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2025.03.11

XRグラスのディスプレイ方式の違いとは?ビデオシースルーと光学シースルーを比較解説

XRグラスやヘッドマウントディスプレイを選ぶとき、多くの人が価格や重さ、解像度などのスペックに注目します。しかし、実際の使用感に大きな影響を与える「ディスプレイ方式」の違いについては、あまり意識されていないかもしれません。

現実世界にデジタル情報を重ねて表示する方式には、大きく「ビデオシースルー方式」と「光学シースルー方式」の2つがあり、それぞれに特徴があります。本記事では、これら2つの方式の仕組みと特徴、適した活用シーンについて解説します。

2つのシースルー方式

現実の風景の上にデジタル情報を重ねて表示させる複合現実(MR)を実現するディスプレイ方式を「シースルー方式」と呼びます。このシースルー方式には「ビデオシースルー方式」と「光学シースルー方式」の2つがあり、現実世界の映像をどのように取り込み、デジタル情報と組み合わせるかが大きく異なります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

ビデオシースルー方式の仕組みと特徴

(引用元:PROTRUDE

ビデオシースルー方式は、デバイスに搭載されたカメラでリアルタイムに撮影された映像の上に、デジタル情報を重ね合わせて表示する方式です。一般的なVRゴーグル(ヘッドマウントディスプレイ)がこちらにあたります。カメラで撮影した映像とデジタルコンテンツを完全に一体化させて表示できるため、現実世界とデジタル情報の融合度が非常に高くなります。スマートフォンやタブレットでARコンテンツを楽しむ際も、この方式が使われています。

一方で、カメラ映像とデジタル情報を合成する処理が必要なため、わずかながら表示に遅延が生じます。また、高性能な処理装置が必要となるため、デバイスが重くなりがちで、バッテリーの消費も大きくなる傾向にあります。

光学シースルー方式の仕組みと特徴

(引用元:XR Life Dig

光学シースルー方式は、透明なレンズを通して直接目で見える現実世界に、プリズムやハーフミラーなどの光学素子を使ってデジタル情報を重ね合わせる方式です。実際の視界を直接見ることができるため、目の疲れが少なく、長時間の使用でも違和感が生じにくいのが特徴です。また、光学的な仕組みで表示を行うため、デバイスを軽量に抑えることができます。

ただし、現実世界とデジタル情報の融合度については、ビデオシースルー方式に比べるとやや劣ります。また、明るい場所ではデジタル表示が見えにくくなる場合があり、多くの製品でレンズに着色を施す必要があります。

なお、光学シースルー方式は、1980年代の人気漫画「ドラゴンボール」に登場するスカウター(相手の戦闘力を片目のレンズ越しに計測・表示する装置)のような形で描かれており、当時から未来のディスプレイ技術として想像されていました。

それぞれの方式に適した活用シーン

シースルー方式の違いは、単なる技術的な差異ではなく、実際の使用感や適した用途などに大きく影響します。デジタルコンテンツとの一体感を重視するのか、それとも自然な視界や長時間使用を重視するのか、用途に応じて適切な方式を選択することが重要です。

ビデオシースルーが効果を発揮するケース

ビデオシースルー方式は、現実世界とデジタル情報の融合度が高いことから、没入感の高い体験が求められる場面で真価を発揮します。工業製品の設計レビューや建築物の施工シミュレーションなど、デジタル情報と実物との正確な位置合わせが必要な業務用途に適しています。また、エンターテインメントコンテンツにおいても、現実世界に溶け込むような魅力的な演出が可能です。

光学シースルーが効果を発揮するケース

光学シースルー方式は、実際の視界を妨げることなくデジタル情報を表示できることから、日常的な使用や長時間の作業に向いています。作業現場での手順表示や、スポーツ時のパフォーマンスデータの表示など、現実世界の視認性を保ちながら補助的な情報を表示する用途に適しています。また、軽量なデバイスが多いことから、移動の多い業務での使用にも向いています。

デジタルとリアルの境界をより自然なものへ

XRグラスのディスプレイ方式は、デジタル情報と現実世界をどのように組み合わせて見せるかを決定づける技術です。それぞれの方式には一長一短があり、現時点で万能な方式は存在しません。

しかし、技術の進化により、それぞれの短所が徐々に改善されつつあります。今後も両方式の特徴を理解したうえで、用途に応じた適切な選択を行うことが、XR技術の効果的な活用につながるでしょう。