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2025.04.10

「テレプレゼンス」技術を知る――離れた場所でも「そこにいる感覚」を生み出す

地球の反対側にいる人と、まるで同じ部屋にいるかのように会話をする。遠く離れた場所の機械を、自分の手で操作しているかのように動かす。「テレプレゼンス」技術は、物理的な距離を超えて「存在感」を伝える技術として、ビジネスからエンターテインメントまでさまざまな分野で活用されています。メタバースやロボットにおいて欠かせないこの技術。概念から具体的な活用例まで、分かりやすく解説します。

テレプレゼンスとは?

(引用元:iPresence

テレプレゼンス(Telepresence)とは、「遠隔(tele)」と「存在感(presence)」を組み合わせた言葉で、離れた場所にいながらにして、あたかもその場にいるかのような感覚や体験を提供する技術です。単なるビデオ通話と異なり、身体的・感覚的な要素も含めた「存在感」の伝達を重視します。

「そこにいる感覚」を生み出す仕組み

テレプレゼンスが目指すのは、単に映像や音声をやりとりするだけでなく、人間の五感を含めた「体験全体」を伝えることです。これを実現するために、以下のような要素が重要となります。

●高精細な視覚情報:高解像度の映像や3D映像、360度カメラなどを活用し、遠隔地の様子をリアルに伝えます。

立体的な音響:空間音響技術により、音の方向や距離感を再現し、より自然な聴覚体験を提供します。

触覚フィードバック:触覚を再現する技術(ハプティクス技術)を用いて、遠隔地の物体に触れた感覚を伝えることも可能になりつつあります。振動や圧力を使って手に感触を伝えるデバイスなどがこれにあたります。

自由な視点移動:ユーザーの頭や体の動きに連動して、遠隔地のカメラやロボットが動くことで、自然な視点移動を実現します。

これらの要素を組み合わせることで、物理的な距離を超えた「存在感」の共有が可能になります。

テレプレゼンスの主な形態

テレプレゼンスは、目的や用途に応じてさまざまな形態で実現されています。代表的なものをいくつか見ていきましょう。

テレプレゼンスロボット

(引用元:iPresence

移動型カメラとディスプレイを組み合わせたロボットで、遠隔地のユーザーが操作して会議や施設内を移動できます。ユーザーの顔がディスプレイに表示され、周囲の人々と自然なコミュニケーションが可能です。

没入型VR会議(イマーシブVR会議)

(引用元:GetNavi web

VRヘッドセットを使って仮想空間に集まり、アバターを介してコミュニケーションをとるシステムです。「イマーシブ」とは、「没入感がある」という意味です。

参加者は、物理的には別々の場所にいながらも、同じ仮想空間内に完全に入り込んだような感覚を得られます。この環境では資料を共有したり、3Dオブジェクトを全員で同時に操作したりすることが可能です。

単なるビデオ会議と比べて、空間的な文脈や非言語コミュニケーションがより豊かに表現できる点が特徴です。

遠隔操作システム

産業用ロボットや特殊車両を、遠隔地から操作するシステムです。操作者の動きをセンサーで捉え、それをロボットの動きに反映させることで、危険な環境や極限環境でも安全に作業を行うことができます。

災害現場での救助活動や原子力発電所の点検、深海や宇宙での作業など、人間が直接入るのが難しい場所での応用が進んでいます。

距離を超えた未来のコミュニケーション

テレプレゼンス技術は、物理的な距離という制約を取り払い、人々の交流や協働のあり方を大きく変えようとしています。

今後はメタバースやデジタルツインなどの概念と結びつくことで、さらに豊かな遠隔体験が実現できるでしょう。また、人間同士のコミュニケーションだけでなく、人間と機械、あるいは異なる現実世界と仮想世界をつなぐインターフェースとしても、テレプレゼンスの可能性は広がり続けています。