減のフィードバックがあると、アバターに対して身体主体感が高まる。これはアバターの体験がユーザ自身の体験として近くなっているということです」と玉城さんは言う。

医療や教育、遠隔作業支援、ウェルビーイングにいたるまで、BodySharing®の応用領域は拡大している。なかでも、外出困難者や都市部在住者が、遠隔で地方の農作業を体験する「RaraaS (RemoteAgricultural RobotasaService)」は、「できなことを代替る」のではなく、「体験する機会を増やす」ことに主眼を置く。

「ヒトは、視聴覚と固有感覚を加えて、主体的な体験を共有する。人生で得られ体験を増すことで、新しい人類の智慧を模索したい」(玉城さん)。H2Lの取り組みは、単なる技術革新ではない。人間性の深部に届く、次世代の共感インフラを模索する挑戦である。

(素材提供:H2L

ー 日本再興のヒント ー
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