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2025.06.04

【JapanStepコラム】中小・零細企業にも勝機あり!九州発スタートアップのTikTok活用術

「TikTokは若者向けのSNS」「チャラチャラしたコンテンツが多くてPRには使えない」そんな風に思っている読者の方はいないだろうか。TikTokは、企業の魅力を可視化し、採用・販促・認知向上できるSNSツールとして、多くの企業で活用が進んでいる。

なぜTikTokの活用が進んでいるのか。具体的にどのような運用をすればよいのか。そんな疑問にお応えすべく、TikTok運用を手掛ける株式会社KeyWeaveのお二人にお話を伺った。

JapanStepのパートナー企業に参画いただいている同社の「日本をステップさせるためにはSNS活用は不可欠。何よりトライしてもらいたい」という思いに共感し、共同制作した本記事。まだTikTokを活用したことのない読者の方にこそ、是非ご一読いただきたい。(文=JapanStep編集部)

TikTokは“エンタメ専用”と思っていないか

「TikTok=若者のダンス動画」というイメージは、もはや過去のものだ。今やTikTokのユーザー平均年齢は35歳を超え、20~30代のビジネスパーソンが日常的に利用するSNSとなっている。ユーザーの多様化とともに、コンテンツの幅も広がり、教育・ビジネス・採用・製品紹介など、さまざまな領域でTikTokは活用されている。

最大の強みは、“アルゴリズムによる拡散力”だ。TikTokは、フォローの有無にかかわらず、「投稿内容そのものの魅力」を評価する設計となっており、たとえ無名のアカウントであっても、共感性の高い動画であれば「おすすめ」フィードに掲載され、数十万、時には数百万回の再生を獲得することも珍しくない。これは、広告費や知名度のハンディキャップを抱える中小企業にとって、まさに“逆転のチャンス”となる仕組みである。

加えて、TikTokが持つ動画フォーマットの特性も見逃せない。短尺・縦型の動画はスマホ視聴との親和性が高く、視覚的・感情的な訴求力に優れている。商品やサービスのスペックだけでなく、製造の舞台裏、働く人の思い、企業文化といった“人間味のあるリアル”を伝えるには、これ以上ない表現手段だ。

さらに、TikTokにはトレンドのスピード感もある。日々生まれる「音源」「フォーマット」「チャレンジ」などを企業側が柔軟に取り入れることで、“遊び心”と“タイムリーさ”を持ったコンテンツとして注目されやすくなる。特に採用やブランディングにおいては、こうしたカジュアルなアプローチが、既存メディアではリーチできない層への接点となり得る。

“知られていない魅力”を可視化する

このTikTokの可能性に、いち早く着目したのが北九州を拠点とするスタートアップ株式会社KeyWeave(以下、敬称略)だ。2022年に事業を開始し、2024年3月に法人化したばかりの若い企業ながら、TikTokおよびInstagramを中心としたSNS運用支援や動画制作を手がけ、すでに数々の企業の採用・販促・集客を支援してきた。

共同代表を務めるのは、ともに九州工業大学で宇宙工学を学んだ畠山 雄樹 氏と織田 漸 氏。地方企業が本来持つ魅力をうまく発信できていない現状に課題を感じた畠山氏と、SNS市場の可能性をいち早く捉えた織田氏の出会いから、この事業はスタートした。

 今回お話を伺った株式会社KeyWeave織田 漸 氏(写真左)畠山 雄樹 氏(写真右)

畠山氏は「本当にいい会社は、知られていないだけ」という信念を掲げる。顔出しに不安を抱える企業には独自のFaceSwap(顔交換)技術を活用し、プライバシー保護と動画映えを両立。戦略設計から投稿・分析までワンストップで支援し、リソースに乏しい中小企業でも継続運用できる仕組みを整えている。

TikTok運用の“はじめの一歩”は明確な目的設定

では、実際にBtoB企業がTikTok運用を始めるには、どのような手順を踏むべきだろうか。KeyWeaveが推奨する第一歩は、「目的」と「ターゲット」の明確化だ。これは単なる形式的な設定ではない。自社が何を達成したいのか(ブランド認知、販路開拓、採用母集団の拡大など)を言語化し、それに最も効果的なターゲット像を描くことで、発信の“芯”が決まる。

次に重要なのが、社内に眠る“ネタ”を掘り起こすことだ。実は多くの企業が「何を発信すればいいか分からない」と悩むが、社員の働く姿、製造現場、社内イベント、経営者の一言コメントなど、すべてがコンテンツになり得る。「社員の一日に密着」「工場の舞台裏」「職場の朝礼の様子」「営業メンバーの移動日記」など、何気ない日常ほど視聴者に親近感を与える素材になる。今の若い世代は、会社の雰囲気や上司の人柄なども、会社を選ぶ視点の一つであるからだ。

動画の撮影はスマホでOK。編集はアプリで簡易的に行い、完璧を目指す必要はない。むしろ“素人っぽさ”や“等身大”の方が共感を呼びやすいという声もある。最初に制作する1本目としては、会社紹介やサービスの概要など、ベーシックな内容がおすすめだ。これをプロフィールに固定しておくことで、初見の視聴者に安心感を与えることができる。

「動画のコメント欄やプロフィールに、自社の採用ページや製品ページ、問い合わせフォームへのリンクを貼ることで、コンバージョンに繋がる導線を設計することも忘れずに取り組んでほしいです。TikTok広告の連携を視野に入れると、より精度の高い集客も可能になります」(畠山氏)

そして何より重要なのが「継続性」だ。「週1回でも良いので定期的に投稿を行い、反応を見ながら改善を重ねていくと良いでしょう。TikTokには分析機能も備わっています。視聴者属性や離脱ポイント、人気の傾向などを細かく追えるのでデータに基づきPDCAを回す姿勢が、成功への鍵を握ると言えるでしょう」(織田氏)

SNSに慣れていない企業こそ、“小さく始めて、大きく育てる”意識が重要だ。TikTokは、それを可能にする稀有なメディアだといえる。

採用数が増加、販促効果も──成功事例が続々

実際にTikTokを活用して成果を上げているBtoB企業の事例は、着実に増えつつある。KeyWeaveが支援した企業の中から、特に印象的な2社を紹介しよう。

まずは、運輸業を営む日新運輸工業株式会社。同社は、現場の雰囲気や働く社員の姿を中心にしたリアルな動画を投稿し、運用開始1ヶ月で150万再生を達成。従来の採用活動ではリーチできなかった層にも訴求でき、採用ページのアクセス数が急増。結果として、採用母集団の拡大や職場見学希望者の増加につながった。採用難が続く物流業界において、TikTokは有効なブランディング手段として定着しつつあることを示す好例だ。

  

「新入社員のあるある」を動画にすることでZ世代の関心を引き付けた元動画はこちら

福岡県北九州市を中心に展開する人気の寿司チェーンで廻転寿司 平四郎では、採用目的で運用を開始。社員が働く様子や、厨房の風景をコミカルに編集した動画が話題を呼び、運用2ヶ月で採用応募数が目に見えて増加。特に若年層に対する訴求力が高く、応募者の中には「ショート動画を見て、ここで働きたいと思った」という声も寄せられているという。


  

業界用語をユーモラスに解説する動画元動画はこちら

これらの事例に共通しているのは、いずれも「特別な演出」ではなく、「日常のリアル」や「人の温度感」を伝えることで視聴者の共感を得ている点である。動画制作にあたっては、プロのナレーションやスタジオ撮影を用いる必要はない。スマホひとつで、等身大の企業の姿を届けることができるのだ。


取材を終えて

TikTokは多くの広告費をかけることができない中小・零細企業や地域の企業にとって希望のツールにもなりうるかもしれない。KeyWeaveのお二人のお話を伺い、そんな風に感じました。

成功のセオリーやキレイな撮影ももちろん大事でしょう。ただ、それ以上に大切なのは、完璧な動画ではなく、熱意のこもった一歩。その小さな一歩が、思わぬ顧客や人材との出会いを生むかもしれません。アプリをダウンロードしていない方はまずTikTokユーザーになるところから。「まずやってみよう」と感じた方は是非アカウントを作成し、1本目の動画を撮影するところから、是非始めてみてはいかがでしょうか。