映像制作の現場で注目を集めているバーチャルプロダクション。実写の被写体とCGをリアルタイムで合成する技術により、従来は不可能だった表現を実現しています。CGと実写の境界を超えた新しい映像表現は、エンターテインメントだけでなく、企業の情報発信やマーケティングにも新たな可能性をもたらしています。本記事では、バーチャルプロダクションの基本から活用方法まで、ビジネス視点で解説します。
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バーチャルプロダクションの核となるのが、実写の被写体とCGをリアルタイムで合成する技術です。大型LEDディスプレイやプロジェクターに映し出されたCG背景と実際の撮影をその場で組み合わせることにより、撮影を行っている時から完成形に近い映像を確認できます。
カメラの動きに合わせてCG背景も連動して変化するため、まるで本当にその場所で撮影しているかのような自然な映像表現が可能です。
これまでの映像制作では、グリーンバックでの撮影後にCG合成を行う手法が一般的でした。しかし、この方法では撮影時に完成イメージを共有することが難しく、編集作業に多くの時間とコストがかかっていました。
一方、バーチャルプロダクションでは、撮影現場でリアルタイムに合成映像を確認できるため、その場での調整や修正が可能です。これにより、撮影後に「イメージと違う」という理由で再撮影や大幅な編集が必要になるリスクを減らし、制作効率を向上させることができます。
ロケーション撮影に伴う移動費や場所の確保、セット制作など、従来の映像制作には大きなコストがかかっていました。しかし、バーチャルプロダクションを活用することで、1つのスタジオでさまざまな場所の撮影が可能となり、これらの費用を大幅に削減できます。また、天候や時間帯に左右されない撮影環境により、スケジュールの効率化も実現します。
撮影が困難な場所や、理想的な天候・時間帯での撮影も、バーチャルプロダクションなら自由自在です。海外のロケーションや季節限定の風景、さらには架空の世界でさえもデジタル空間ならば再現可能です。この自由度の高さは、映像制作における表現の幅を大きく広げています。
デジタル空間を活用することで、現実世界では実現できないような斬新な映像表現も可能になります。製品やサービスの特徴を視覚的に表現したり、抽象的な概念を分かりやすく伝えたりすることができ、企業のブランディングやプロモーションに新たな可能性をもたらします。
企業のプロモーション映像やウェブCMの制作において、バーチャルプロダクションの活用が進んでいます。商品やサービスの特徴を印象的に伝える映像表現や、短期間での制作が求められる案件などで、その効果を発揮しています。また、世界観の構築や製品の使用シーンの演出など、クリエイティブ表現の幅の拡大にもつながっています。
オンラインイベントやライブ配信などにおいても、バーチャルプロダクションは新たな可能性を切り開いています。
たとえば企業の製品発表会では、実物の製品を手に持ちながら、その機能や特徴を3D映像で視覚的に展開したり、登壇者の背景に動的なデータを表示したりすることが可能です。また、複数の登壇者が離れた場所にいても、同じバーチャル空間に集まって対話しているような演出もできます。
このように、リアルとバーチャルを組み合わせることで、視聴者の理解と興味を深める魅力的な体験を提供できます。
従来の映像制作やイベントの枠を超えて、バーチャルプロダクションの活用領域は広がっています。たとえば、企業の株主総会や社内研修、オンライン商談など、ビジネスコミュニケーションのさまざまな場面で導入が進んでいます。視覚的なインパクトと分かりやすい情報伝達を両立させることで、コミュニケーションの質を高めることができます。
バーチャルプロダクションは、デジタル時代における新しい映像制作の手法として、さらなる進化を続けています。技術の発展とともに導入のハードルは低くなり、より多くの企業がその恩恵を受けられるようになるでしょう。
コスト効率の向上と表現の可能性の拡大により、企業の情報発信やブランディングにおいて、重要なツールとしての役割を果たしていくことが期待されます。