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2025.02.27

【新春インタビュー】Pacific Meta 畝地和人氏が語る―2025年Web3領域の展望

2025年の新春企画として、業界をリードする皆様にインタビューを敢行。第10回目は、国内外Web3領域の事業支援を行うPacific Meta(パシフィックメタ)の国内事業責任者、畝地(あぜち) 和人氏。世界各国に構えるWeb3チームでグローバル支援を行う同社から見た今年のWeb3領域とは!?

2024年Web3業界を振り返るとどんな年でしたか?

2024年の日本のWeb3産業は、進展と課題が交錯する一年でした。規制整備や新たなプロジェクトの登場といった明るい話題がある一方で、個人投資家の参入障壁や、グローバルに認知される日本発のWeb3プロジェクトが未だ登場していない点が浮き彫りになっています。

特に、暗号資産市場の盛り上がりに欠ける要因として、税制の厳しさが市場の成長を妨げている点が挙げられます。韓国が税制優遇を活用してリテール市場を活性化させている中、日本の税制改革の遅れは大きな機会損失となっており、早急な対応が求められます。

技術的な競争力不足についても、依然として世界的に認知されるWeb3プロジェクトがない現状を考えると大きな課題であるように思います。日本が国際市場で存在感を示すには、業界一丸となって開発者の育成や支援を進めていく必要があるでしょう。

それでも、日本には可能性が多くあると思います。規制整備が進み、地方創生プロジェクトや企業による挑戦が着実に進む中、2025年の大阪万博はその成果を世界に示す絶好の機会であり日本のWeb3市場全体が拡大する好機だと捉えています。

2024年の貴社の代表的な取り組みを教えてください。

G-SHOCKとSTEPN GOのNFTコラボを仲介し、発売からわずか5日間で予定していた800個のNFTコレクションを完売し、Web3黎明期においてWeb3に挑む多くの事業が、研究開発や事業検証の段階で止まってしまいがちな中、実際にビジネスとして収益化することができました。

また、自社投資部門であるPacific Meta Venturesを立ち上げ、国内外のトップWeb3プロジェクトに続々と投資しています。投資先には、時価総額135億ドルを超えるユニコーン企業「Rippling」の創設者が新たに挑戦するWeb3ソーシャルプロトコル「0xPPL」や最高取引額400ETHを記録する人気NFTコレクション「Pudgy Penguins」を活用したトレーディングカードゲーム「Vibes」、次なる10億人をCryptoへオンボーディングする”Hypercasual Finance”実現を目指す「Hana Network」などがあります。

加えて、これまで培ったネットワークを基に国内外の交流や提携を加速させることを目的に、Pacific Metaの国内外約170のパートナー様が参画する「Pacific Meta Partners」を公開しました。弊社の優れたパートナープロジェクトや企業様同士が、コミュニティに限らず幅広いマッチングの機会を得られるようなものとなっております。公開の背景には、日本からWeb3のスタンダードをつくるというミッションのもと、国内外におけるWeb3のエコシステム拡大とマーケットの成長促進に寄与したいという思いがあります。

Web3のビジネス活用の現在地をどのように感じていますか。

Web3領域に革新的な魅力はあると認識はしているものの、それをどのようにビジネスとして活用すればいいのか、具体的な手触り感を持っている事業者はまだまだ少ないように感じられます。ここに課題が残ることで、Web3参入に慎重になっている企業も少なくありません。

一方で、金融業界でソニー銀行がWeb3技術を活用した複数の取り組みを発表し、金融とエンターテインメントの融合を進める方針を打ち出したり、不動産業界ではNOT A HOTELがトークンを活用して新しいユーザー体験の創出と新規顧客層の獲得に取り組むなど、業界を問わず、各業界においてビジネス活用のユースケースが着実に広がりを見せています。並行して、AI領域の社会普及が著しく進む中で、これから顕在化してくるデータソースの不透明性やプライバシーの問題はまさにブロックチェーンが解決できる問題です。AI普及と相まって課題解決手段としてブロックチェーンが注目を浴びる状況もみえてきました。

そういった現在地の中で、2025年はどういった年になると予測されていますか?

2025年のWeb3領域では、ステーブルコインが引き続き重要な注目を集めると思います。法定通貨に裏付けられた安定性を背景に、国際送金や越境取引の効率化で効果を発揮すると思われます。

Web3事業者である我々は当たり前のように海外企業とステーブルコインで取引を行っており、実際に利用する中で非常に便利で革新的な技術だと改めて実感します。こういった技術が大手企業に浸透していけば世の中は確実に大きく変わっていきます。

例えば、JPモルガンが発行するステーブルコイン「JPMコイン」は、企業間決済を高速化し、従来の銀行システムでは数日かかる取引を数分で完了させるとして話題を集めています。また、日本のメガバンクも、ステーブルコインを活用した国際送金の実証実験を進めているとのニュースもでています。

Tether社が四半期で6,000億円を超える純利益を生み出すとも言われており、現状のWeb3の世界で最も必要な「収益化事例」が出てきていることがhotだと感じる理由です。

また、Web3領域におけるAI Agentの台頭からも目が離せません。実際にAI Agentとして価値提供できているプロジェクトはまだそこまで多くなく、プロジェクトの大半はこれまでのMemeが表面上形を変えているに過ぎないと考えています。ただし、時間が経過すれば価値提供できているプロジェクトしか残らないと考えていますので、本質的に相性の良いAIとWeb3の実用的なユースケースとしてどう広がっていくかは注目しています。

2025年に計画している取り組みなどあれば教えてください。

国内外のWeb3市場においてなくてはならない会社としての存在感を高める1年にしていければと考えています。国内市場の中だとマーケティングの側面が海外展開を支援する印象が強いと客観的に認識していますが、ブロックチェーンに関心がある事業会社の事業立ち上げもビジネスの上流から支援し続けています。各社の既存アセットや事業を活用した事業企画やトークン活用、立ち上げからグロースまでの一貫した支援を通じて、日本からグローバルに認知される事例を支援させていただく事業会社とともにつくっていきたいと考えています。また、海外に対してWeb3の前線で事業を創っていくプレイヤーのインナーサークルにさらに入り込んでいきたいと考えています。国内外を橋渡しする立場として、ますます市場への影響度を強めて、Web3というエコシステム全体を拡張していくような会社になっていきたいです。まだ具体的に言えないのですが、春までにいくつか大きいリリースも仕込んでいますので、ぜひ楽しみにしていてください。

最後に今年の意気込みをお願いします。

2025年は日本でNo.1のWeb3アクセラレーターになり、ブロックチェーン事業に取り組む会社にまず最初に選んでいただけるよう、自社の事業を確実に伸ばしていきたいと考えています。また、海外へも権威と支援範囲をさらに広げていきたいと思います。2025年は2024年以上に新しい展開を現時点でも予定しておりますので、Web3領域を牽引していけるよう愚直に成長していきたいと思います。