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2025.12.02

【HEXAの教科書:第14回】NFT記事に仕込む「次の価値」―6ブログ×エアドロップで顧客体験を多層化する

日本円だけでNFTの発行や売買ができる、日本初のNFTマーケットプレイス「HEXA(ヘキサ)」について学ぶ連載。今回は、NFT販売に苦戦するHEXAクリエイターに向け、新規顧客獲得の好事例を紹介。ブログサービス「6ブログ」でNFTレシピと絵本という複数のコンテンツを活用する「ちひろ店長」さん。実際に吉野さんがインタビューし、そのエッセンスを教えていただきました。それでは吉野さん、お願いします!

併せて読みたい:WEB3.0型ブログサービス「6ブログ」で記事を資産に変える新時代のコンテンツビジネス

執筆者

株式会社デイジープレイス
代表取締役COO 
吉野 渉

デイジープレイスでは企画作成、メタバース、NFT、AR等を担当。RobiZy(ロボットビジネス支援機構)主催NFTコンペ「アイデア部門」GPや販促コンペ「協賛企業賞」、徳島DXフォーラム「ソフトバンク賞」など多くの受賞歴あり。HEXA(ヘキサ)との関わりでは、個人でHEXA公認アンバサダー、HEXA公認メタバース建築家を務める。デイジープレイスは法人としてHEXA公認エージェントに参画。

こんにちは、デイジープレイスの吉野です。

NFTを販売しても、なかなか新規顧客に届かない。SNSで発信しても反応が限定的。コミュニティを作る余裕もない――そんな悩みを抱えるHEXAクリエイターは少なくないでしょう。

今回ご紹介する「個人書店ちひろ店長」様の取り組みは、そうした課題に対する一つの解答となります。今回実践されているのは、6ブログの有料記事にNFTのプレゼントコードを封入し、一つの購入で複数のNFTをお届けするという手法です。言わば「買ったら終わり」ではなく、「買った先に次の価値が待っている」体験を設計されています。

DAOやコミュニティ運営を前提とせず、限られたリソースで新規顧客にアプローチされています。この革新的な仕組みは、どのように生まれ、どんな可能性を秘めているのでしょうか。

漫画雑誌のプレゼントはがきから生まれたヒラメキ

ちひろ店長様がこの仕組みを思いついたきっかけは、息子様と一緒に月刊漫画雑誌のプレゼント応募はがきを書いていた、何気ない日常の一コマでした。

「これ、もしかするとHEXAの新規顧客獲得につながるかも!」

抽選制の雑誌プレゼントとは異なり、有料の6ブログを購読すれば確実にNFT(レシピ)を手に入れられる。お得感がある上に、景品表示法の範囲内でNFTレシピの価値を提供できる――そうお考えになり、すぐに実行に移されました。

当時、ちひろ店長様は「限られた人数で、NFTコンテンツの制作と認知拡大をどうするか」という課題に直面されていたそうです。コンテンツ制作とSNS発信だけで手一杯。DAOに代わるNFTレシピの広め方を模索する中で、この着想に至ったのだといいます。

この手法では、有料購読の6ブログにNFT(レシピ)のエアドロップ用プレゼントコードを封入すれば、確実にNFT(レシピ)を取得可能で、体験価値はとても高いものになります。つまり、NFTの記事を1つ1000円で購入すると6個のエアドロップを受け取るという仕組みです。今までは1つ1000円以下のNFTの販売は仕組み上不可能でしたが、これはその下限をアイデアで実現するものです。

6ブログ記事内のGiveawayコード。記事NFT購入者だけが見れる仕組み

なぜ「6ブログ」で「多層化」するのか

ちひろ店長様が展開されるのは、NFTレシピと絵本という二つのコンテンツです。両方に共通するのは「自分の体験がコンテンツになる」という点です。NFTレシピは、腎臓病のご家族と一緒に食べる食事の記録。絵本は、息子様と公園へ遊びに行った帰りに思いついた物語。どちらも日常の中から生まれたものです。

「実は私、雇用されたくない人なんです。でも、いつでも世帯主はできるようにしておかないとな、と思って短時間労働も頑張っています。一方で、人に頼りにされるとつい働いてしまう…」

いつも「時間が(ヾノ・∀・`)ナイナイ」と言いつつ、日々の矛盾に思い詰めたときに「本」という共通点を見つけられました。NFTレシピも絵本も、どちらも「本」として提供できます。そして、6ブログという有料記事プラットフォームを使えば、そこにさらなる価値を封入できるのです。一つの購入で複数のNFTが手に入る。顧客体験が「多層化」されるのは、こうした設計思想があるからです。単なる購入ではなく、開封する楽しみ、次の価値を発見する驚き、そして実際に活用できるレシピや物語。これらが重なり合って、一つの体験を形成しています。

HEXAへの連携が、最大のハードル

この仕組みを実践して、ちひろ店長様が明確に気づかれたことがあります。

「HEXAに連携することが、新規顧客獲得の一番高いハードルかもしれない」

実は、HEXAにもコミュニティ機能があります。しかし、それは既存客向けの機能でした。新規顧客を増やしたかった彼女は、別の方法を模索する必要がありました。そこで選ばれたのが、6ブログという外部プラットフォームの活用です。興味深いのは、HEXA玄人からの反応は上々だという点です。SNSでの反応を見る限り、このヒラメキには一定の評価が集まっています。つまり、仕組みそのものの価値は認められている。問題は、新規顧客にどう届けるかなのです。

「現状は新規顧客に有料記事を購読していただけていないのが実情です」

彼女の正直な言葉は、多くのクリエイターが抱える課題を浮き彫りにします。良い仕組みを作っても、それを知ってもらい、試してもらうまでのハードルは依然として高いのです。

新規顧客獲得のハードル

コミュニティ運営なしで新規顧客にアプローチする

それでも、ちひろ店長様はこの仕組みの可能性を信じていらっしゃいます。

「この仕組みによって、DAO(コミュニティ)を運営せず新規顧客にアプローチできると考えています」

コミュニティ運営には時間も労力もかかります。特に、本業やご家族との時間を大切にしたいクリエイターにとって、常にコミュニティを盛り上げ続けるのは現実的ではありません。

ちひろ店長様が目指すのは、HEXAへのXアカウント連携をする人を増やし、実地の古書が高値で売買されるように、NFT(レシピ)にも価値が生まれる未来です。そして、この仕組みを「いいね!」と思ったHEXAクリエイターにもどんどん活用してほしいと語ります。

「HEXAの新規顧客を増やして日本のNFT人口を増やしていきたいですね。みんなで増やしましょう!」

茄子の被り物を外せない、レシピブロガーの突然変異者

ちひろ店長様のプロフィールには、彼女のユニークなキャラクターが凝縮されています。

「物事を成す」という縁起担ぎで、茄子の被り物を外せない。アートの畑に突然現れて、NFTレシピなどというコンテンツを売ろうとしている――そんな自己紹介からは、彼女の遊び心と本気度が伝わってきます。

2023年からHEXAクリエイターたちに活動を追ってもらい、実際にNFTレシピの実績につながっています。最近では、「SKIMA」というサイトでNFTレシピの制作依頼を3人から受注することもできたそうです。

今後もメタバース書店でのNFTレシピ販売を継続し、地域の食文化のPR、インフルエンサーのPR、そしてご家族と一緒に食べる食事の記録を販売したい人々の励みや楽しみになることを目指されています。

また最近では、茄子を外してオレンジソーダを飲みながら、絵本「たんさんくんのぼうけん」を販売する新たな展開も始められています。地元と通販ショップで絵本と関連グッズを販売していく予定です。

ちひろ店長様の取り組みから、
HEXAクリエイターが真似できるポイントを整理

連携プラットフォームの活用 

6ブログのようなSEOが高いプラットフォームを使えば、HEXAに慣れていない層にもアプローチできます。有料記事という形式は、すでに多くの人が馴染んでいる購入体験です。そこにNFTのプレゼントコードを封入することで、自然な形でHEXAへの導線を作れます。

確実性とお得感の設計 

抽選ではなく、購入すれば確実にNFTが手に入る。この確実性は、初めてNFTに触れる人にとって安心材料になります。さらに、一つの購入で複数のNFTが手に入るという「お得感」は、購入のハードルを下げる効果があります。

景品表示法の範囲内での価値提供 

ちひろ店長様は景品表示法を勉強され、その範囲内でNFTレシピの価値を設定されています。こうした法的な配慮は、長期的に活動を続ける上で欠かせません。クリエイター自身が法律を学び、適切な範囲で価値を提供する姿勢は、真似すべきポイントです。

「次の価値」を仕込む発想

この取り組みの本質は、「次の価値」を仕込むという発想にあります。

NFTを単体で販売するのではなく、記事という入り口を用意し、その中に複数のNFTを封入する。顧客は記事を読むという体験をしながら、同時に複数のNFTを手に入れる。一つの購入が、いくつもの体験に分岐していくのです。

これは、コンテンツ販売の常識を少しずらした発想です。「何を売るか」ではなく「どう届けるか」に焦点を当てることで、新しい顧客体験が生まれます。

ちひろ店長様ご自身が認められるように、現時点では新規顧客の獲得には課題が残ります。しかし、この仕組み自体の評価は高い。つまり、あとは認知と信頼の問題なのです。

次の価値を仕込む発想

HEXAクリエイターへの問いかけ

あなたのNFTは、どんな形で顧客に届いているでしょうか。販売ページに並べて、購入を待つだけになっていないでしょうか。

ちひろ店長様の取り組みが示唆するのは、「NFTをどう包むか」という視点の重要性です。有料記事という包み紙、エアドロップという驚き、複数のNFTという豊かさ。こうした要素を組み合わせることで、単なる購入が体験に変わります。

DAOやコミュニティを運営する余裕がないクリエイターにこそ、この手法は有効かもしれません。外部プラットフォームを活用し、確実性とお得感を設計し、法律の範囲内で価値を提供する。これらは、どのクリエイターでも実践できる要素です。

HEXAの新規顧客を増やすことは、日本のNFT人口を増やすことにつながります。一人ひとりのクリエイターが工夫を凝らし、それを共有し、真似し合うことで、市場全体が豊かになっていくのです。

ちひろ店長様の「みんなで増やしましょう!えいえいおー!!」という呼びかけは、そんな未来への招待状なのかもしれません。