国内最大級のメタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスター株式会社は、JR西日本グループが提供する「バーチャル広島駅」の大規模リニューアルを支援し、2025年8月1日に公開することを発表した。今回のリニューアルは、現実の広島駅で実現する路面電車の駅ビル乗り入れを記念したもので、メタバースならではの表現力と創造性を活かした新しい空間と体験が盛り込まれている。
(引用元:PR TIMES)
リニューアル後の「バーチャル広島駅」には、主に3つの見どころがある。一つ目は、リアルでは不可能な「夢の車両共演」だ。現実の広島駅と同様に広島電鉄650形車両が登場するだけでなく、JR西日本の227系Red Wingもバーチャル空間上に出現。現実世界では決して並ぶことのない両社の車両が駅の中央アトリウムで肩を並べるという、メタバースだからこそ実現できる特別な光景が広がる。
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二つ目は、ユーザー同士の交流を促す「ラウンジスペース」の新設だ。広島エリアの結節点である中央アトリウムフロアに、ユーザー同士がアバターを通じて集い、実際のベンチに座って語り合える空間が用意される。これは、「いつでも、どこでも、集まることができる」というclusterのコンセプトを体現するものだ。
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三つ目は、「鉄道車両クラフトアイテム」の発売だ。細部までこだわり抜いた227系RedWingと広島電鉄650形のクラフトアイテムを使うことで、ユーザーはclusterの「ワールドクラフト」機能において、自分自身の手で理想の鉄道ジオラマや夢の車両基地を建設することができる。
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さらに、リニューアルを記念したオープニングイベントや、ユーザー参加型のキャンペーンも多数開催される。8月1日の夜にはJR西日本と広島電鉄の社員によるトークイベントが開催され、制作秘話などが語られる。また、ユーザーが制作したワールドがバーチャル広島駅と繋がる「ワールドクラフトコンテスト」や、バーチャルとリアルの広島駅を巡ることでWESTERポイントが貯まるスタンプラリーなども実施され(8月31日まで)、イベントの魅力を一層高める。
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今回の「バーチャル広島駅」リニューアルは、メタバースが持つ本質的な価値を巧みに引き出している。
その一つが、「リアルでは不可能」な体験の提供だ。JR西日本と広島電鉄の車両が駅ビル内で並ぶという「夢の車両共演」は、物理法則や安全上の制約を超え、ファンが長年「見たかった」と願う光景を創造する。これは、メタバースが単なる現実世界の再現に留まらず、人々の憧れや想像力を具現化し、ブランドやコンテンツへのエンゲージメントを飛躍的に高める力を持つことを示している。
ユーザーを単なる「消費者」から「共創者」へと変える参加型の企画も重要だ。クラフトアイテムの販売やワールドクラフトコンテストは、企業が提供するコンテンツをユーザーが一方的に楽しむだけでなく、それを素材として自らが新たな世界を「創造」し、公式ワールドの一部となれる機会を提供する。これは、ファンとの「共創」を重視した新しい関わり方だ。ユーザーの創造性を引き出し、コミュニティの熱量を高めることで、プラットフォームへの深い愛着を育むのである。
また、バーチャルとリアルの連携がもたらす相乗効果も見逃せない。WESTERスタンプラリーは、バーチャル駅への訪問をきっかけにリアルの広島駅への来訪を促す巧みな設計になっている。これは、メタバースが単体で完結するのではなく、リアルな世界の経済活動や地域活性化に直接貢献できることを示す好例であり、デジタルな体験がリアルの行動変容を生み出す「OMO(Online Merges with Offline)」の優れた実践だと言える。
クラスターは、これまでも「バーチャル大阪」や「バーチャル渋谷」など、都市空間のメタバース化で豊富な実績を重ねてきた。今回のJR西日本との協業は、交通インフラというより社会基盤に近い領域へとその活動を広げるものだ。将来的には単なるプロモーションに留まらず、遠隔地からの駅利用案内や災害時の避難シミュレーション、新しい観光体験の提供など、駅が持つ機能を拡張する実用的な社会インフラとしての役割も期待される。「バーチャル広島駅」は、鉄道ファンという熱量の高いコミュニティと深く繋がりながら、未来の駅のあり方や、リアルとバーチャルが融合した新しい移動体験を模索する先進的な社会実験と言えるだろう。