(引用元:PR TIMES)
XRクリエイティブスタジオの株式会社Gugenkaは、京セラ株式会社の「マニュファクチャリングワールド」の制作を担当。2025年6月11日よりソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」にて公開されたことを発表した。このワールドは、京セラの開発・設計・評価・製造といった「モノづくり」の分野に、幅広い年齢層のユーザーが興味を持つきっかけとなることを目指して開設されたメタバースコンテンツだ。
ワールド内では、京セラの3つの主要な事業部門である機械工具事業本部、半導体部品セラミック材料事業本部、そして電子部品事業本部のコンテンツを体験できる。Gugenkaが空間制作やギミック制作を担当し、ユーザーが楽しみながら京セラの技術に触れられるよう工夫が凝らされている。
例えば切削工具フロアでは、プラズマを利用して金属イオンを切削チップへ蒸着させる「PVD真空炉」が再現されている。ユーザーは単にその様子を眺めるだけでなく、真空炉の中に入り込み、自らが金属イオンや切削工具となって蒸着する工程をインタラクティブに体験することができる。こうしたゲーム的なギミックは、専門的で難解な製造技術への理解を直感的に深める効果がある。
(引用元:PR TIMES)
また、電子部品フロアでは、実際の動きを精巧に再現した3DCGモデルを見たり触ったりして楽しめるほか、京セラ電子部品の公式マスコットキャラクター「えれたん」が、かわいいアニメーションと共に電子部品について分かりやすく説明してくれる。
(引用元:PR TIMES)
京セラはワールド公開に合わせ、スタッフによる説明やワールド内のギミック体験を楽しめるガイド付きツアーも開催。一部日程では、VRChatユーザーにも馴染み深い一翔剣さんが司会を務めるなど、コミュニティに寄り添ったイベント運営が行われる。ワールドは2025年6月11日よりシーズン1が公開され、同年10月にはシーズン2の公開も予定されている。
京セラのように一般消費者との直接的な接点が少ないBtoB企業が、なぜソーシャルVRプラットフォームであるVRChatを活用するのか。その戦略的意義は大きい。
第一に、将来の技術者を担う若年層や、モノづくりに関心を持つ潜在的な人材へのアプローチだ。VRChatはそのような層が多く集まる巨大なコミュニティであり、リクルーティング活動の一環としても、また自社の先進的な技術力を広く社会にアピールする「テクニカルブランディング」の場としても極めて有効だ。
「PVD真空炉の中に入る」といった体験型ギミックは、この戦略を象徴している。ウェブサイトの文章や動画では、その複雑さや専門性から敬遠されがちな製造プロセスも、メタバース空間でゲーム感覚の体験に落とし込むことで、「面白さ」を伴った深い学びに変わる。これは、メタバースならではの強力なコミュニケーション手法と言えるだろう。
このようなBtoB企業のメタバース活用において、Gugenkaのような専門スタジオの役割はますます重要になる。企業が持つ高度で専門的な技術やメッセージを、VRChatユーザーに受け入れられ、楽しんでもらえる魅力的なコンテンツへと「翻訳」する能力が求められるからだ。
今回の京セラの取り組みは、BtoB企業のメタバース活用が、単なる製品の3D展示やバーチャル会議室といった初期の活用法に留まらないことを明確に示している。将来的には、仮想空間での実践的な技術トレーニング、国境を越えたエンジニアたちの共同開発拠点、あるいは新製品のバーチャルデモンストレーションや顧客からのフィードバック収集の場など、より実務的で高度な活用へと発展していくことが期待される。「マニュファクチャリングワールド」は、BtoB企業が未来の顧客や従業員と出会い、自社の技術と哲学を伝えるための先進的なデジタルショールームとしての確かな一歩を記したと言えるだろう。