日本円だけでNFTの発行や売買ができる、日本初のNFTマーケットプレイス「HEXA(ヘキサ)」について学ぶ連載。11回目は、日に日に熱さを増していく万博に関するNFTについて。政府主導のNFT活用は、Web3業界にとって明るい兆し。その概要を詳しく教えて頂きましょう!
株式会社デイジープレイス 代表取締役COO
吉野 渉
こんにちは、デイジープレイスの吉野です。
「NFT市場はもう終わった」「期待できない分野になった」という声を聞くことがありますが、果たして本当にそうでしょうか?
今現在、日本政府観光局(JNTO)が大阪万博で展開している「万博をテーマに旅をする」welcome NFTプロジェクトを見ると、政府レベルでNFTの価値が認められ、積極的に活用されている現実があります。これは、NFT市場に対する期待が決して失われていないことの重要な証拠といえるでしょう。
JNTOが実施している万博NFTプロジェクトは、単なる話題作りではありません。万博サブテーマ「いのちを救う」「いのちに力を与える」「いのちをつなぐ」を感じられる旅行を題材として、全国10地域のNFTアートを世界中の旅行者に配布しています。
これは政府機関による初の本格的なNFT活用事例であり、以下の点で注目すべきです。
1. 明確な戦略的目的
万博を契機に日本に興味を持つ世界の旅行者へ日本の地方の魅力を伝え、万博への来場や地方の観光地への誘客を促進する明確な目的があります。
2. 文化的価値の重視
古くから伝わる伝統的な技法である水墨画により、人々の「いのち」の尊さや繋がりを描き出し、訪日外国人に日本の文化を感じてもらうことを目指しています。
3. 継続的な取り組み
5月下旬からは、各地域で人気の体験商品のNFTの配布も予定されており、一過性のものではない継続的な戦略として位置づけられています。(参考:【訪日外国人旅行者向け企画】日本政府観光局「EXPO2025デジタルウォレット」と連携し、NFTを活用した初の海外向けプロモーションを開始)
JNTOの事例が示すのは、NFT市場が投機的なブームから実用的な活用へとシフトしているということです。投機から実用へのパラダイムシフト
過去のNFTブームでは、高額取引や転売益に注目が集まりがちでした。しかし、JNTOのプロジェクトで使用されているのは、改ざんされず、他人に譲渡できないSBT(Soul Bound Token)技術です。これは参加証などに活用できる新しい技術として期待されています。
この動きは、NFTが本来持つべき「デジタル証明書」としての価値に回帰していることを示しています。
JNTOという政府機関がNFTを正式採用したことで、「NFTは信頼できる技術」という認識が広がっています。これまで「怪しいもの」「投機的なもの」というイメージを持たれがちだったNFTが、公的機関のお墨付きを得たことの意味は大きいです。また、このNFTはEXPO2025デジタルウォレットは各国のパビリオンでも取得できる仕組みとなっており、世界での運用を実現しています。
How to get NFT art on your EXPO2025 DIGITAL WALLET(EXPO2025 NFTアートの入手方法)
1. 体験価値のデジタル化トレンド
JNTOのプロジェクトでは、掛け軸内に次々と描かれる水墨画を通じて旅行の疑似体験を提供し、その体験をNFTとして記録できます。これは「体験のデジタル化」という新しいトレンドを示しており、HEXAでは同系統のサービスとして6ブログで実現している「記事を読む体験のNFT化」があります。
2. 継続的エンゲージメントツールとしての認識
JNTOは「NFT配布後の実用的な活用については、現在計画しているところ」と述べており、NFTを継続的な関係構築ツールとして捉えています。これまでHEXAのコミュニティα機能で実現してきた「NFT保有者との継続的関係構築」が、政府レベルでも重要視されていることがわかります。
3. 文化的価値の再評価
水墨画という伝統技法とNFTを組み合わせることで、デジタル技術による文化継承の新しい形が示されています。これは、NFTが単なる技術ではなく、文化的価値を伝える媒体として機能することを証明しています。
大阪・関西万博特設ウェブサイトNFTアートイメージ
JNTOの事例から見えてくるのは、NFT市場の新たな可能性です。
1. 官民連携の拡大
政府機関がNFTを正式採用したことで、今後は官民連携によるNFTプロジェクトが増加する可能性があります。
2. 国際的な文化交流ツール
万博という国際的なイベントでNFTが活用されることで、NFTが国際的な文化交流ツールとして認識される可能性があります。
3. 持続可能なビジネスモデルの確立
投機的な取引ではなく、実用価値に基づいたNFTビジネスモデルが確立されることで、持続可能なNFT市場の形成が期待されます。
1. 実用性のあるNFTへの需要増加
政府レベルでの採用により、「使えるNFT」への需要がさらに高まることが予想されます。HEXAの会員権NFTやデジタル住民票などの実用的なNFTの価値が再認識されるでしょう。
2. 地方自治体との連携機会
JNTOの成功事例により、地方自治体もNFTを活用した施策に関心を示す可能性があります。HEXAでは自治体やまちづくりなどでデジタル住民権などを発行してきました。こうした関係人口の創出やコレクターアイテムとしての可能性があります。
3. 文化的価値を持つNFTの重要性
単なるデジタルアートではなく、地域の文化や歴史を反映したNFTの価値が高まることが期待されます。
「ミャクーン!」と呼ばれる、万博の「EXPO2025デジタルウォレット」サービスを通して発行されるNFT付きの画像。上記画像は会員ランクのシルバーに属する参加者へ配布されるもの。一覧はこちら
JNTOによる万博NFTプロジェクトは、NFTが決して期待を失った分野ではないことを明確に示しています。
むしろ、投機的なブームが落ち着いた今こそ、NFTの本当の価値である「デジタル証明書」「体験の記録」「文化の継承」といった機能に注目が集まっています。
HEXAは、この新しいトレンドを先取りしてきたプラットフォームとして、今後ますます重要な役割を果たすことになるでしょう。政府機関がNFTの価値を認め、実際に活用し始めた今、私たちはNFTの真の可能性を実現する絶好のタイミングを迎えています。