現実世界の物体やシーンをデジタルデータとして取り込み、コンピューター上で再現する技術が「3Dスキャニング」です。現実と同じ物体や建物を仮想空間上に創り上げ実験などを行う「デジタルツイン」などには欠かせない技術です。今後はその精度や手軽さも更に高まり、将来的にはもっと身近な技術となるかもしれません。改めてこの3Dスキャニング技術の基本的な仕組みから活用例まで学びましょう。
(引用元:SK本舗)
3Dスキャニングとは、実在する物体や空間の形状・寸法・色などの情報を取得し、デジタルデータとして3D化する技術です。スキャンされたデータは「3Dモデル」や「ポイントクラウド(点群)」と呼ばれる形式で保存され、コンピューター上での閲覧や編集、3Dプリンターでの出力などに利用できます。
3Dスキャニングの魅力は、専門的な3DCGモデリングスキルがなくても、現実の物体を高精度にデジタル化できることにあります。手作業で一から3Dモデルを作成する場合と比較して、時間と労力を大幅に削減できるのが特徴です。
3Dスキャニングにはさまざまな方式があります。ここでは、代表的なものを紹介します。
物体にレーザー光を照射し、その反射時間や角度から距離と形状を計測する方式です。精度が高く、大型の建築物や地形のスキャンによく使われます。測量や建設業界で活用されており、ミリ単位の高精度な計測が可能です。
特定のパターンを持った光(格子状や縞模様など)を物体に投影し、その歪みから3D形状を算出します。手のひらサイズの物体から人物の全身まで、さまざまなスケールのスキャンに対応できるため、製品設計や人物のデジタル化によく使われています。
複数の角度から撮影した2D写真を解析し、3D形状を復元する技術です。特殊な機器がなくても、スマートフォンのカメラだけで実行できるため、手軽に始められるのが特徴です。ただし、精度を高めるには多くの写真と適切な撮影条件が必要です。
3Dスキャニング技術は、さまざまな業界やシーンで活用されています。主要な活用例を見ていきましょう。
既存製品の形状を正確に取得し、改良や互換部品の設計に活用できます。手作業での計測が難しい複雑な形状も、3Dスキャンなら正確に再現できます。自動車部品や工業製品の設計プロセスを効率化する手段として広く採用されています。
(引用元:CGWORLD.jp)
貴重な文化財や遺跡を3Dスキャンすることで、デジタルアーカイブとして保存できます。実物が劣化や災害で失われても、デジタルデータとして後世に残すことができます。また、通常は触れられない貴重な資料を、VR内で自由に観察するような教育コンテンツも実現可能です。
現実世界の空間やオブジェクトをスキャンし、そのままバーチャル空間に取り込むことができます。例えば、実在する商品をスキャンしてARショッピング体験を作ったり、実際の空間をスキャンしてメタバース内に再現したりといった活用が可能です。
(引用元:PR TIMES)
人物をスキャンしてパーソナライズされたアバターを作成できます。特に顔や全身をスキャンすることで、メタバース空間でより自分らしい姿で活動できるようになります。最近では、スマートフォンでの簡易スキャンから高精度な専用スキャン機器まで、さまざまな選択肢が登場しています。
3Dスキャニングは便利な技術ですが、実際の運用では考慮すべき技術的な制約もあります。ここでは、3Dスキャニングを活用する際に押さえておくべき重要なポイントと現在の課題について解説します。
高精度な3Dスキャンデータは非常に大容量になることがあり、処理に高性能なコンピューターが必要な場合があります。特に、点群データからメッシュモデルへの変換やテクスチャの適用には、専用ソフトウェアと一定のスキルが求められます。
光沢のある物体や透明な物体、黒色や極端に反射する素材はスキャンが難しい傾向があります。また、細かいディテールや内部構造のスキャンには限界があります。スキャン方式や機材によって得意・不得意があるため、目的に合わせた選択が重要です。
スマートフォンに搭載されるセンサーの普及や、クラウドベースの3Dスキャニングサービスの登場により、3Dスキャニング技術は急速に身近になっています。今後はより手軽に、より高精度に現実世界のオブジェクトをデジタル化できるようになるでしょう。
メタバースやデジタルツインの発展に伴い、現実世界とバーチャルの境界は徐々に曖昧になっていきます。その架け橋として、3Dスキャニング技術の重要性はさらに高まっていくことでしょう。