日本円だけでNFTの発行や売買ができる、日本初のNFTマーケットプレイス「HEXA(ヘキサ)」について学ぶ連載。12回目は、HEXAに、複数のデジタル会員権(ERC1155形式)の販売申請機能が搭載されたというニュースから。これまで一部自治体に限定されていた“同一NFTの複数発行機能”に、どのようなメリットがあるのか?その概要を詳しく教えて頂きましょう!
株式会社デイジープレイス
代表取締役COO
吉野 渉
こんにちは、デイジープレイスの吉野です。
2025年8月13日、HEXAから非常に興味深いプレスリリースが発表されました。「複数のデジタル会員権(ERC1155形式)の販売申請機能が搭載」という内容で、これまで個別発行しかできなかったデジタル会員権やチケットを、同一データに基づいて複数個同時に発行できるようになったのです。
これまで自治体のデジタル住民票NFTなどで限定的に活用されていた同一NFTの複数発行機能が、誰でもウェブから簡単に利用できるようになりました。
ERC1155形式の採用により、以下のメリットが実現されました。
●効率的な一括発行:同一内容のチケット・会員権を数百〜数千枚単位で一度に発行可能
●コスト効率の大幅改善:発行手数料を従来の個別発行と比較して大幅削減
●管理の簡素化:複数チケットの販売状況や使用状況を一元管理
●先着販売対応:販売個数を指定した先着順販売が簡単に設定可能
従来は会員権NFTとして#1、#2、#3……と別物のERC721形式のNFTを個別に販売申請できました。出品もひとつひとつ手作業で大変手間のかかるものでした。今回の機能追加によりERC1155形式のNFTを使うことで、完全に同一のNFTを複数個販売することができるようになります(全く同一NFTとなりますので、ナンバリングなどで区別はできません)。
従来では店舗での会員権利用には、「有料で個別に発行」または「無料でまとめて発行(エアドロップ)」の2択しかありませんでした。
●従来方式の課題:
「有料で個別に発行」の場合:出品時の手間に加え、会員権の管理が煩雑になる
「無料でまとめて発行(エアドロップ)」の場合:発行者が全ての費用を負担する必要があった
●複数会員権機能による解決:
今回の複数会員権機能では、店舗利用において入会金や初期費用のような扱いが可能となり、大量の会員権を一括で効率的に管理できます。また、この会員権を購入者が他の方に譲渡することも可能で、常にアクティブな会員を維持できるシステムが実現されました。
●具体的なメリット:
店舗側:大量会員権の一括管理により運営効率が大幅向上
購入者側:不要になった場合の譲渡により投資回収が可能
新規会員側:中古市場での会員権取得により参入ハードルが低下
従来は個人クリエイターの認知度向上を目的として「無料でまとめて発行(エアドロップ)」が数多く実施されました。NFTを所持していれば、その保有者だけが加入可能な限定コミュニティに参加でき、ファンの獲得に大いに役立ちました。
今回の複数会員権機能では、1つの作品を多くの方に同時販売することが可能になり、クリエイターの創作活動の幅を大きく広げました。同じ作品を愛する複数のファン同士が、作品の良さを共有し合えるコミュニティが形成されるようになります。
●従来のエアドロップとの違い
従来 :無料配布によるファン獲得が主目的
新機能:有償販売により創作活動の収益化と持続可能性を実現
このコミュニティ効果として、同じ作品を「購入して応援した」という共通体験による、より深いファン同士の結束が生まれます。
2025年8月14日、プロ野球、プロサッカーのチケットにNFTが導入されました。これは「楽天イーグルス」「ヴィッセル神戸」の公式チケットリセールに「NFTチケット」が利用可能となたものでRakuten NFTで採用されたものです。今までのチケットの2次流通では偽造や二重取引が課題とされてきました。また転売業者の大量購入によるリセールを防ぐという最大のメリットが提供できます。人気アーティストのライブチケットにも応用できる仕組みでファンに適正価格で届けることができるようになっていくことでしょう。
「Rakuten NFT」、「楽天イーグルス」「ヴィッセル神戸」の公式チケットリセールに「NFTチケット」を導入
機能面だけを考えるとRakuten NFTで実現できたことがHEXAでも可能です。複数枚発行でき、ローカルのコンサートやイベントに応用可能です。価格が違うS席やアリーナ席などもその価格ごとに席数分だけNFTを発行すれば、対応可能で会員権よりもチケットとして非常に有用さを発揮できることでしょう。
但し、資金決済法に注意が必要です。販売期間や有効期限、その総販売額によっては供託金が必要です。発行者は資金決済法に留意する必要があります。
【イベント情報】
名称:「山里音楽祭2025」
会場:○○市野外音楽堂(1,500人収容)
出演:地元出身のインディーズバンド+ゲストアーティスト
定価:前売り4,000円、当日5,000円
【従来の問題】
・小規模ながら人気アーティストのゲスト出演で注目
・チケットが転売サイトで8,000~12,000円で取引
・地方イベントなのに地元住民がチケット入手困難
・主催者(地元商工会)には転売利益が還元されず
【HEXAのERC1155形式チケット導入】
・1,500枚を一括発行(前売り1,200枚、当日券300枚)
・初期費用0円で地元商工会が運営
・ロイヤリティ:20%(転売利益を地域に還元)
・地域特典:市内飲食店での割引券をNFTに付帯
店舗で周年イベントを開催し、同一価格で多くの顧客に販売する場合に非常に有用です。イベント時は平時よりも多くの顧客が来店するため、サービス提供や接客対応に追われがちです。せっかくの記念すべき周年イベントが会計処理に追われてしまっては、本来の目的が損なわれてしまいます。
●事前販売による運営効率化:
・イベント前にチケットを販売完了できるため、当日は接客に集中可能
・偽造の心配が一切なく、スマホでの確認も容易
・事前にコース内容を振り分けておくことで、価格差のある複数プランにも対応可能
●ファンベース拡大効果:
・毎年の周年記念NFTをコレクションとして価値提供
・店舗との長期的な関係構築による顧客ロイヤルティ向上
・コミュニティαで周年イベントの様子を参加者だけに提供可能
店舗での活用事例
個人クリエイターが有償で個展を開く際、チケット管理が非常に煩雑という課題があります。個人で対応可能なセキュリティには限界があり、また紙のチケットの発行には印刷代の負担もかかります。
HEXAのERC1155形式なら、これらが一括管理可能で、しかも開催後もファンの手元に永続的に残り続ける記念品として機能します。偽造不可能でありながら、追加コストなしで高いセキュリティを実現できるサービスとして活用可能です。
クリエイター個展の事例
HEXAの複数会員権(ERC1155形式)機能は、単なる技術の進歩ではなく、25年8月の実装により、チケット・会員権ビジネスに革命的な変化をもたらしました。個別発行の煩雑さから一括管理の効率性へ、高額な印刷・運営コストから初期費用0円の手軽さへ、偽造リスクから完全な真正性保証へ、従来のチケット・会員権ビジネスが抱えていた根本的な課題を、技術の力で一挙に解決しています。
転売を生業とする方々に対しては、単純な禁止ではなく、経済的インセンティブの再設計というスマートなアプローチを採用しています。ロイヤリティによる利益還元、ブロックチェーンによる取引の完全な可視化により、転売業者の利益構造を根本から変革しています。
同時に、購入者の自由な価格設定権を保持することで、正当な譲渡ニーズを妨げることなく、健全な二次流通市場の形成を可能にしています。
大規模イベントのチケット管理から個人クリエイターの個展まで、店舗の周年イベントから日常的な会員権運営まで——規模や業種を問わず活用できる柔軟性が、この技術の最大の魅力です。特に、これまで技術的・コスト的なハードルにより最新のチケット管理システムを導入できなかった中小事業者にとって、初期費用0円で利用できるこの仕組みは画期的です。
アーティスト、主催者、ファン、そして適正な譲渡を行う購入者——すべてのステークホルダーが利益を享受できるwin-winの関係を実現しています。転売により発生した利益の一部が自動的に正当な権利者に還元される仕組みにより、クリエイターの持続可能な創作活動を支援し、業界全体の健全な発展を促進します。
現在、この技術の普及により、本当に音楽やエンターテインメント、サービスを愛する人々が、適正な価格でより良い体験を享受できる社会の実現が見えてきました。転売業者の存在を全面的に否定するのではなく、健全な市場メカニズムの中で適正な役割を果たしてもらう、そんな成熟したビジネス環境の構築に向けて、HEXAの複数会員権機能は確実に貢献していくでしょう。HEXAが切り拓く新しいチケット・会員権ビジネスの世界に、ぜひご注目ください。