不動産管理やシェアハウス事業を手掛けてきた東京ディフェンス株式会社が、人気オンラインゲーム「FORTNITE(フォートナイト)」のオリジナルゲームを制作する新部署「PIXEL PROMO(ピクセルプロモ)」を設立し、法人向けサービスの提供を開始した。一見、異業種への挑戦に見えるこの動きは、実は同社が長年培ってきた独自の強みに深く根差している。
(引用元:PR TIMES)
同社は、まだ一般的ではなかった1990年代から、建築物の3DCG制作にいち早く着手。顧客への提案に活用するなど、空間をリアルかつ魅力的に描き出す技術を磨き続けてきた。この「リアルな空間をデジタルで創造する」という技術は、現代のメタバース、特にFORTNITE上でワールドを構築する技術と本質的に共通する。全世界で6億5,000万人以上のプレイヤーを抱え、Z世代の巨大なコミュニティとなっているFORTNITEは、今や企業にとって最も魅力的なマーケティングの舞台の一つだ。
東京ディフェンスは、この長年の建築CG制作で培ったノウハウと、企画から開発までをすべて自社で完結させるワンストップ制作体制を掛け合わせることで、高品質ながらも導入しやすい価格帯のサービスが実現できると判断し、「PIXEL PROMO」の設立に至った。
(引用元:PR TIMES)
提供されるサービスは、Unreal Editor for Fortnite(UEFN)を用いて、企業のブランド価値を高める高品質なオリジナルゲームを制作するものだ。自社一貫制作だからこそ実現できた50万円からの格安プランはテストマーケティングにも最適であり、これまでコストの高さから大手企業中心だったゲームマーケティングの門戸を、中小企業にも開くことを目指している。このほか、企業のニーズに合わせたフルカスタム制作や、インプレッション数、プレイ時間などを可視化する効果測定レポートの提供も行う。サービス開始に先駆けて制作された複数のゲームでは、公開後わずか10日間で約40万インプレッションを記録するなど、すでに大きな反響を呼んでいる。
東京ディフェンスのFORTNITEゲーム制作事業への参入は、単なる新規事業というだけでなく、メタバースマーケティングにおける新しい潮流を示唆している。
最も注目すべきは、建築CGという不動産業界で培われた「リアルな空間創造」のスキルセットが、ゲームやメタバースという全く異なる分野で直接的な価値を生み出すことを証明した点だ。これは、特定の業界で専門化されてきた3D制作技術が、より広範なデジタルコンテンツ制作市場において高い競争力を持つことを意味する。今後、自動車設計のCAD技術や医療用の3Dモデリング技術など、さまざまな産業で培われた専門的な
3D技術がメタバース分野へ流入し、これまでにない多様で高品質なクリエイティブが生まれる可能性が広がるだろう。
(引用元:PR TIMES)
FORTNITEのようなプラットフォームは、もはや単なるゲームではなく、Z世代が日常的に集い、交流し、自己表現を行う巨大なソーシャル空間だ。企業がこの空間にブランドの世界観を反映したオリジナルのゲームやワールドを提供することは、従来の広告とは本質的に異なる。ユーザーに「能動的な体験」を通じてブランドに触れてもらうことで、一方的な情報発信ではなく、共感や楽しさを通じた深い顧客エンゲージメントを構築する、新しい形のマーケティングを実現する。
さらに、ワンストップ制作による低価格プランの提供は、これまでコスト面で参入が難しかった中小企業にも、FORTNITEという巨大プラットフォームでのマーケティング機会を提供することに繋がる。これは、大手企業だけでなく、多様な企業による個性的なコンテンツが生まれる土壌を育み、メタバースマーケティングの「民主化」を促進する動きと言える。東京ディフェンスの挑戦は、既存事業で培った確かな強みを活かし、成長著しいメタバースという市場で新たな事業の柱を構築しようとする伝統的な企業の先進的DX事例として、多くの企業にとっての指針となり得るだろう。