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2025.05.07

モーションキャプチャー技術について知る―人の動きをデジタルで捉える

 人やモノの動きをデジタルデータとして記録し、活用することを可能にするモーションキャプチャー技術。エンターテインメントの世界だけでなく、製造、医療、スポーツなど幅広い分野で導入が進んでいます。AIやIoTの発展により、その活用シーンは急速に広がりを見せており、多くの企業が業務効率化やサービス革新の手段として注目しています。

本記事では、モーションキャプチャーの基本から、ビジネスでの具体的な活用事例まで、分かりやすく解説します。

モーションキャプチャーが注目される背景

人の動きを正確に記録し、デジタルデータとして活用することへのニーズは、ここ数年で急速に高まっています。背景には、センサー技術の進化による精度向上と導入コストの低下があります。

さらに、製造現場での作業分析やリハビリテーションでの活用など、ビジネスにおける具体的な成功事例が増えてきたことで、その価値が広く認識されるようになってきました。

3つの主要なモーションキャプチャー方式

モーションキャプチャーにはさまざまな方式がありますが、ビジネスでの活用が進んでいるのは主に3つのタイプです。それぞれに特徴があり、用途や環境に応じて使い分けられています。予算や必要な精度、導入環境などを考慮して、最適な方式を選択することが重要です。

光学式

(引用元:SPICE

複数のカメラで、対象に取り付けたマーカーを追跡する方式です。最も高精度な計測が可能で、ミリ単位での動作分析が求められる場面で活用されています。マーカーの位置を複数のカメラで立体的に捉えることで、極めて正確な動きまで再現することができます。

製造現場での作業分析やスポーツ選手の動作解析など、精密な測定が必要な場面で重宝されています。

慣性式

体に装着した慣性センサー(加速度計やジャイロセンサー)で動きを検知する方式です。カメラなどの外部機器が不要で、場所を選ばず使用できる利点があります。特に屋外での計測や、狭いスペースでの作業分析などに適しています。

ただし、時間経過とともに誤差が蓄積する傾向があるため、定期的なキャリブレーション(位置補正)が必要になります。

マーカーレス方式

(引用元:PR TIMES

専用のカメラやAIを使って、マーカーなしで人の動きを認識・分析する方式です。準備の手間が少なく、手軽に導入できることが特徴です。接客現場での動線分析や、リハビリテーションでの活用など、気軽に継続的なモーション分析が必要な場面で採用されています。

ただし、他の方式と比べると精度は劣るため、用途を見極めた導入が求められます。

ビジネス現場での具体的な活用シーン

ビジネスの現場では、生産性向上やサービス品質の改善を目的として、さまざまな形でモーションキャプチャーが活用されています。導入企業からは、作業効率の向上や従業員の安全確保、顧客満足度の向上などの効果が報告されています。

エンターテインメント分野での活用

映像制作やゲーム開発の現場では、人の自然な動きをCGキャラクターに反映させるために活用されています。

近年、特に注目を集めているのが、VTuber(バーチャルYouTuber)での活用です。配信者の表情や体の動きをリアルタイムでアニメーションキャラクターに反映させることで、新しい形のコンテンツ制作が可能になっています。

(引用:SPICE

この技術を活用したVTuber市場は急速に拡大しており、エンタメコンテンツのみならず、企業のマーケティングやブランディングにも活用されるようになってきました。

さらに、メタバース空間での展示会やイベントなど、ビジネスコミュニケーションの手段としても注目を集めています。

製造・生産現場での活用

作業者の動作を詳細に分析し、効率的な作業手順の確立や、作業負荷の軽減に役立てられています。熟練工の技能伝承や新人教育のツールとしても活用され、製造現場の人材育成に貢献しています。

また、ロボットの遠隔操作や自動化システムの開発にも応用され、生産性の向上に寄与しています。

医療・リハビリでの活用

医療機関やリハビリ施設では、患者の動作を定量的に評価し、最適な治療プランの立案に活用されています。特に遠隔でのリハビリ指導において、患者の動きを正確に把握・分析できることから、コロナ禍以降の導入が加速しています。

また、手術ロボットの精密な操作トレーニングにも使用され、医療技術の向上に貢献しています。

スポーツ分野での活用

(引用元:東海大学

アスリートの動作解析やフォーム指導に広く活用されています。選手の動きを数値化・可視化することで、効果的なトレーニングメニューの作成や怪我の予防に役立てられています。

さらに、スポーツ用品の開発や、パフォーマンス向上のための機器開発にも応用され、スポーツビジネスの発展を支えています。

導入時の検討ポイント

モーションキャプチャーの導入を成功させるためには、目的に応じた適切な方式の選択と運用体制の整備が重要です。初期投資を抑えながら最大限の効果を得るために、以下のポイントを押さえておく必要があります。

目的に応じた方式の選択

使用目的や環境に応じて、最適な方式を選択することが重要です。高精度な動作分析が必要な場合は光学式、場所を選ばず使用したい場合は慣性式、手軽に導入したい場合はマーカーレス方式というように、それぞれの特徴を理解したうえで選定を進める必要があります。また、複数の方式を組み合わせることで、より効果的な活用が可能になるケースもあります。

コストと運用体制の整備

導入コストだけでなく、運用に必要な人材育成や保守管理のコストも考慮する必要があります。特に高精度なシステムの場合、定期的なキャリブレーションや専門的な知識が必要となるため、社内での運用体制をしっかりと整えることが重要です。

専門家との連携

システムの選定から導入、運用まで、専門家のサポートを受けることで、より効果的な活用が可能になります。特に初めての導入では、経験豊富なベンダーや専門家との連携を検討することをお勧めします。

デジタルツインやメタバースを支えるモーションキャプチャー

モーションキャプチャー技術は、デジタルツインやメタバースといった次世代のビジネス基盤を支える重要な要素として注目を集めています。製造現場のデジタルツイン化による生産性向上や、メタバース空間での新しいビジネスコミュニケーションの実現など、その可能性はさらに広がりを見せています。

製造業やエンターテインメント産業はもちろん、社員教育やカスタマーサービスの改善を目指す企業は、この技術がもたらす変革の波に乗り遅れることなく、積極的な活用を検討していく必要があるでしょう。