1. MetaStep TOP
  2. ビジネス活用を学ぶ
  3. ミドルシニア女性こそメタバースを!「生活者目線」で日本市場の可能性を拓く(後編)

2025.10.16

ミドルシニア女性こそメタバースを!「生活者目線」で日本市場の可能性を拓く(後編)

初心者女性のためのメタバース活用コミュニティ「Women's Metaverse Network」を設立しXRの体験や学びの場を創出している株式会社MetaBloom。ミドルシニアの知見を失うことなく共有し、かつ高齢者自身の課題――社会的孤立やセカンドキャリアの模索にも貢献するメタバースの可能性について語っていただく当連載。後編では、実際の活動紹介を通し、メタバースの更なる活用事例を考えていきます。それでは豊永さん、よろしくお願い致します!

株式会社MetaBloom 
代表取締役 豊永真由美氏  

 東京都出身。メガバンクと外資系銀行でキャリアを重ねる。その後、長年培ってきた経験やスキルが定年制度により一律にリセットされることへの違和感から、新たな生き方の可能性を模索。その中で、年齢、性別、肩書きなどの既存の枠組みを超えて活動できるメタバース/XRの世界に魅了される。2022 年、初心者女性のためのメタバース活用コミュニティ「Women's Metaverse Network」を設立。約70名のメンバーと共に、XRの体験や学びの場を創出している。

実際の活動について:MetaBloomの取り組み

私たちMetaBloomは、「心理的安全性の高い仮想空間×リスキリング×人的交流」を核心的価値として、ミドルシニア女性のメタバース参画を支援する包括的なプログラムを展開しています。この取り組みは、単なる技術教育にとどまらず、参加者の生活の質向上と社会参画の促進を目的とした統合的なアプローチを特徴としています。

1. 段階的リスキリング・プログラムの設計と実装

従来のデジタルリテラシー教育が技術的操作の習得に重点を置いていたのに対し、私たちのプログラムは「メタバースをいかに活用するか」という実用性と目的意識に焦点を当てています。

プログラムは以下の段階的構造を採用しています:

第一段階:基礎理解と環境適応

メタバースの概念と可能性に関する理論的理解
基本的な操作方法と安全な利用方法の習得

第二段階:実践的活用とスキル開発

個人の関心や目標に応じてカスタマイズされた学習体験
デジタルコンテンツ作成や情報発信のスキル習得

第三段階:自律的活動と社会貢献

メタバースを媒介としたコミュニティの形成
習得したスキルを活用した独自プロジェクトの企画・実行
他の学習者への指導や支援活動
メタバース環境での社会活動の展開

2. ネットワーキング・イベントの革新的アプローチ

私たちのネットワーキング・イベントは、オンラインとオフライン(VR施設ツアーやデバイスの体験会など)の境界を戦略的に活用した独自の形式を採用しています。オンラインでは、地理的・時間的制約に影響されにくい環境で、アバターによるフラットな交流が可能です。またオフラインでは、より直接的な人間関係の構築や、より深い学習体験が可能です。この「ハイブリッド・アプローチ」により、参加者は多様な交流や体験の機会を得ることが出来ています。

コミュニティメンバーによるVR体験の様子

3. 持続可能なコミュニティ・エコシステムの構築

コミュニティの継続的な活動は、私たちの取り組みの中核をなす要素です。単発的な学習機会の提供ではなく、長期的な成長と社会参画を支援するコミュニティ・エコシステムの構築に注力しています。コミュニティ活動の主な機能としては、定期的な情報交換、不定期なイベント開催、外部組織との連携プロジェクト参加、メンバーによる新規プロジェクトの企画・実行支援などです。これらの活動により、参加者はメタバースを持続的に活用していく機会を得られ、モチベーションを維持した状態でコミュニティの活性化を自律的に図るようになります。

業界全体への波及効果と今後の展望

1. メタバース業界のパラダイムシフト

ミドルシニア女性という新たなユーザー層の参入は、メタバース業界全体に根本的な変化をもたらす可能性があります。これまでの「技術ドリブン」なアプローチから「ニーズドリブン」なアプローチへの転換が促進され、より人間中心設計に基づいたサービス開発が加速することが予想されます。

業界変化の具体的な方向性:

ユニバーサルデザインの普及と標準化
ライフステージに応じた多様なサービス展開
実用性とエンターテイメント性の最適な融合
社会的価値創造を重視したビジネスモデルの emergence

2. 市場構造への影響予測

ミドルシニア女性層の本格参入により、業界全体に以下の構造変化が予想されます。従来のエンターテイメント中心から、ヘルスケア、教育、一般消費、ライフサポート分野などへの展開が加速することで、サービス領域の拡大が進みます。

技術開発においても、高性能グラフィックスよりもアクセシビリティ、セキュリティ、使いやすさを重視した開発方針への転換が期待されます。これは、ミドルシニア女性の「理解先行型」学習特性に適合したユーザーエクスペリエンスの重要性を示しています。

さらに、ゲーム課金以外の、サブスクリプションや教育プログラム等の安定収益源の開拓により、収益モデルの多様化も促進されるでしょう。この変化は、メタバース業界の持続可能性と社会的価値創造の両面から重要な意味を持ちます。

3. イノベーション・エコシステムの拡大

ミドルシニア女性の社会参画により、メタバース業界に新しいステークホルダーが加わることで、イノベーション・エコシステムの多様性と創造性が飛躍的に向上します。技術開発者だけでなく、社会課題の現場を知る実践者、豊富な人生経験を持つミドルシニア層、そして世代間橋渡し役となる女性たちが協働することで、これまでにない発想とソリューションが生まれることが期待されます。

4. 持続可能な社会基盤としての確立

メタバースが真に社会に根差した技術として発展するためには、特定の世代や層に限定されない包摂的な参画が不可欠です。ミドルシニア女性の積極的な関与により、メタバースは年齢、性別、地理的条件を超越した新しい社会基盤として機能する基盤が整備されます。

この変化により、メタバースは一時的な技術ブームを超えて、社会の持続可能な発展に貢献する重要なインフラストラクチャーとして確立される可能性が高まります。高齢化社会における社会参画、世代間交流の促進、地域格差の解消といった課題に対する革新的な解決策を提供することで、メタバースの社会的意義と価値が広く認識されることになるでしょう。

新しい社会基盤としてのメタバース

メタバースはゲームやエンターテイメントの枠を超えて、社会の新しい基盤インフラストラクチャーとして機能する可能性を秘めています。特に、これまでデジタル技術の恩恵を十分に受けてこなかった層にとって、メタバースは社会参画と自己実現の新しい機会を提供する革新的なプラットフォームとなり得ます。

今後、この取り組みがさらに発展し、多くの組織や個人との協働を通じて拡大していくことで、日本の高齢化社会が抱える課題の解決に寄与し、すべての人が年齢や性別にかかわらず自分らしく輝き続けられる社会が実現することを期待しています。