3DCGのモデルを作る時、一般的にイメージされるのはBlender等のモデリングツールで、球体や正方形から地道に作り上げていく方法でしょう。3Dコンテンツの需要増加、さらにデジタルツインのように「現実の物体」をデジタルに持って行く必要性が高まる中、写真から3Dモデルを生成する「フォトグラメトリ」技術も知っておくべきでしょう。専用のスキャナーを必要とせず、低コストで手軽に3Dデータを作成できるこの技術は、さまざまな業界で新たなビジネスチャンスを生み出しています。本記事では、フォトグラメトリの基本から具体的な活用シーンまで解説します。
(引用元:MogaDigi)
フォトグラメトリは、「写真測量法」とも呼ばれる3Dデータ作成技術です。従来の3D制作手法とは異なり、一般的な写真から高品質な3Dモデルを生成できます。基本的な仕組みと必要な環境について見ていきましょう。
フォトグラメトリでは、対象物をさまざまな角度から撮影した複数の写真を使用し、専用のソフトウェアで解析・合成することで3Dモデルを生成します。通常は100枚前後の写真が必要で、これらの写真から対象物の形状や色、質感などの情報を抽出し、立体的なデジタルデータへと変換していきます。
特殊な機器を使用せず、一般的なデジタルカメラだけで高品質な3Dデータを作成できる点が特徴です。また、写真から直接データを生成するため、対象物の細かなテクスチャや模様まで忠実に再現することができます。
フォトグラメトリに必要な機材は、デジタルカメラ、パソコン、そして専用のソフトウェアの3点です。
カメラは一眼レフなどの高性能なものが理想的ですが、最近はスマートフォンでも十分な品質のデータを作成することができます。パソコンについても一般的なスペックのもので問題ありませんが、処理能力が高いほど3Dモデルの生成時間を短縮できます。
撮影環境としては、安定した照明条件と、対象物を適切に配置できるスペースが重要です。商品撮影の場合は、回転台や撮影ブースを用意することで、より効率的で高品質な撮影が可能になります。また、大型の建築物など屋外での撮影時は、光の条件が安定している曇りの日を選ぶことで、より良い結果が得られます。
(引用元:STYLY MAGAZINE)
3Dコンテンツの需要が高まる中でフォトグラメトリが注目を集めている背景には、ビジネスにおける明確なメリットがあります。ここでは、企業がフォトグラメトリの導入を検討する際の重要なポイントを解説します。
従来の3Dスキャナーは、精度に応じて数万円から数百万円の初期投資が必要でした。しかし、フォトグラメトリは既存のカメラ機材を活用できるため、導入コストを大幅に抑えることができます。
また、撮影後のデータ処理も自動化されているため、専門的な3DCG制作スキルを持つスタッフがいなくても、比較的容易に運用を始めることができます。特に小規模なプロジェクトや、3D制作の試験的な導入を検討している企業にとって、この低コストでの参入のしやすさは大きな魅力となっています。
フォトグラメトリは写真をベースに3Dモデルを生成するため、対象物の色味や細部の質感を極めて忠実に再現することができます。
実物の持つ微細な凹凸や色の変化、素材の質感までもデジタルデータとして保存できるため、建築物の外観調査や文化財のデジタルアーカイブ、商品のECサイト掲載など、高い再現性が求められる用途に特に適しています。
また、撮影時の照明条件や影の情報も含めて記録できるため、よりリアルな3Dコンテンツの制作が可能です。
フォトグラメトリは、数センチメートルの小さな商品から大規模な建築物まで、サイズを問わず3Dデータ化が可能です。同じカメラ設定で異なるサイズの対象物を撮影できるため、運用の自由度が高いのが特徴です。
また、屋内での商品撮影から、ドローンを使用した屋外の建造物の撮影まで、さまざまな撮影シーンに対応できます。この柔軟性の高さにより、製造業での製品管理から建設業での建築物の調査、小売業での商品展示まで、業種を超えて幅広い活用が可能となっています。
フォトグラメトリの活用範囲は、技術の進化とともに着実に広がっています。実際のビジネスシーンではどのような場面で活用されているのか、具体例を見ていきましょう。
(引用元:日本写真印刷コミュニケーションズ)
ECサイトやメタバース上での商品展示において、フォトグラメトリで作成した3Dモデルの活用が進んでいます。商品を360度あらゆる角度から確認できるため、実店舗に近い購買体験を提供することができます。
特にアパレル製品や家具、工業製品など、形状や質感の確認が重要な商品カテゴリーでの導入が増えています。また、AR技術と組み合わせることで、商品のサイズ感や設置時のイメージをより直感的に伝えることも可能です。
(引用元:CG MAKERS)
建築物や内装の3Dデータ化により、バーチャルショールームやオンライン内覧会の実施が可能になります。従来の写真や動画による紹介と比べ、視聴者が自由に視点を移動できる3Dモデルは、より詳細な空間把握を可能にします。
また、建築現場での工事進捗管理や、既存建造物の改修計画立案にも活用されており、建築業界における新たな働き方を支援するツールとしても注目を集めています。
フォトグラメトリは、デジタルトランスフォーメーション時代における新たなものづくりの手法として、今後さらなる進化が期待されています。手軽さと高い再現性を兼ね備えたこの技術は、ビジネスのさまざまな場面で活用の機会が広がっていくでしょう。
メタバースやデジタルツインなどの3Dコンテンツの需要が高まる中、フォトグラメトリを活用した新たなビジネス価値の創出には、ますます期待が寄せられています。