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2025.08.12

スマホで土量をAR計測 〜現場の省力化とDXを推進する「GENBA-Scan」

ロボットやAI・XR・3Dデータソリューションなど、社会・産業インフラに特化した製品・サービスを提供する株式会社イクシス。のAR体積管理ソリューション「GENBA-Scan」が、国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」に登録された。スマートフォン一つで資材や土量の体積を一人で計測できるこのサービスは、現場の省力化とDXを推進し、公共工事での活用拡大が期待される。(文=MetaStep編集部)

NETIS登録ARソリューション「GENBA-Scan」とは?


(引用元:PR TIMES

株式会社イクシスは2025年7月9日、同社が提供するAR体積管理ソリューション「GENBA-Scan」が、国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」に登録されたことを発表。ストックヤードや土木現場、プラントなどにおける資材や土量の体積管理は、多くの課題を抱えている。正確な測定のために重機で山を平らにならす作業が必要だったり、複数人でメジャーを使って計測したりと、多くの人手と時間を要していた。また、紙での記録を基に帳票を作成する手間や、転記ミスのリスクも存在した。

「GENBA-Scan」は、こうした現場の課題をAR(拡張現実)技術を活用して解決するソリューションだ。体積測定用のアプリケーションと専用端末のレンタルサービスとして提供され、計測から帳票の自動出力までをスマートフォン一つで完結できる。

その最大の特徴は、「ひとりでできる」手軽さにある。従来は複数名で行っていた計測・記録・確認・帳票作成といった一連の作業が、作業者一人だけで実施可能に。計測前の重機によるならし作業も不要となる。帳票は自動作成されるため、報告書作成の手間が大幅に削減され、計算ミスや転記ミスも防止できる。操作は極めてシンプルで、計測開始・停止ボタンと計測メニューの3つだけで構成されており、誰でも直感的に使用できる。計算された体積や容積は、アプリ画面ですぐに確認可能だ。


(引用元:PR TIMES

現場の多様な状況に対応するため、3つの計算モード(設定した床面より上側の凸部体積を計算する「体積モード」、下側の凹部容積を計算する「容積モード」、両者の差分を計算する「差分モード」)や、計測範囲を任意に設定できる「仮想壁設定機能」も有している。すでに土木現場での盛土量の計算や、ダンプトラックの過積載確認、ストックヤードの在庫管理など多くの場面で活用されている。


(引用元:PR TIMES

ARが変える現場作業と「一人DX」の可能性

イクシスの「GENBA-Scan」がもたらすのは、現場作業における「一人DX」という新しい概念だ。

従来のDXツールは、大規模なシステム導入や専門的な知識を必要とすることが多く、その恩恵は組織全体、あるいは一部の専門部署に限られがちだった。しかし「GENBA-Scan」は、誰もが日常的に使うスマートフォンをインターフェースとして採用。そのため、現場の作業員は計測から帳票作成までをその場で、かつ一人で完結させることができる。これは、組織全体の大きな変革を待たずとも個人のレベルから生産性向上と業務効率化を始められるという、新しいDXのアプローチを示している。

今回、このサービスがNETISに登録されたことの意義は大きい。NETISに登録された新技術は、公共工事の入札において技術評価点で加点対象となる場合があり、発注者である国や自治体側からARのような先進技術の活用が促されることになる。これにより、技術導入に比較的慎重な傾向がある建設・土木業界においても、DXが「推奨」から「標準」へとシフトしていく大きなきっかけとなるだろう。

また、AR技術による「物理作業のデジタル化」という価値も見逃せないポイントだ。計測のために必要だった重機による「ならし作業」が不要になることは、単なる省力化に留まらない。重機の稼働時間削減による燃料費やCO₂排出量の削減、そして現場の安全性向上にも直接的に繋がる。ARは、現実世界をデジタルデータとして捉え直すことで、非効率な物理的プロセスそのものを不要にする力を持っているのだ。

「ロボット×テクノロジーで社会を守る」をミッションに掲げるイクシスにとって、「GENBA-Scan」はその理念を体現するサービスの一つだ。将来的には、このソリューションで計測した3Dデータを、ドローンによる広範囲の測量データや自動運転重機と連携させることで、在庫管理の完全自動化や土木工事全体の進捗管理の高度化といった、より広範な現場DXソリューションへと発展していくことが期待される。「GENBA-Scan」のようなツールは、人手不足が深刻化する日本のさまざまな「現場」を支え、より安全で生産性の高い働き方を実現するための強力な武器となるに違いない。